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THE TRICK TRAP HUNTERS  作者: 水原翔(みずはら・しょう)
TRICK3 「Junction」
8/23

TRICK 3-3

――深夜。ミヤビを助けてくれた白衣の男……霜村静文しもむらしずふみは情報庁にいた。

「全く、未成年の労働時間を何だと思っているんです?」

 メガネを掛け直し、霜村は息をつきながら呟く。

「申し訳ない。ただ今のところ、我々が把握しているVersion2ハンターは霜村くん、君しかいなくてね」

 会話をしていたのは、ミヤビの父、努だった。

「労働基準法をご存知ですか?」

「知ってるさ。ただ状況は一刻を争う」

「……そういう考えが、世のブラック企業を生み出していると考えると、夢も希望もありませんね」

「君くらいの年齢に言われると全く言い返せないよ。我々バブル世代の悪しき習慣だ。まぁさておき、状況報告を」

 さておきってな。と霜村は心のなかで呟いた。

「この前に遭遇したガーディアンは、端的に申し上げますと、まだ排除しきれていません」

「なんだって!?」

「タイプが悪いんですよ。私のエレクトリックシューター……“サトラス”は電気。奴……田中貞夫のガーディアンは表面をフィカス……ゴムの木に近い素材で覆われています。ゴムは電気を通さない。全くというわけではありませんが、私のタイプとしては不利です」

「あのガーディアン、そんな性質だったのか……」

「はい。ブレイクアバターとガーディアンにはそれぞれ相性があります。ゲームで言う属性に近いものですね。あのガーディアンに有効なブレイクアバターの属性は炎。それこそ、水無ミヤビのフレイムブレイドを早くバージョンアップさせたほうが効率がいい気がしますが」

「なるほど……」

水無努は、躊躇っているように見える。

「何を躊躇っているんです?」

「Version2は、そう簡単にはいかないのだろう? それに……」

「取引のことを懸念されているのですか?」

「……」

「もう無駄ですよ、その懸念は。彼はもう目覚めたのですから」

 そして、土曜日。

 集合時間になり、藍沢も事務所へ。

「ここが水無君の家なのね」

 藍沢の私服、初めて見たなとミヤビは思った。

 高校生にしては、落ち着いている私服。そのチョイスは、彼女の正確を現しているのだろうか。

 まあ、数日知り合ったばかりで、まだどんな人なのかは、いまいちつかめてはいないが。

「正確には二ノ宮さんの家だけどね」

「揃ったな。さて、いくぞ」

 二ノ宮がいつものスーツ姿で現れる。

「車はどこにあるんです?」

「あれ、ミヤビ君知らなかったっけ? ここ、地下にガレージあるんだよ」

 黒崎が、ミヤビの疑問に回答する。

 ガレージなんてあったのか。ミヤビは初めて聞いた。

「初耳です」

「そーなんだ。まあ所長最近ミヤビ君より朝早いし、見かけないのは無理ないか」

「ミヤビ君……」

 藍沢は、呟くように言う。

 呼ばれたのかと思って、ミヤビは聞き返す。

「ん?どうした藍沢」

「い、いえ、なんでもないわ水無君」

「そうか。何故言い直したし」

「べ、別になんでもないわよ」

「お、おう」

《フクザツな乙女ゴコロってやつだよミヤビ。わかってやれ》

 唐突に、火炎が喋りだした。

「貴方は黙ってなさい」

 冷たい声で火炎に言う藍沢。火炎の軽口が気に障ったのだろうか。

《わかったよ……お嬢》

「遂に藍沢にまで煙たがれる。かわいそうな火炎」

《おい、ミヤビなんか言ったか?》

「……さっさと行くぞ」

 二ノ宮はそう言い、黒崎と共に地下へ。ミヤビと藍沢も続けてついていく。

 階段を降りると、電子ロックの扉があり、二ノ宮は自分のスマートフォンをかざすと、扉が開いた。

「すげえ」

「秘密基地みたいでしょ? たぶん所長の趣味なんだろうけど」

 黒崎の言うとおり、ガレージは秘密基地のようだった。中央に二ノ宮の愛車が置いてあり、電気自動車には、充電ケーブルが繋がっている。車2台分も置いてあるが、狭いわけではなく、まだスペースはあるようだ。

