3/3
3
「はやく、かえったほうが」
いつから雨に打たれいるかわからないそいつは
全身びしょ濡れで。
「かぜひくよ」
そう声をかけて背を向ける。
オレも今日からは何もない日々を
きっとあいつも。
きっと、あいつもそうなんだ。
きっと、あいつも何かを捨ててる。
「ねえ」
か細い声で呼び止められて、ふいに振り向く。
「俺と同じですよね」
色を映していない瞳
「うん、きっと」
「んふふ、やっぱり」
「おまえも、なんかすてたんだろ?」
「そうですね」
そいつは俯いて小さく呟いた。
「捨てられた、が正しいのかな」
ああ、あの瞳、オレと、一緒だ。
「いくとこ、あんの?」
「ないですよ、そんなとこ」
ほら、やっぱり。
ないっていうと思った。
オレと同じ
全てを諦めた瞳をしていたから。




