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行方2

 真っ暗に疼いていた意識の中

 遠く、霞んでしまいそうなほど遠くの方で


 誰かがあたしの名前を呼んだ


『おい、日乃川』

 誰?

 君はだれ?

 どうしてあたしの名前を呼ぶの?

 手元に握る杖に力がこもる

 誰?

 呼んでいるのは――――――誰?

『日乃川、起きろ・・・』

 世界が歪む

 暗闇の中、あたしの名前だけがただ真っ直ぐに響く

 目を開けなくちゃ

 てのひらの痣が軋むように悲鳴をあげている

 その時、思いきり耳もとで声がした

 懐かしく淡く 何処かで聞いたことのある声

『日乃川 リツ、どうしてこんなところに来たんだよ』


 その声は・・・・


「龍崎!?」

 思い切り目を開けると、さっきとは微塵も変わってない掌の痣と、杖があるだけだった

「居ない・・・・・・でも今たしかに・・・」

「若君の力で戻って来たのに御主はいつまでたってもかわらんのぉう」

 聞きなれた声

 そういえばどうしてあたしは森にいるの?

 さっきの牢屋は?男の子は?

 気配も姿もどこにもない

 それにこの人は――――――

「おじいちゃん!」

 白いひげの優しい顔の二ノラの顔がすぐ横にあった

 よく見ると、一番最初に来た森の中だ

「・・・だから、その名で呼ぶなと言っておろうに」

 不機嫌そうな返事には力が無く、飽きれているようにも聴こえる

 けれど、リツが気にするようなことは何もなかった

「あのさ、あたしなんかア―グルって子に言われて杖の使い方教えてほしいんだけどっ!」

 思いのままに飛びかかる

「そうか空賊の・・・なら時間が無いの」

 いそいそと二ノラはかぶっていたトンガリ帽子の中へと手を突っ込んでかき回した

「御主には『ダーク』を授けよう、こやつが全て教えてくれる。案ずるな、時が経てばまた会える」

 掌の中に暖かい抱きかかえられるくらいの小さな袋か落ちてきた

 その時、リツの真下から激しい風が吹き上げてくる

「え?おじいちゃん!?」

 二ノラがリツに真っ黒な袋を手渡した途端に、リツは風に煽られて身体を宙に任せてしまった

「ねぇおじいちゃん!これなんなのっ?」

 風にまみれて、声も届かない

 どんどん地上から遠ざかってしまう

「ではの、リツ 幸運を祈っとるぞ」

 ヒラヒラと手を振る二ノラに何か言おうと口を開いた途端

 目の前にまた暗闇が落ちて来た


 もうだめだ


 口からそんな言葉を出すのさえももどかしい

 リツは溜息と一緒に視界を黒く塗り替えて瞳を瞑った

 その時、掌の中、黒い袋の中から声が響いた

 真っ直ぐな声が

 

「我、守護者の欠片なり 主の運命を共に――――我こそは暗闇の中の結者となる」


 あたたかな空気がリツを包みこむ

 光りだした杖が元に戻った頃には、ア―グルの顔がすぐそばにあった

 にっこりと笑う彼の横には

 黒い袋がただそこにあるだけだった

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