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CHERRY BLOSSOM ~チェリーブロッサム~  作者: 悠里
第七章「Standing position」
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071 進路相談

「で? どうだったんだ?」

 ベランダの手摺りに背中からもたれかかった北倉浩一郎は、赤坂真吾にそう問いかけて青空を見上げた。

 照りつける太陽のまぶしさに視界が一瞬白く染まり、反射的に目を細める。

 まだ春の気配を残す空は、水色の絵の具を薄く溶かしたように淡く、霞のような雲がたなびいていた。


 昼休みも残り僅かとなり、二年生の教室に面したベランダには真吾と浩一郎のふたりの姿しか見えない。

 一般教室と職員室がある校舎のベランダは、避難通路の役割も持っているので同じ階全てが繋がっていて非常階段へと続いていた。

 なので、クラスが違う生徒同士がベランダで話し込む姿はそう珍しくなかった。


 教室内の喧騒でベランダも決して静かではなかったものの、話し声そのものが騒がしさに紛れて、あまり他人に聞かれたくない話をするのに今はちょうど良かった。


「……笑ってた」

 遠くをぼんやりと眺めながら答える真吾の声は、浩一郎が思わず苦笑いするほど弱々しかった。


「そっか……強いな、さくらちゃん」

「そう、かな」

「ん?」

 曖昧な真吾の返事に、浩一郎は意外そうな表情で隣に佇む友人の横顔を眺める。


「昔から弱みをあまり見せないだけで、そんなに強くはないはずなんだ。でも、強がってる……って感じでもなかった。詳しくは聞けなかったけど、もし、浩一郎が言ってたことが、本当にさくらの身にふりかかっていたとしたら……平気なはずないと思う」

「でも、笑ってたんだろ?」

「うん。でも、それはきっと、時間をかけてようやく笑えるようになったんじゃないかな」

 真吾は自分が見てきたさくらの様子を思い浮かべながら、そう結論づける。


「……よし。上出来だ」

 そんな真吾を横目で見ていた浩一郎が満足げに笑う。


「なにが上出来なんだよ?」

「いやいや。それよりもだな。ならどうして、さくらちゃんがおまえに黙ってたのかについても大方の結論は出したんだろ?」

「…………」

 真吾は無言のまま、納得できないといった表情で浩一郎を睨む。

 浩一郎はそれに対して肩を竦めてみせた。


「だーかーらー。そんなに睨むなって。おまえに教えた俺が悪いんじゃないだろ?」

「……そ、それはそうだな。ごめん……」

「気にすんなって。おまえの気持ちもわからなくもないからさ」

「いや、完璧に八つ当たりだった。悪かった」

「そんなに気にすんなってば。そんなに謝られると、どうも居心地悪くなんだからさ」

 むずむずと背筋を震わせて眉をひそめる浩一郎に、真吾は真剣な表情のまま口を開いた。


「さくらがなぜ黙ってたのかは、心配かけたくないとか、その辺の理由が根っこにあるんだとは思う。でも、それだけじゃないはずなんだ」

「へぇ。なんでそう思うんだ?」

「それは……根拠とかそういうんじゃなくて……うまく言えないんだけど、なにか僕に『隠さないといけない必要』があったんじゃないか、と思う」

「知られたら、おまえに嫌われると思った、とか?」

「まさか」

 真吾は浩一郎の言葉を一笑に付した。


「さくらは昔から『嫌われたのなら別にそれでいい』と考える子だったからね。そういうんじゃなくて……例えば、今さくらが置かれてる状況の原因と言うか要因に、僕が自分の知らないところで、なにか関与しているとか、そんなところじゃないかな」


