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エピローグ:さよなら私の日常生活

少女たちが戦場を駆け回る姿を書いてみたいと思って始まった小説です、どうか生暖かい眼差しで見ていただけると嬉しいです

 砂塵が舞う都市区画をひとりの少女が駆け抜けていた。

 腕には大事そうに短機関銃(サブマシンガン)を抱えており、腰のホルスターにも一丁の拳銃(ハンドガン)が収められている。

 普通の少女ではありえないような速度で戦場を駆け抜ける少女はまさに戦乙女(バルキリー)のような燃えるような赤髪に、キリリとした瞳とシャープな顎のラインが不思議と戦場にマッチする、戦う為にいるような容貌をした少女だった。

 そんな戦場の乙女の名はミヤコこと神野々(このの)みやこ、この戦場では知らぬものはいないほどの古強者にして猛者だ。


『ミヤコ!そっちに二人行ったわ!』


 耳に付けられたインカムからとても聞き慣れた耳に馴染む声が聞こえてくる。

 彼女たちの指揮官(コマンダー)、ユーコこと風見優子だった。


「了解、こっちでひとり仕留めるから、アヤ援護お願い!」

『了解、先頭で出てくるのを狙撃する』


 みやこの要請に応えたのは戦場には似つかわしくないまだ幼さを残す声だった。

 彼女はアヤこと綾川栞奈(かんな)、みやこや優子程の歴戦の猛者ではないものの、狙撃という高い集中力を必要とする作業において、彼女の右に出る兵士を未だみやこは知らない。

 廃ビルの影から二人の兵士が飛び出してくる。

 彼らはそこにミヤコがいることを予想すら出来ていなかったため、反応がほんのコンマ何秒遅れた。

 しかし、それが彼らの命を奪う結果となった。

 みやこの遥か後方から一発の弾丸が飛来し、先頭にいた男の頭を撃ち抜いた。

 やや遅れて音が届く、しかしもうひとりの男はその音を聞くことは叶わなかった。

 音より速く、熱く熱された鉛が眉間を撃ち抜いていたのだ。

 一気に戦場が静かになる、またひとつの戦闘が終結したのだ。


「いやったー!」


 みやこは部屋の椅子の上でガッツポーズをとっていた。


『どう?これでポイント足りる?』

「うん、ありがとうみんな、おかげで隠密(ハイディング)スキルがカンストできるー!」


 部屋でくつろぐ彼女は戦場のミヤコを想像させないような年相応の姿をしたひとりの少女だった。

 ゲームのアバターとは違い、栗色の髪の毛を肩のあたりまで伸ばしていて、瞳はクリクリとしている、戦場にいるよりも剣と魔法のファンタジーな世界ににいるほうが不自然ないような少女だった。

 神野々みやこ、都内在住、都立中学校に通うごく一般的な女生徒だ。

 趣味はゲームと読書で、最近特にハマっているのはFPSの新作『トライレギオン』だった。

《トライレギオン》

 現在世界中で大人気となっている最新のF(ファースト)P(パーソン)S(シューティング)ゲームだ。

 その世界は地球とは違う、しかしどこか地球に似た惑星、そこには人が住んでいた。

 元々は緑豊かな惑星だったのだが、やがて戦争が地上から緑を奪ってしまった。

 それからは地上は三つの巨大な勢力(レギオン)に分かれて残り僅かな資源を奪い合うまさに終末戦争というにふさわしい大戦争が始まったのだ。

 どこかありきたりな設定ではあるが、それゆえに理解しやすく、目的もはっきりしている、しかし特徴的なのはここからだった。

 このゲームにはスキルシステムが搭載されているのだ。

 例えば今みやこが上げていた隠密(ハイディング)スキル、このスキルがあれば能力発動中はマップに一切映らなくなり、アバター自身も透けて見えにくくなるという優れもの。

 このように自分の好きなようにキャラクターを育成できるのが魅力で現在世界でプレイヤー人口はすでに三百万人を突破しているらしい。

 そしてこのゲームのもうひとつの特徴が戦場が常に移動することである。

 正しく言えば戦場はひとつしかないのだ、たった一つ、世界にあるありとあらゆる戦場のデータがリアルタイムで交換され、あらゆる場所が戦場となる。

 あるときは今回のように旧市街で、あるときは平原で、極地で、世界中が全て繋がった広い戦場になっている、そこで常に領土の取り合いを行なっているのだ。

 最終的には地上をすべて自分のレギオンの土地にすることによって最終的な勝者が決まるのだが、それはいつになるのか誰も予想することができない。

 皆が皆、少しでも勝てるように行動する、あるものは最前線に立ち戦線を維持し、あるものは裏から工場地帯を攻撃する、まさに戦争をしているのだ。


 ─閑話休題(それはともかく)


「それじゃあ最後にもう一戦して、今日は落ちようかな」


 あれからもう一箇所戦場を駆け抜け、時刻は午後の十時になろうかとしていた。


『そうね、じゃあどこ行こうかしら?』

『わたし、砂漠がいい、広いから狙撃しやすい』

「じゃあ砂漠周辺でさがすね~」


 これが少女たちの運命を決定的に曲げてしまった。


「あ、あったあった」


 ちょうど砂漠で交戦中の味方を見つけたので、そこにマウスを合わせ、クリックした。

 参戦しますか?(警告:現在小隊を組んでいます、小隊メンバーも自動で参戦することになります)Y/N

 そしてYをクリックして、三人の記憶は途切れた……

よろしければ感想やコメントをいただきたいです。

皆様の素直な感想をいただけると幸いです。

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