「……あまり見たことないクルマですね」

 藍沢の言うとおり、ミヤビも見たことのない車だった。

「海外のモデルだな。全てがコンピュータ制御だ。まあ乗ってくれ」

 二ノ宮がスイッチを押すと、つながっていた充電ケーブルが自動的に外れ、機械に格納される。そしてドアが自動的に全て開き、4人が乗れる状態になった。

「……すごい」

 運転席もハイテクで、中央に大きなタッチパネルが埋め込まれていた。恐らく車の制御を全てこのタッチパネルで行うのだろう。

 黒崎が助手席に座り、ミヤビと藍沢は後部座席に座った。

《Good Morning マスター。本日の目的地は?》

 タッチパネルから、AIの音声が聞こえる。

「情報庁だ」

《Roger. 情報庁へのルートを検索します》

「情報庁?」

 ミヤビは、聞き覚えのある名前を聞いた。

 それって、新設した官庁ではないのか。

「ああ。君のお父さん――水無努さんは、情報庁の顧問研究員だ」

 二ノ宮がそう口にした瞬間、ミヤビは生まれて初めて、自分の父が何をやっているのかを知ることが出来た。

まさか、自分の父が、新設した官庁の職員だったなんて。

「情報庁は、都心から少し離れていてな。筑波まで行く」

「筑波……? 結構遠い所にあるんですね」

 藍沢が言う。ミヤビも筑波は筑波サーキットがあるから知っていたが、茨城県まで向かうとは。

「ああ。今は官庁分散と言われているからな。情報庁はその例のひとつになった」

 高速に乗り、二ノ宮はアクセルを踏み、加速し始める。電気自動車は、ガソリン車とは違い、加速がスムーズだ。電車のような乗り心地を感じる。

「速いですね」

「モーターの加速だからな。ハイブリッド車もなかなかの加速性能だが、100%には劣る」

「これって、自動運転機能とか、ついてるんです?」

「あるぞ。あるにはあるがあまり使わない」

「何故です?」

「仕事上、自動制御とやつの脆弱性を疑っていてな」

 前に、インターネットに繋がる車は殺人カーに切り替わると、脆弱性を言っていた二ノ宮だったが、その本人がそんな脆弱性のある車に、何でわざわざ乗っているんだよとミヤビはつっこみたくなったが。

「リスキーですね」

「別にいいだろう? だからこそなんだ」

「……だからこそ?」

「現代、パソコンやスマホ、“インターネット”を使わないという選択肢は、ほぼゼロに近くなった。なくてはならない重要インフラだからだ。だからこそ、ウイルスの脅威というのは日常のことだ。脆弱性におびえて、利用をしないというのは、それはそれでありだが、ナンセンスな話だと、俺は思っている」

「それは同意しますけど」

「“レビュー”やら、“危険”やら、俺達は経験をした人間の意見を、自分が経験したと思いこんで物事を選択しているフシがあるからな。俺は、そういった物事に対して“本当にそうか?”という疑問を常に抱いている。だからこそ、この車に乗っているんだよ」

「なるほど」

 二ノ宮の意見は、一理ある。

 何事をするにも、スマホで調べて、他人の意見を伺うことが多くなった気がする。それはそれで賢いし、情報として有意に活用するのはありだ。

 だが、それを信じすぎてはいないのか?

 それを、全てだとは思っていないのか?

 藍沢も、同じようなことを言っていた。


 ――情報だけで理解できるものと、実際見て感じるものって、違うと思わない?