 表情は変えなかったものの、浩一郎は真吾の洞察力に密かに感心した。

 こと女性に関しては疎い鈍いとしていた彼の評価を見直すべきかと思案する。

 しかし、今回は相手が幼なじみである『波綺さくら』だからこその洞察力なのかもしれない、と結論づけた。


「う~ん、ま、その答えは、さくらちゃん自身から聞くしかないだろうな」

「そうだね。まぁ、話してくれれば。だけどね」

「がんばれよ。チカラになってやるんだろう?」

「うん。今度こそ、ね」

 さっきまで思い悩んでいたはずの真吾だったが、話すうちになにか解決できたのか晴れやかな笑顔で答えた。


「……まぁ俺も微力ながら協力するからさ、なんでも言ってくれ」

 浩一郎は『今度こそ』と言う言葉に興味が湧いたものの、時間的余裕を考え次の機会に聞くことにして話を続けた。


「サンキュ。そして教えてくれたことについても、ありがとう」

「礼なんかいいって。他人行儀だな」


 本鈴が鳴り、互いに手を挙げてそれぞれの教室へと戻る。


(やれやれ。自分の心には気が付いてないのに、さくらちゃんのことはよく分かってらっしゃる。やっぱ今勝負してもアドバンテージの差で負けは確実だろうな)

 浩一郎は、教室に戻る真吾の後ろ姿を見送りながら心の中で呟いた。


 そして、さくらの意図を汲んで敢えて教えなかった『赤坂ファンクラブ』についても、遠からず感づくだろう友人の心労に苦笑いしながら席についたのだった。








「さくらゴミ捨て行くの?」

 ゴミ箱を持って教室を出ていこうとした時、同じく掃除当番の茜が『一緒に行こうか』と申し出た。


「ありがと。ひとりで大丈夫だよ」

 笑顔で答えて教室を出る。

 心配そうに見送る茜にもう一度微笑み返したけど、やはり不安げな表情のままだった。


 放課後の廊下は、まだ生徒の姿であふれている。

 コノエのおかげで、ここ最近はなくなったけど、例の噂を真に受けた輩がいつ湧いてくるかわからない。それでなくても聞こえよがしな陰口や、奇異の視線に晒される現状では、俺をひとりで教室外を出歩かせるには心配なんだろう。

