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白雪姫〜ただし、彼はFtM〜

今回は白雪姫?です。


コメディは難しいです。

この国にはとても美しいお姫様がいました。


彼女…いえ、彼は身体が女の子として産まれました。


ですが、心は男のFtMさんだったのです。


彼の名前は白雪。


小さい頃はお転婆白雪姫(てんばしらゆきひめ)と呼ばれていました。


大きくなってくると、落ち着きがないと良く怒られました。


女の子だからと言われて、お(しと)やかになれと言われていました。


だが、彼は負けず嫌いで、(がん)としてお淑やかになることはありませんでした。


「女の子だからおしとやかにってなんやねん!オレは男やし。そもそも、女の子がおしとやかにせなアカンとか時代遅れ過ぎるやろ。人それぞれ違うっちゅーねん」


…やけに多様性に詳しい子でした。




ところ変わって、彼の母親(女王)は魔女でした。


彼女は世界一の美を追求する美魔女だったのです。


彼女は恒例の魔法を使います。


「鏡よ鏡よ鏡さん。世界で一番美しいのはだぁれ?」


『先日行われたボディビルダー世界選手権で優勝したトーマス・セブドロスさんです。彼の上腕二頭筋(じょうわんにとうきん)はまさにチョモランマの山頂の(ごと)き美しさでした』


鏡は質問を受けると世界中の情報を調べ、問いに答える魔法の鏡だったのです!


女王は鏡の答えに激怒し、直ぐに兵士に伝えます。


「ボディビルダーのトーマス・セブドロスと言う男を逮捕しなさい。彼には違法薬物の使用による偽装筋肉の疑いがあるわ!」


冤罪を被せて彼を逮捕します。


「鏡よ鏡よ鏡さん。世界で一番美しいのはだぁれ?」


『それはもちろん女王様です。実年齢に対して肌年齢はマイナス25歳。10代前半のお肌を持つ美魔女です』


こうやって女王は世界一の美しさをキープしているのです。




白雪姫…いえ、白雪王子はどんどん美しく成長しました。


「くそっ!また胸がデカくなったな。いい加減、胸オペ考えようかな?そろそろホルモン治療をいつ開始するか検討するかな」


彼は性別違和(せいべついわ)と戦っていました。




そんな彼が16歳になった頃、事件が起こります。


女王はいつもの様に鏡に問いかけます。


「鏡よ鏡よ鏡さん。世界で一番美しいのはだぁれ?」


『先日お誕生日を迎えて16歳になったあなたの娘の白雪姫です。やはり本物の若さには勝てませんでしたね!プークスクスw』


女王は鏡にイラついたので、とりあえず殴っときます。


そして女王の部屋の前で待機していた兵士に伝えます。


「ちょっと白雪を呼んでらっしゃい!」


その事をお城の兵士から伝えられた白雪は、

「え?やだよ。アイツいつも鏡に話しかけてるんだぜ?ヤベーよ…絶対どこかおかしいだろ?」


…ま、まぁ、事情を知らなければそう思うのもムリはないでしょう。


一向に呼び出しに応じない白雪にガマンが出来なくなった女王は、直接文句を言いに白雪の元へやって来ました。


「ちょっと!呼んだらちゃんと来なさいよ!あんた姫の自覚あるの!?そもそも、昔から落ち着きはないし、全然姫として社交界に出ないし、普段からドレス着ないし。こんなんじゃ良い男と結婚出来ませんよ!もう気持ち悪い!!…本当になんでこんなのが世界一美しい…ブツブツ…」


