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初陣 3

 黒江の小隊は、所属本営地の前日未明にかけて横須賀にある武山基地から、北九州市の西方に位置する芦屋(あしや)基地へと向かい。


 午後15頃に基地を出立し、対馬防衛前線基地へと向かう。


【全隊員に告ぐ、各搭乗員はこれより私、隊長入間の指示を第一優先として行動してもらう。用意はできているな?】


【了解】


【了解!】


【それではミッションスタートだ。検討を祈る】




 銘々の搭乗部隊が無線で応答し、黒江にとっての初陣が幕を開けた。




「さぁ、いよいよ始まるざますよー」


「おいおい。それどこで覚えたんだよ」


「ン、そこに置いてあるマンガですよ」


 ああ、なるほど、とコックピットの棚にあった怪物君の漫画をパラパラと捲った。


「でも、これ、お前に読んで聞かせたりしたか?」


 当たり前であるが、コックピットスーツから本を読んでも、レイナの方からは表面のカバーにある怪物君の特徴的な帽子ぐらいしか、目には映らないはずだった。


「ここでモニタリングしている目が視界の範囲じゃないですから、パイロットスーツの反対側とか、いわゆる人間の網膜にあたるのは、このコックピット内部と外部全体だから、当たり前じゃないですか、……ってもしかして、マスター。そんな当たり前の事、知らなかったなんて言わないですよね」


 そ、そうだったのか……。知らなかった。


「あ、当たり前じゃないか……ハハハ」


「その目は!!……ウソを付いている目ですね……」


 レイナが訝しい表情でこちらを睨み、細目でパチクリとさせた。気まずくなった僕は、無理やり話題を変えることにした。


「ま、まぁそれはさておき、今回の作戦に関しては、教わったマニュアル通りに操縦桿を操作していって、出力を微調整。後はレイナ様にお任せすれば」


「お任せあれ!」


「お任せすれば……」


 いいはずだったんだけど。


「お任せあれ!」




 あれれ――? おかしいな。




 ちょっと会話に夢中になっていて、今ようやくもって気が付いたんだが……。


 これはおかしい。どんどん離されてる。入間さんの無線指示では『全員平常運行で目的地北東部の第6小隊湾岸空母上空ポイントへと向かえ』という指示だったはず。


 方向舵(ラダー)は確かにそっちの方向にみんな舵を取ってるし、それが間違いないのはTEVモニターのレーダーから点在する小隊の位置からも、分かるはずだった。あ、消えた。







「おいぃぃぃ!? 無茶苦茶最前列と離されてるんですがぁ?」




 まずい、とんでもなくまずい事になった。しかし、原因はなんてことはない。いたってシンプルな問題だ。それは……。


単なる最大加速度(スピード)不足。


 富嶽機と味方僚機全般のスピードとの間に主に根本的部分で明らかな差があったのだ。


 例えるならそう、自転車と徒歩、あるいは自動車と自転車並の、テクニックではどうしようもない圧倒的な加速性能の差だった。


「気のせい気のせい」


「全然気のせいじゃねえよぉ! レーダー見ろよ! 12機ともTEVのレーダー圏外に行ってるじゃねえかよぉ!」


 その後で僕は少々、今思えばかなり強引な手を使った。出力をセミオートから手動に切り替えた。


 ほぼ可能な限りブースターをかけてなんとかみんなに追いつこうとした結果。


 レイナは「ふわぁぁぁっ! やめてええ、くすぐったい。ぎゃはは」という弱い反抗から徐々に前略で解説した通りの感じになった訳であります。

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