 過保護とも思えるその行動も、実際に学校内で襲われかけた事実があれば杞憂だと言い切れないのが、自分でも恥ずかしいやら情けないやらで何も反論できなくなる。


「……ま、次があれば、潰すけどね」

 小さな声で決意を表明する。


 元は自分にもあったモノだけに、実行に移すのは気後れしてたんだけど、もはや遠慮してる場合じゃない。

 蹴り上げればいいので、リハビリ中の左腕を気にする必要もないし。

 それに、コノエの話では状況証拠を作っておきさえずれば、間違いなく正当防衛で片づけられるそうだ。


 そんな不穏な考えに沈んでいたためかどうか、まさか聞こえていたわけでもないのだろうけど、生け贄となるべき男子生徒は現れることなく無事に焼却炉までたどり着いた。


 陰口に関しては、同じ一年生よりも二年、三年の女の先輩からがほとんどで、一年生の教室がある一、二階を歩く分にはそこまで支障はない。

 それよりも、四階にある志保ちゃんの教室や、三階にある調理実習室の行き帰りの方がそれに遭遇しやすい。

 メグの話では味方してくれている娘も増えているらしいけど、主観的には全然そんな感じはしてない。なので、あの言葉はリップサービス程度に思ってるんだけどね。


 意外な人の声で呼び止められたのは、その帰りに中庭を横切っていた時だった。


「さくらちゃ~ん」

 本来なら学校にいるはずのない人の声。

 まさか、と思って振り返ると、予想通り琴美さん……真吾の母親である赤坂琴美さんが窓越しに手を振っていた。


「琴美さん? どうしたんですか……って、ひょっとして……進路相談ですか?」

 窓際に寄りながら問いかけると、『そうなのよ~』と楽しそうに笑う。

 廊下には、琴美さんと同じく父兄と思われる数人の大人が順番待ちをしている。

 そっか、そう言えば、二年生はこの時期に三者面談で進路について話をするってメグが言ってたな。


「ねぇ、さくらちゃん。ちょっと時間取れる?」

 その言葉に応じて通用口から廊下へ戻ると、なぜか駆け寄ってきた琴美さんに『ちょっと待っててね。すぐ戻るから』と言い残されて置き去りにされてしまった。


「……待てって言われてもなぁ」

 掃除の途中なんだけど。

 呼ばれて来たはずなのに、ひとり残されても手持ち無沙汰で困ってしまう。

 幸い廊下には他の保護者が数人面談待ちしているので、俺がひとりでいても変な輩が接触してくることはないだろう。


「こんなとこでなにしてんのよ?」

 声とともに、後ろから肩をぽんっと叩かれる。

 振り向くと、部活にでも行く途中なのか英会話のテキスト集を抱えたメグが立っていた。

 いつも一緒にいる沙也加さんは、今は一緒じゃないみたいだ。


「……なにキョロキョロしてんのよ?」

「いや別に。掃除の途中なんだけど……そうそう。さっきまで琴美さんがいたんだけど、どこか行っちゃって」

 琴美さんが消えた廊下を見ると、つられたメグが同じく視線を向ける。


「あぁ、進路相談ね。私もそろそろなのよねー」

「メグは進路どうするの?」

 うんうんと頷いているメグに問いかける。

 まだまだ二年も先のことだけど、真吾とメグは高校卒業後どうするんだろう。


 お互い長くなりそうだと思ったのか、どちらともなく他の父兄たちから少し離れ、通行の邪魔にならないように端に移動する。


「私は進学ね。まだはっきりと決めてないんだけど、国際英語が学べて、留学とか、ネイティブの講師とか、条件が良い大学を選んでるとこ」

「へぇ~。しっかりしたビジョンがあるんだなぁ」

 メグなら別に意外でもなんでもないんだけど、明確な目標を持ってるんだと思うと感心する。


「なに寝とぼけたこと言ってんのよ。あんたも来年は同じ立場なんだから。将来どんな職業に就きたいとか、少しは考えてないの?」

「……さっぱり」

「あ、あんたねぇ……」

 ジトっと睨まれたので苦笑いで誤魔化す。


「今までいろいろ手一杯だったからさ。そろそろなにか考えておくよ」

「なんかやりたいこととかないの?」

「いやぁ、一回人生リセットしたようなもんだからね」

「それはそうなんだけど、自分の将来設計なのよ? やってみたいこととか、本当にないの?」

 なんになりたいか、なにをしたいのかなんて、女にならなきゃいけないことを優先してて考えもしてなかった。

 それに……



「食べていければ、仕事はなんでもいいかな」

「……仕事ってことは、進学じゃなくて就職?」

「ん? あぁもちろん。問題なければ、今からでも働きたいとは思ってたくらいだし」

「働きたいって、高校辞めてでもってこと?」

「うん。もともと進学する気あまりなかったし」

「はぁ……あんたねぇ」

 これみよがしにため息をつかれる。


「どうかした?」

「まぁそこは譲るとしても」

 なにをどう譲るのか聞こうと思ったけど、メグの真剣な表情に喉まで出かかった言葉を飲み込む。


「働く気はあっても、どんな仕事をしたいかってビジョンはないわけ?」

「中卒じゃ選べるほどの仕事はないかなって」

「だーかーら。進学して選択肢増やすんじゃないの」

「別になんでもいいんだって。そりゃ、実際には選ぶと思うけど、それは目の前の選択肢から最善と思うものを選ぶんであって、なにかになりたいからそれを選択するんじゃないんだよ」

