第5狩.襲撃者
車の中で揉めていると急に衝撃が車を横転させた。
「痛たた…急にどうしたのよ⁉︎」
運転席を見ようとしたらすると誰も居なかった。よく見るとハンドルに自動操縦を取り付けられていた。それと椅子から転がり落ちたのか3次元の放映機があった。乗ってから声を出していないのはその理由かと知った。
「敵襲よッ、感染者だわ」
さっきまで文句をぶつぶつ言っていたのとは違い、真剣な表情で窓を見る。外には防毒面罩にエメラルドブルーの迷彩の兵装をしている集団がいた。
「投降しろ、貴様らには援軍は来ないし通信機も遮断されている。大人しく投降すれば手荒な真似はしない。」
そう言って黒い石ころを見せつけてきた。拡声機で喋っている奴は大柄の男…そう、自分に注射器を打ったあの男だ!
すると令子は細剣を腰から抜き出し一番近い兵士に斬りかかった。するとその兵士の手首はぼとりと音を立て地面へ落ちた。断末魔が聞こえてきたがそれは直ぐに止んだ。
零距離から放たれた弾丸は彼の心臓を貫く。すると令子は「急いで!」と言って拳銃を投げて来た。彼女はMP5の照準器を頰に付けると近くにいる兵士を数人殺した。
俺もハンドガンを適当にぶちまけた。何を隠そう俺は銃器の扱いに関しては最悪だ。零距離から撃っても目標には当たらない、ありえないと思われるが本当だ…
そして左腰に差していた刺剣を抜いた。その刺剣はどう見ても普通のと違う。普通のは斬る事ができる様に刀身の厚さは薄くなっている筈が彼のそれはは三角錐が細長く伸びていた様だ。刺す為にしか造られている剣。刀身は135メートルある。
「宅沢流幻影突きッ!」
彼は兵隊のど真ん中に向かってエストックを突いた。するとその剣の500倍分の大きさに旋風が彼らを跡形も無く貫いた。そして夥しい程に血が黒いアスファルトを赤く染めた。
だが大柄の男だけは死ななかった。
「静粛なる踏みつけッ」
すると第六感が働き令子に落とされると分かった。
「危ないッ!」
そう言いながら彼女を押し飛ばした。「キャッ⁉︎」すると彼女は顔を赤らめて睨んでくる。よく見ると右手は令子の胸を掴んでおり、左手はか細い手首を掴んでいた。
「あっ、ごっごめん」
無意識にそう謝ると立ち上がって刺剣を構えて。数秒遅れて令子も西洋剣を構えて立ち上がる。一瞬キッと睨まれて「あとで覚えておきなさいよ」と言われた。すると今気づいたがこの腕輪が起動してない。多分機械を一時的に強制シャットダウンさせると言って見せて来たあの石ころのお陰だろう。
「切り裂きジャック。」
そう言うと骨を一本投げ出すとそれが変形して人型になる。半分赤で半分黒の仮面、目のところはまるで嗤っており口の口角は目の高さへと伸びきっている。首や袖から覗き見える真っ白な乾燥した肌に、漆黒の燕尾服に白色の線が混ざっている黒の絹帽子。
その片手には刃こぼれした小さい鎌、左手には固まった血が付いている斧。その姿はまるで昔のシャーロック・ホームズに出て来た切り裂きジャックとは少し違うが似ている気がする。
「さぁ、存分に切り裂いていいわよ。」
そう言われると切り裂きジャックは血で濡れたアスファルトの地面を蹴り飛ばした。