女王は白雪の部屋に入るやいなや、怒涛の如く小言を言い出します。


白雪としては、普段から自分は男だと散々言っており、父親の王はきちんと白雪の話を聞いてくれているのに、母親は全く何も聞いてくれませんでした。


度重なる説明にも一切認めず、この国の仮にも女王ともあろう者のトランスジェンダーに対する知識の無さに、ガマンの限界が来ていた白雪は言い放ちました。


「うるさいわ!鏡に向かってブツブツ独り言言っててお前の方がキモイねん。はぁ、もうこんなわからず屋が居る城イヤやわ。」


そんな風に言い出した白雪は、女王がまだ何かを言ってるにも関わらず、無視をしてそのままお城を飛び出し一人で胸オペをする決意をします。




「あー清々した!そもそも、ウチのオカンはなんでいつも鏡に喋りかけてんねん。友達おらんのか?」


城から飛び出した白雪は城下町をのんびりと歩いていました。


彼は良くお城を抜け出して城下町を散策していたので、その足取りに迷いはありません。


「あ!そう言えば、城から持ってきた宝石類を換金せなアカンな。いつか城を出てやろうって準備しといて良かったわ」


白雪はいつか城を出るつもりだったようです。


いつでも飛び出せるように事前に宝物庫を物色して、高額で嵩張(かさば)らない宝石類を隠し持っていたのでした。


その事を思い出した白雪は王家御用達の御用宝石商のお店に向かいます。


「よし、かなりの額で売れたな。まだ予備の宝石も隠してるし、次は胸の乳腺摘出手術(にゅうせんてきしゅつしゅじゅつ)でも受けに行こうかな?」


多額のお金を得た白雪の次の目的が決まったようです。


「確か森を抜けた先にある大きな街に手術してくれる病院があったハズやな。んじゃそこに向かうか」


隣街までそこそこの距離があるのですが、どうやら乗り合い馬車に乗らず、歩いて向かうようです。




白雪は病院に行くために森に入りました。


鬱蒼(うっそう)とした木々の中を細いけもの道ご続いている…訳ではなく、仮にもこの国のお城のお膝元にある森です。


定期的に兵士が巡回し、危険な野生動物は狩っていますし、木々も剪定(せんてい)されて心地よい木漏れ日に照らされた整備された道が続いています。


野盗等が出てくる様な危険な森ではないのです。


そんな道を散歩気分でのんびりと歩いている白雪に対して、


「ちょいとそこのお嬢さん」


と、白雪を呼び止める声がします。


でも、自分の事を男だと認識している白雪は、よもや自分が呼ばれているとは気付いていません。


「ちょいと!そこのお嬢さん!あんただよ!」


「ん?」


白雪はようやく自分の事を呼んでいるのだと気付きます。


「おいおいばーさん。俺は嬢ちゃんじゃねぇぞ?」


確かに白雪は心は男の子ですが、見た目は絶世の美女です。


ただ、残念な事に見た目に無頓着(むとんちゃく)な白雪は、そんな事実に気付いていませんでした。


なので、今回の場合は お婆さんは何も悪くないんです。


たまたま珍しい状況だっただけでしたが、何故か白雪に怒られてしまい、お婆さんはちょっと納得がいきません。


「はあ?お前さん何を言ってるんだい?まぁ良いさ。このりんご要らないかい?」


お婆さんは白雪が何を言ってるのかよく分かりませんでしたが、当初の目的を思い出したのか唐突にりんごを白雪に渡そうとします。


「いや、要らん」


即答です。


白雪は本当に興味無さそうに切り替えしました。


「まぁまぁ、そう言わずに。赤くてキレイだろ?甘くて美味しいんだよ。さぁ!」


そんな白雪の態度等、どこ吹く風。


お婆さんは諦めずに再び白雪にりんごを渡そうとしています。


「いや、だから要らねぇって。そもそも、知らない人からりんご貰うとか意味わからねぇし。素直に貰う奴ってアホなの?」


身も蓋もない白雪です。


確かに、知らない人から物を貰わない、ついて行かないと言うのは小さい子でも分かっている事なのです。


なのですが、童話の白雪姫に謝って欲しい事をぬけぬけと言い放つ白雪に対し、お婆さんも困惑です。


それはそうでしょう。ストーリー上は食べてもらわないと先に進みません。


「ちょ…ちょっと待った!誰がタダであげると言ったんだい。このりんごはとてもとても美味しくて高級なんだ。だから、お金を持ってそうなお前さんに高く売ろうと思ってだね…」


さすがお婆さん!タダで渡すのは不審なので、白雪にリンゴを売るつもりだったと切り替えしました!