「なに? そんなに早く働きたいわけ?」

「できるならね」

「んじゃ、なんで光陵に進学したのよ」

「うん。働きたいって親に相談したんだけど、高校くらいは出て欲しいって」

「そりゃそうでしょ。イマドキ最終学歴が中卒って、なんかワケ有りですって言ってるようなもんだし」

「そこはほら、実際ワケ有りなんだし」

「なに自虐ネタで笑ってんのよっ」

 ちぇっ。冗談通じなかった。


「お待たせ、さくらちゃん。あら、恵ちゃんもこんにちは」

「こんにちは。琴美おばさま」

 走ってきたのか、少し息を乱した琴美さんにメグが礼儀正しく頭を下げる。

 当然なんだろうけど、俺に対しての態度と口調に雲泥の差がある。


「でね、これなんだけど……」

 厚みがある洋封筒を琴美さんから手渡される。


「なんですか?」

「開けてみて」

 期待に満ちた笑顔の琴美さんと、興味津々なメグに注目されながら封筒の中身を取り出す。

 これは……写真?


 十数枚ほどあるプリント写真にはジョンと一緒に制服姿の俺が写っていた。


「あぁ。これってあの時の……」

「そうなの。プリントは早くに終わってたんだけど、なかなか手渡す機会がなくって。今日ならひょっとしてさくらちゃんに会えるかもって思って持ってきててよかったわ~」

「これ、琴美おばさまが撮られたんですか?」

 横から写真を覗き込むメグ。


「ふふ。写真はまだまだ勉強中の身なんですけどね」

「へぇ~。お上手ですね。構図やタイミングとかもしっかりしてるし」

 とか言いながら俺の手から写真を奪い取るメグ……この図々しさはどうにかならないのだろうか。


「それはモデルがいいからかしらね」

「そうですねぇ。それはあんまり関係ないと思いますよ」

 メグは琴美さんの言葉を微妙に変えつつ、横目でこちらを見てニヤつく。

 くそっ。別に俺がモデルだからってのは同意したくないんだけど、メグの言い方はそれはそれでムカつくな。


「ね、さくらちゃん。またモデル頼んでもいいかしら?」

「う。まぁ、ジョンと一緒なら……」

 少し苦笑いで答えたけど、琴美さんは一向に気にした風でもなく微笑んだ。


「そぉ? なら、また今度お願いね」

「……はい」

 ま、まぁ写真くらいならいいか。とか思ってると、メグが肩でドンッと押してくる。


「なんだよ?」

「ちょっとっ! これ、な、な、なんなのよ!」


 差し出された写真を見た瞬間、一気に血の気が引いた。


「な、あ、こ、これ……」

「あぁ、それ? どう? よく撮れてるでしょ?」

 俺たちの動揺ぶりとは裏腹に、落ち着き払った琴美さんが優雅に微笑む。


「ナイトショットって言ってね、薄暗闇の中でも鮮明に撮れるってことだったのだけど、本当によく撮れるのね~」

 琴美さんの言葉が聞こえてはいるけど、頭の中に入らない精神状態のまま写真を見つめる。


 その写真には、布団の中で寄り添って眠る俺と真吾が写っていた。

 しかし、いつの間にこんなん撮られたんだ? ひとつ確かなのは、琴美さんは部屋に入ってコレを撮ったってことで、真吾の応援に行ったあの朝にはすでに知っていたってことだ。


