最初の1手
この国唯一の貴族、ジョーンさんを救ったお礼に俺達はこの国を救うために力を貸す権利を貰った。
まぁ、頼めばいつでも貰えた権利かもしれないが、部外者の俺達をそう簡単には信じて貰えないだろう。
そういう意味では、不謹慎だが、ジョージさんが倒れたのは言いきっかけになった。
さて、まずはロイドの豆を増やすことから始めようか。
「お父様に聞いたら自由にしても良いって言われた!」
「よし、じゃあ、この木を増やす方法を探すか」
「うん、そうだね」
「まぁ、最初は適当な場所に植えるか」
俺はロイドの豆を取り、近くの場所にいくつか植えてみた。
「成長には時間がかかるだろうから、少しの間待っておくか」
「うん」
「じゃあ、その間の宿泊は私の家を使ってくれ」
「アルデ、良いの?」
「あぁ、構わない、この国を救ってくれるというのなら同士の様な物だからな」
「ありがとうな」
さて、この木がなるまで結構な時間がかかるだろう、なら、その間にアピールをしておかないとな。
現状、1本生えているこの木になっている豆の数はざっと見で100か、かなり多い方かな。
まぁ、豆の木になる豆の数なんて数えた事なんて無いがな。
でも、まぁ、これだけあればアピールとしては丁度良いだろう。
「よし、これを50束取っておくか」
「それで、どうするの?」
「これを売ってアピールするんだ、最初は安めで、評判が上がったら値上げとかな
逆に最初から値段を高くして、お金持ちに売り、そこから口コミで広げるとかな」
「どっちが良いの?」
「今の状態だと、後者だ、そこまで数が無いからな」
「へぇー、じゃあ、お金持ちの人に売れば良いんだね」
「そうなるな」
まぁ、問題はどれだけ鮮度を保てるかだ、まぁ、ここから大きな街までそこまで距離は無いな。
1日で行き来出来る位の距離だったからな。
「よし、じゃあ、これを売りに行けば良いんだね」
「あぁ、前売ってた調味料と一緒にな、それで上手く言えば買って貰えるだろう
まぁ、簡単に言えば、リリーナの交渉術次第って事だ」
「えへへ、責任重大だね、でも、やってみるよ」
{君は商売の勉強とかをしていたの?}
{まぁな、親が八百屋だからさ}
{八百屋は商売の腕もいるんだね}
{野菜を安く仕入れるには必要なんだとよ}
{ふーん}
俺の家は八百屋、そんで、父さんの教育方針で俺は営業術を叩き込まれた。
でも、正直八百屋にそんな知識は要るのか? と思っているが
まぁ、今はそんな教育をしてくれた親に感謝だな。
「じゃあ、荷造りしてくるね、待ってて!」
そう言い、リリーナは家の中に入っていった。
多分、商売用の調味料は家の中にあるんだろう。
そして、家で貯蔵していて、少しずつ小出しで売っている。
まぁ、こんな感じだろう。
それから、少ししてリリーナの家から馬車が出てきた。
「うん、準備は出来たよ、さぁ、行こう!」
「よし、分かった」
「売れれば良いんだけどな・・・」
{心配そうですね、アルデさん}
{そりゃあ心配するだろう、売れなかったら大変だからな}
そして、あまり長くない道を俺達はゆっくりと進んでいった。
前、俺達があったときは魔物だらけだったが、今回はあまりいないな。
まぁ、こっちの方がありがたいけどな。
「ふぅ、今日は何事も無くて良かったよ」
「と言うか、昨日が異常だったんだ、街に続く道に魔物なんて普通はあり得ない」
「そうだよね、盗賊とかはあるけど、魔物は珍しいよ」
「盗賊? そんなのがいたのか?」
「うん、あの時は危うく積み荷を取られちゃうところだったよ」
「まぁ、何とか殲滅は出来たんだよ、烏合の衆だったからな」
「アルデってやっぱり強いんだな」
「相手が弱すぎただけだ、統率の取れていない部隊なんて敵じゃ無い」
初めて会ったときは魔物に苦戦していたが、実は魔物の方が盗賊よりも強いのか。
「じゃあ、売ってくるね!」
「分かった、では、私達は昨日のように待機しておこう」
「あぁ、分かった」
そして、俺達は昨日のように待機して、リリーナを見守っていた。
今回はあまり遠くの方で待機していないから、リリーナの声が聞えるな。
「はい、塩ですね、6ゴールドです」
「やっぱり安いね、ここは」
「あはは、そうですか? あ、そうだ、今日は新商品があるんです」
「何だい?」
「私の国の特産、ロイドの豆です、美味しいんですよ?」
「へぇ~、リリーナちゃんが言うんだし、美味しいんだろうね~、いくらだい?」
「はい、実はこの豆はあまり作られていないんです、ですので少しお高めの100ゴールドですね」
「100ゴールドか、リリーナちゃんのお店では高いね、でも、おばちゃんは買っちゃうよ
常連だからね、それに興味もあるしね」
そう言うと、リリーナの店で買い物をしているおばちゃんは100ゴールドを渡した。
そして、リリーナはロイドの豆をそのおばちゃんに渡す。
「この豆はここで食べても良いのかい?」
「はい、良いですよ、本当は火を通した方が美味しいんですけど、生でも十分美味しいです」
「そうかい、じゃあ、食べてみようかね」
そして、そのおばちゃんはロイドの豆を食った。
本当は焼いた物を渡した方が効果的だが、残念ながらそんな機材は無い。
しかし、どうやら生のままでも十分美味しいようだな。
「美味しいね! こんな物があったのかい、リリーナちゃんも人が悪いよ」
「えへへ、実は今までこれを売るって言う発想が無かったんですよね」
「そうなのかい? こんなに美味しいのに勿体ないね、じゃあ、なんで売るつもりになったんだい?」
「私の恩人の方がこれを売った方が良いんじゃないか? と言ってくれまして、それで気が付きました」
「そうかい、じゃあ、おばちゃんもその人に感謝しないとね、こんな美味しい物を食べれるのんだ」
ふむ、どうやら成功のようだな、その後、沢山のお客人が調味料と一緒に
そのロイドの豆を買っていった、その全部の評価はとても美味しいだった。
そりゃあ、豆で肉の味を感じれるんだ、歯ごたえも良いし、最高だろうよ。
そして、販売してから僅か1時間で50個のロイドの豆は売り切れた。
本当はもっと速く無くなってたはずだが、お一人様3つまでの制約を設けているからな。
あまり無いのに大人買いされたらプロモーションにならないからな。
ま、結果として今回のこれは大成功って所だろう。
{あはは、成功したみたいだね}
{あぁ、これであの国は結構な財源を手に入れたはずだ、後はあの木が大きくなるのを待つか}
{そうだね}
「ありがとうございました! 品物が全部売れちゃった、嬉しいな」
品物を完全に売ったリリーナは嬉しそうに笑っていた。
「よし、じゃあ、そろそろ帰るか」
「うん、もう売る物無いからね」
「じゃあ、安全第一で帰ろう、いつものように」
「うん! えへへ、今日はお父様に良いお知らせが出来るよ!」
そして、俺達は昨日と同じ様に、街道をゆっくりと歩いて行った。
「ふぅ、今日も無事に帰ってこれたよ」
「そうだな、盗賊も魔物も来なかったし」
「あぁ、こんなのが一番だ」
そして、リリーナは家に戻りった、恐らくジョーンさんに今回の成功を告げるのだろう。
これでこの国の財政も何とかなると良いが、まぁ、問題はあの植えた豆が育つかだな。