これなら不審者では無く、ただの商売人にしか思われまさせんね!


「そんな高く売りつけられるなら、余計要らんわ」


……そりゃそうか。


そんな事を言われたら普通買いませんよね…


「ぐぬぬ…」


お婆さんも言い返せません。


ここで食い下がると怪しさが倍増するだけです。


「じゃあな、婆さん」


そう言って、白雪はりんご売りのお婆さん(?)と別れました。




「変な婆さんだったな。自分から高く売りつけるって言うなんて、アホなのかな?」


森の中を呑気に歩きながら、白雪は先程のお婆さんをアホ扱いしています。


「そこの人!ちょっとこっちを見て下さい!」


「俺か?」


今度は別の人から声をかけられます。


「ああ、そうだよ。あんた、このリンゴパイを買ってかないかい?」


突然話しかけたのはリンゴパイを売っているキレイなお姉さんでした。


もう一度言いますが、この場所は森の中です。


食べ物を売りたいなら、人が多いぶん、どう考えても街中の方が売れるからです。


つまり、怪しさ大爆発なお姉さんでした。


白雪も内心では警戒しているでしょう。


そんな怪しさを無かったかのようにリンゴパイをアピールしてきます。


「このパイは上手に焼けたんだよ。外がサクッとしてて、りんごが香ってめちゃくちゃ美味しいんだよ!」


「んー、要らないかな?」


だが、空気を読めない白雪はまたもや断ります。


「まぁそう言わずに。ちょっと親が多額の借金しちゃってね。早く返済しないと私の妹が売られそうなんだよ。妹を助けるためにも買ってくれないかい?」


お姉さんも白雪にリンゴパイを買わせるために、必死に『私が考えた泣けるストーリー(笑)』を出してきます。


もちろん、この国に奴隷商等ありませんし、国がきちんと取り締まってます。


例え借金で返済できなくても、きちんとした手続きをする事で自己破産申告(じこはさんしんこく)が出来ますし、妹さんが売られる様なことにはなりません。


そんな明らかに嘘とわかる作り話を話す怪しいお姉さんに、みすみすひっかかるような白雪ではありません!


白雪はアホの子じゃないんです!


「うぅ…そうなんやね…お姉さん達も大変なんやね。任しとき!俺がそのリンゴパイ買ったるわ!」


あー…その…買っちゃいました…ね…?


白雪は肝心なところでアホの子のようでした。


「まいどー!ありあしたー!」


お姉さんは嬉しそうにお金を受け取り、リンゴパイを白雪に渡しました。


「じゃあね、お姉さん!頑張ってね!妹さんと仲良くね!」


白雪はリンゴパイを受け取り、お姉さんと別れました。




そして、白雪と別れて少したった頃。


お姉さんの元に先程りんごを必死に売りつけようとしたお婆さんがやって来たのです。


「あ、お婆さん!あれで良かったんですか?」


「えぇ、ありがとね。じゃあこれがバイト料だよ」


なんと!お婆さんが裏で手を回していた様です。


「ありがとうございまーす」


お姉さんは嬉しそうにお金を受け取り、帰って行きました。


残されたお婆さんはみるみるうちに姿を変え、女王様の姿に戻りました。


「くっくっく…まんまと騙されたね、白雪。毒の入ったリンゴパイで永遠の眠りにつきな!」


なんと!お婆さんは白雪を騙していたのです!


そして、その正体は白雪を妬んだ女王だったです!