 

と。

「いい人ね、二ノ宮さんって」

「そういうと思ったよ。今の意見、君と合いそうだし」

「ちなみに水無君はどう思うの、今の話」

「俺は……逆にそう思わない人間の側かもしれない」

「そうなの?」

「ああ。だからちょっと驚いてるし、そういう考え方もあるかと、今そう思ってる」

「それって、窮屈じゃない?」

「窮屈……か。そうは思わなかったけどな」

「まあ、水無。俺もかつてはそうだった。だが、君のお父さんは、常にそれを抱いている人でな。それに影響されたのがでかいも知れない」

「……」

 親父。

 正直、他人として思っていた人物が、そういった考えを持っていたことに、ミヤビは初めて知った。

 この東京に来たことも、親父の計らいだったわけで。

 一体、何を考えているのだろうかと、ミヤビは思っていた。

 それを知るために、今日、行くのだ。

 とことん聞いてやる。火炎のことも。ガーディアンのことも。そして自分が、東京に来たことも。

《マスター。電話です。》

 車のAIが、喋りだした。

「黒崎、代理で出てくれ。道路交通法上、運転中の電話は禁止だからな」

「わかりました。もしもし……え? はい。わかりました。急行します」

 二ノ宮のスマホを借り、代理で受け取る黒崎。

 急に表情が曇っている。何かあったのだろうか。

「どうした?」

「情報庁に、ガーディアン出現です」

「!? 情報庁にか!? マズイな、急ぐぞ!!」

 二ノ宮は、フルアクセルで加速し始めた。

 道路交通法がどうとか言っていたが、さっきまで自分が言っていたことを忘れたのだろうか。

 しかし、情報庁にガーディアン出現。

 一体、どういうことだろうか

《ミヤビ、俺を召喚しろ》

「どういうことだ?」

《やな予感すんだよ……》

 火炎の言うとおり。

 3人の携帯が、赤く光り始め、ピーという機械音がなり始めた。

 これは、間違いなく、ガーディアン。

「……前方に、ガーディアンです!」

「嘘でしょ!?」

 ガーディアンが、車の行く手を阻んでいる。出現した瞬間、周囲の車はいなくなり、二ノ宮の車も停まってしまった。

《ミヤビ!!》

「……ああ!! 二ノ宮さん、一旦おります!!」

「ああ」

 ミヤビは、ハンターフォンのメニュー画面に表示される、五芒星のアイコンをタップした。そして、文字が次々と画面に現れ始める。

[BREAK OUT SYSTEM Ver.α]

[Loading…]

[使用者生体認証システム作動]

[認証完了。ユーザー名『ミズナシ・ミヤビ』、登録済みユーザーです。BREAK AVATOR -Flame Blade-,の設定ユーザーとの一致を確認。アバターデータをサーバーより読み込み中です。]

[読み込みが完了しました。ハンターセレクト画面を起動します]

