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紅ノ空中要塞 2

 無音に近い閃光が煌めく。


 敵機のミサイルが、突然何かを思い出したようにUターンして、閃光する副兵装目掛けて飛んでいく。


電波妨害爆弾(ボンバー)、上手くいきましたね」


「まだた、まだ終わってない。ここを切り抜けないと」


【紫電絶、作戦空域外でエンゲージ。敵対象2機】


【紫電莱、こっちも交戦。うわ、三対一ってどうなのよ?】


【日ごろの行い】


【ちょ、誰だ――――っ! 今言った奴っ!】


 荒っぽい口調の男が憤慨しつつも、彼の戦闘機からは慌てた声がすぐに漏れ始めた。


【――っとぉ……やばいぜ隊長ぉー! 急いでくださいよぉ】


 副兵装(サブ・ウェポン)にターゲットが集中している間に、敵の装甲にゼロ距離付近まで接近する。


「レーダー反応なし、高エネルギー対象急速接近 あ、危ないです隊長さん!」


「ぬあ、機銃かっ!」


 ガガガガガガガッ! という掃射音がスプリンクラーのように撒き散らされる。


「敵空中要塞の右舷方向から敵砲手の機銃掃射です!」


「右翼が損傷!」


 その衝撃で機体が大きくよろめき、必要とする高度をかなり大きく落としてから機体の軌道修正を済ませると、隊長は言った。


「いけるか? ミナモ……っ」


「右翼被弾しましたが、まだいけます」


「よし、このままフィナーレといこうっ」


 装甲部を抜け、尾翼の後方付近に司令部があるのを2D型可視レーダー――TEV(トゥーディメンション・エネミー・ビジョン)――で確認して、主翼を垂直に曲げてから、左から右周りに大きく旋回し、12時の方向で失速(ストール)して宙返りし、6時に向き直る。


 真っ正面から向かい合った赤カブトに、かつての面影はなかった。



 戦国武将のような鎧兜の全体像に、外部装甲は真田雪村を連想させるような赤塗り。


 甲板部分には黒く漆黒に光る。クロイツ帝国の国章のカギ十字が描かれている。



 それが、つまり赤カブトと呼ばれる略称――《紅ノ空中要塞》の名前の由来であった。


 だが、いまやそれは、装甲は陥落仕掛かった城塞のように黒煙を様々な箇所から立ち上らせ。機体そのものは沈没しかかった旅客船のように高度を緩やかに落としている。


 終わらせてやる。と心で唱えて、無言のまま秘密兵装を射出する。


 秘密兵装こと、暴れ(レイジ・ドラゴン)という名称のついた超大型の特注ミサイルが、最大目標の心臓部に――ガスッッ――とその刃を突き立てた。



 巨大な、今までにないほど広大な白い光を周囲に散らしていきながら、突然周囲の音が全て、その一点に吸い込まれる。


 雲の菌糸からはキノコが生まるる。


 一瞬の静寂。




 ドゴオオオオォォォォォッ――――――。




 鼓膜を突き破りそうな爆音がコックピットを襲った後で、潮凪機は骸となった赤カブトを見下ろしていた。


【……目標の熱源、徐々に消失。やりましたね。隊長! 私、うれしくて泣きそうです】


 若い女性の声は今まで呟いていた自機コードの呼称も忘れて、ただただ感激していた。


【やっふーっ! こちら敵機反応、徐々に撤退していきますよ】


【さあ、帰りましょう】


 コックピット内部から撮影された動画は、そこで途切れた。




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