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雨が降っているのに、傘もささずに
そいつは立ちすくんでいた。
泣いているのか
雨のせいなのか
オレにはわからなくて。
「かぜ、ひく」
何故かおれは、名前も知らない
見たこともないそいつに声をかけた。
そいつは、色のない瞳を向けて
オレに小さく笑いかけた。
「大丈夫ですよ、俺は」
ああ、こいつ、オレと一緒だ。
ふいにそう思った。
「オレもだよ」
「え?」
「オレも一緒だよ」
「何言っ」
「キミも捨てたの?」
自分自身を。
そいつは小さく笑った。
「なんだ、一緒なんですね」
小さく笑う瞳に色は見えなくて
オレを見ているようだった。