《Select of Hunter!!》

 テンションの高い男の音声とともに。ハンターフォンに五芒星のマークに、それを囲む5つの円が表示された。

 ミヤビは迷いなく、右上にある火のアイコンをタップした。

《Flame Blade Ready!!》

ハードロック調のサウンドがハンターフォンから鳴り響く。

 ミヤビは、深く深呼吸をし、ハンターフォンをまっすぐ上げ――。

 そこから垂直に道路へ突き落とし、叫んだ。

「ブレイクアウト!!」

《BREAK OUT !! Flame Blade!!》

 スマートフォンは粉々に砕け散っていく。

《Flame Blade Version 1!! 燃エル・ココロ・叫ブ・アッツイタマ~シイ!!》

《……火炎流星丸、高速道路に参上ッ!》

「別に場所は言わんでも」

《フフフ……久しぶりダナ。水無ミヤビ》

「嘘だろ」

 目の前には、白衣の男が倒したはずの――田中貞夫、ガーディアンの姿が、そこにあった。

《この前ノ白衣の男がいないウちに、貴様を殺ス》

《させるかよ!! 火炎斬ッ!!》

《効かぬ。Version違いの攻撃など!!》

 火炎の火炎斬をかわすどころか、刀が貫通して、当たっているようには見えなかった。

 やはり、現状では倒すことは出来ないのか。

「……水無ミヤビ、下がっていろ」

 そう、言ったのは。

 背後からモタードバイクで現れた、白衣の男。前輪でガーディアンを吹き飛ばし、隙を作る。フルフェイスのヘルメットを脱ぎ、ミヤビの目の前に現れた。

「あんたは……」

「静文くん!!来ていたんだね」

 二ノ宮はどうやら知っているようだ。

「さっさとVersion2に目覚めてほしいものだがな。仕方あるまい」

 白衣の男は、ハンターフォンを取り出した。

「あれは、ハンターフォン。まさか……」

 白衣の男のハンターフォンには、ミヤビのハンターフォンと同じような、画面表示。

[BREAK OUT SYSTEM Ver.α]

[Loading…]

[使用者生体認証システム作動]

[認証完了。ユーザー名『シモムラ・シズフミ』、登録済みユーザーです。BREAK AVATOR -Electric Shooter-,の設定ユーザーとの一致を確認。アバターデータをサーバーより読み込み中です。]

[読み込みが完了しました。ハンターサモン画面を起動します]

《Summon Your Hunter!!》

 ミヤビのハンターフォンの音声と、若干異なることに、どういうことだろうかとミヤビは思った。

 そして、白衣の男はスマートフォンに表示される黄色いアイコンをタップする。

《Electric Shooter, Ready?》

「ブレイクアウト」

《Break Out! Electric Shooter!!》

 白衣の男は、ハンターフォンを垂直に突き落とす。その瞬間、破片が散らばり、その破片が人形に再構成していく。

《Electric Shooter Ver1!! ビリビリ痺れる弾丸ッ!! 完全Shooting!!》

「また変な歌……」

 ミヤビは、他のパターンも初めて聞いたが、相も変わらずテンションの高い歌が流れる仕様らしい。

 白衣の男が召喚したのは、全身が機械で出来たような、人形。

 アンドロイドの姿が、そこにあった。

 右腕がレールガンになっており、恐らくそれが武器のようだ。

「歌は気にするな。Version2にはVersion2、トリックタップ、オン」

《OK Trick Trap!!》

 白衣の男の声に呼応して、出現したブレイクアバターが、再び破片として散らばり始める。

《Tri Tri Tri Tri Trick Trap!! Tri Tri Tri Tri Trick Trap!! Trick Trap Electric Shooter Version2!!》

 ラップ口調で音声が流れる。

 その瞬間、散らばった破片が2つの銃に変化し、白衣の男の両腕に出現した。

「何、今の……」

 藍沢は驚く。ミヤビも驚く。

 これが、Version2なのかと。

「エレクトリックシューターVersion2、ガンモード」

《フフフ、電気が聞くわけ無いだろう!?》

「それは熟知している。お前と俺とでは相性が最悪。お前の方が有利だということをな」

《わかってるじゃねえか》

「だが、それはあくまで電気属性であったからだ。ならば」

 白衣の男は、内ポケットに潜ませた弾丸を取り出し、銃に組み込んだ。

《なっ!?》

「弾そのものが炎属性ならば、どうだ?」

《ぐああああああっ!!》

 見事に、弾は命中した。白衣の男はためらわず、次々とトリガーを抜き、ガーディアンの体に命中させる。

「水無ミヤビ。貴様は二ノ宮さんと車に乗って情報庁へ急行しろ。ここは俺が相手する」

「あんたは一体」

「話は後だ。情報庁の状況は恐らく深刻だ。下手したら死者がでるかもしれない」

「霜村くんの言うとおりだ。水無、行くぞ」

「……わかりました。ここは頼む。ブレイクイン!!」

《チェッ、また横取りだよ》

 ミヤビたちは、二ノ宮の車に再び乗り、情報庁へ急いだ。


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