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夢と暗闇の中で

 ――――リツ・・・・


 不意に呼ばれたあたしの名前はあたしの中で弧を描いて落ちる


 呼ばれてる


 その感覚があたしを支配するのに――――


 瞼が開かない


 目が開けられない


 怖さでもなく、弱さでもなく


 あたしの身体は凍ったまま動かない


「誰?」


 絞り出した声に暗闇の中、その声は答える


 ――――それはお前自身が一番わかるだろ?

 

「わからないよ」


 誰なの?これは―――この声は―――何?


 ――――いいかリツ、“チカラ”の使い方を間違えるな


「使い方を間違えるなってどういうこと?」


 ――――もうこの世界でお前は魔法導師なんだ


      お前のココロ次第で世界はどうにだってなる


      人の気持ちで世界はいくらだって変えられるんだ


      初めの言葉を忘れるな


「そんなこといきなり言われても意味わかんないよ!」


 叫ぶように呟くあたしの声は消え入るようにこだました


 ――――今はまだわからなくていい


      お前の決心が変らなければ大丈夫なはずなんだ


「あたしの・・・・決心?」


 ――――揺るぎのない、お前が言った言葉をいつも想ってくれ


      今の気持ちを忘れないでくれ


      その気持ちが救えるんだ


「だれ・・・・を?」


 答えを聞きたくなかったあたしの声には自信がなく、どこか抜け落ちてた


 あたしは一体誰を救えるって言うんだろう?


 さっきのあの黒髪の子にだってあたしは何もできなかったっていうのに?


 あの流れる血を止めることも、手当てをすることも


 何も出来なかったのに、一体誰を救えるんだろう?


 ――――勇者を救ってくれ


      お前にならそれが出来る


      もうあんなことを二度と


      もう二度と見たくない


      勇者を救ってくれ


「なにそれ・・・・やっぱりわかんないよあたしには・・・それはあたしじゃないと」


 ――――お前にしか出来ないんだ


      頼む、勇者を救ってくれ


「でもあたしにはそんなこと出来ないよ!」


 懇願するその声は落ち着いていて


 嫌なくらいに冷静なはずだったのに


 なんだか泣き叫んでいるようにも怖がっているようにも聴こえた


 ――――もうすぐ勇者に


      お前は再び遭うはずだ


      時は満ちる


      おまえ自身にの決心に生きてくれ


      そのさきに答えがまってるはずだ


「なにいってるか全然わかんな――――」


 あたしが叫んだ瞬間、瞼の裏側からでも分かるような強い光に


 あたしの身体は自由になった


 動ける!


 あたしが瞳を開いた時――――――


 

「お、やっと目が覚めたか?もう夕暮れだぜ?」 


「え?君さっきの・・・・」


 あたしの目の前には黒髪の子が


 手錠をかけられて座り込んでいた


 さっきのは夢?


 でもそれにしては鮮明すぎたあの声があたしの耳にはまだ強く残っている


「なんで此処に・・・・っていうか此処何処・・・・」


「分かったとしても出られないんだからしょうがないだろ?」


「何言ってんの?」


「は?だってお前それ―――――」


 黒髪の子はあたしの腕を見ながら表情を曇らせる


 腕?


 あたしは嫌な予感に押されつつも、自分の腕をゆっくりと見た


「嘘・・・・・・でしょ?」


 あたしの腕は頑丈な手錠に縛られていた


「まぁ、少なくても今日は此処で過ごすしかないな」


 黒髪の少年の冷静沈着な声があたしの心に虚しく響き渡った

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