 そうか……だから、嫁がどうとか結納がとかの話に展開してたのか……………………。


「……から、どういうことだって聞いてんのよ!」

 はっ!? メグに身体を揺さぶられて意識が戻ってきた。


「い、いや、待て。落ち着け」

「十分落ち着いてるわよ!」

「メ、メグ。落ちてる。落ちてるから……」

 本人は落ち着いてると言うものの、手にしていたテキストと写真が揺すっていた反動で次々と床にばらまかれていく。


「あらあら大変」

「あ、ごめんなさい」

 琴美さんが拾い集めてだしてから、初めて気づいたかのようにメグも俺を揺するのをやめて、テキストや写真を拾い集め出す。


「あ~ぁ。こんなにばらまいて……」

「元はと言えば、あんたがあんなことしてるからでしょっ」

「してるってなにを?」

「だから、あの写真の……」

 拾い集めた写真を探すメグ。でも、不思議なことに例の写真は忽然と姿を消していた。


 あれを無くすとまずくないか? いろいろと。


「メグ、まさか隠し持ってたりしないだろうな?」

「っばっかじゃないの!? どうしてあんなの私が欲しがるのよ。くだらないこと言ってる間に、その辺落ちてないか探してよ」

「いや、それが見あたらないから言ってるんだけど」

 周囲を見回しても、それらしいものは落ちていない。

 廊下には遠くへ飛ぶほど強い風も吹いていないし、だからこそメグが気づかずに持ってるんじゃないかと思ったんだけど。


「もっとよく探しなさいよ!」

 テキストを1冊ずつペラペラとめくるメグに逆切れされた。

 いや、そもそも、メグがばらまいた張本人なんだが。


「まぁまぁ。欲しかったらまたプリントするから大丈夫よ」

 俺たちをなだめるように、琴美さんがパタパタと手を振る。

 いや、そういうことを問題にしてるんじゃないんです琴美さん。


「ふふ。あの写真の真相はね、さくらちゃんが夜おトイレに起きたあと、間違えて真吾の部屋に戻っちゃったからなんですって」

 紛失写真の問題が終了したと思ったのか、琴美さんが先程のメグの疑問に答えた。


 いや、それはその通りなんですけど、なぜにその時の写真があるのかの方が俺的に問題なんです。と、喉まで出かかったけど、メグの鋭い視線の矛先をかわすために自己弁護する方が優先だと判断する。


「ほら、昔は壬琴さんもいたし、泊まりに行った時は普通に真吾と一緒に寝てたんだよ。その……前はまだ……アレだったし。だから、トイレに起きたあと寝ぼけてあんなことになったってだけで、別に他意があったとかそういうわけじゃないんだ。本当に。うん」

 ジトーっとしたメグの視線に耐えられず、言い訳めいた言葉が次々に出てくる。


 で、一体俺はなにを必死に言い訳してるんだ?

 例えば琴美さんにこそ事情を話す必要はあるだろうけど、別にメグに対して弁明する理由はないだろう。

 メグが真お吾の彼女ってんなら話は別だけど……って、あれ?


 見えない可能性に行き当たって、思考がリセットされたように真っ白になる。

 俺、今、なんて思ってたんだっけ?

 内心パニックのまま不思議そうにメグを見返すと、なにやら気まずそうに視線が逸らされた。


 うん。なにか、これ以上先には踏み込まない方がいいと思う。


 …………ま、まぁいっか。

 とにかく説明したし、理解してもらえたと思っていいだろう。


「とにかく、無意識のうちに習慣化してた行動を取っただけなんだって」

「まぁ事情はわかったわ。あり得ないことでもなさそうだし。でもね、あんたも女の子なんだから、ちゃんと自覚しておきなさいよ。大体ね、あんたってばしっかりしてるようで、いつも肝心なとこが抜けてるんだから……正直言わせてもらえば、まだまだ自覚が足りないんじゃない? ちょっとつつくと簡単にボロが出ちゃうし、そもそも再会したときだって……」

「わかったわかった。わかってるって。俺も起きたとき驚いたんだか……いやいや、うん。了解しました」

 言葉途中でメグの目の色が追求モードに変わりかけたのを察して言い直す。

 我ながらメグ限定危機回避能力には定評があるなぁ。

 問題は地雷を踏まないと察知できないことだけど。


 ふと琴美さんを見ると、完全に観戦モードでクスクスと笑っていた。



 ほどなく面接が始まって真吾の番となり、時間ぎりぎりで現れた本人とともに琴美さんは教室に入っていった。

 さて、もう終わってるだろうけど掃除に戻らないと。




 この時無くしたと思った写真は、数日後、意外な人物の手によって再び目にすることになる。

 それは、歓迎せざる事態を招く呼び水になるとともに、予想外の結果へと繋がるきっかけとなっていく。


 あとになってこの時のことを思い返すと、人生どう転がるかわかんないものだとしみじみ実感するしかない出来事だった。

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