何も知らない白雪はリンゴパイに毒が入っているのに気付かず、森の途中でのんびりと休憩していました。


「以外と森広いなぁ。乗り合い馬車にでも乗れば良かったかな?」


何も気付いていません。


「さて、じゃあ休憩もしたし、早く病院に向かおう!」


…あれ?リンゴパイはまだ食べない様です。


「リンゴパイどないしようかな?実はりんごが苦手なんやけどなぁ…」


白雪はりんごが苦手な様ですね。


なんで実の母親の女王が知らなかったんでしょうか…?




そうこうしていると、白雪は無事に目的の病院に着きました。


「すみませーん!胸オペしたいんですけどー!」


病院の奥から白衣を着た、若干背の低い男性が出てきます。


「あぁ、患者さんかい?乳腺摘出と脂肪吸引を合わせて70万円だね」


どうやらこの病院のお医者さんだったようです。


「はい!現金一括払いで!あと、男性ホルモン治療も始めたいんですけど!」


早速、白雪はお金を支払って手術をしました。


手術の前にそう言えば扱いに困っていた白雪は、


「あ!リンゴパイあるんで、どうぞ!」


と、お医者さんに差し入れをしちゃいました。


「ありがとう。後で頂くよ」


お医者さんも特に何も考えることなく受け取ったようです。


白雪はそのまま胸オペを終え、しばらく入院をしました。




一方、手術を終えたお医者さんは、当直の先生に後を引き継ぎ、自宅に帰宅しました。


…リンゴパイを持って。


「美味しそうなリンゴパイだな。いただきます」


そう言ってリンゴパイを取り出し、一口、二口を食べた頃、お医者さんは急激な睡魔に襲われてしまいます。


「あ…あれ…?」


ぱたり。と倒れてしまいました。


数日後、出勤してこないお医者さんを不思議に思った同僚の6人の小人のお医者さんが、自宅でリンゴパイを齧った状態で眠っているお医者さんを見つけて警察に通報する事になるのは、また別の話。


そうなんです。


7人の小人は性別適合手術を施術出来るお医者さん達だったのです。




さてそんな事件が起きていた事を知らない白雪は数日後、病院でホルモン注射を打ってもらい、何事もなくお城に帰宅しました。




ちなみにその日の朝…


「鏡よ鏡よ鏡さん。世界で一番美しいのはだぁれ?」


『先日胸オペをした白雪…姫?です。彼女…彼?はホルモン治療も開始したようですね』


「え?なんで?毒りんごの入ったリンゴパイは?あれ?」


困惑する女王。


ドタドタドタ!ガチャッ!


すると突然、女王の部屋に人がなだれ込みます。


「「「警察です。女王には隣街の7人の小人病院の医師昏睡事件(いしこんすいじけん)容疑者(ようぎしゃ)として逮捕令状(たいほれいじょう)が出ています。大人しくしてください。また、家宅捜査令状(かたくそうされいじょう)もありますので、今から捜査を始めます」」」


「え?どういうこと…?」


女王はますます混乱してしまいました。


…と言う一幕があったとか。




帰宅した白雪は帰宅を王に報告した後、自室に戻っている途中、


「あれ?そう言えばお城に警察官が多いなぁ?どうしたんだろう?」


と呟き、騒動を横目に食堂に入って行きます。


「おい!その鏡は重要参考人だ!丁寧に運びだせ!検察に伝えて証拠人物?物?として申請してもらうように要請しろよ!」


「「はい!」」


そんな声を聴きながら、白雪は何か事件でもあったのかなぁ?と考えながら、呑気にミートパイを注文していました。




後日、女王は全ての罪を自白し、女王が用意した解毒剤で小人のお医者さんは無事に目を覚ましました。


女王は昏睡事件の加害者として、刑事裁判でこれまでの犯してきた罪を暴かれてしまい、実刑判決を受けてしまいました。


一方の白雪は、その後もホルモン治療を継続し、凛々(りり)しくも美しい王子として立派に成長しましたとさ。


めでたしめでたし

さて、次はどうしようかな…

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