少女から見たセカイ ―遠崎舞華―
私の生きる理由は7年前のあの日に決まった。
なにせ私はあの日死ぬはずだったのだ。
それを助けてもらった。
守ってもらった。
だったらこの命を彼の為に使いたいと思った。
今でもよく覚えている。
あの日の出来事を…。
―あの日は確か日曜日だったと思う。
特に予定もなく家で普段通り夕食を食べていた時。
突然の破砕音と共に、天井が落ちてきて私達家族を押しつぶした。
当然大きな衝撃が体全体を襲って私は気を失ってしまった。
目が覚めると体が思うように動かない。
助けを呼ぼうとするが喉に激痛が走る。
絞り出した音は声にならずひゅうひゅうと情けない音となった。
頭もぼーっとして何も考えられない。
どうやら私は家の屋根の下敷きになっているようだ。
瓦礫の隙間から街灯の光が見える。
そこによく見知った男の子が座り込んでいた。
男の子の家も潰れているようだ。
私は助けてもらおうとなんとか声を絞り出そうとするがやはりだめだった。
依然男の子は動かない。
もうだめか…。
そう思ったときだった。
とても巨大なコウモリの羽のような物が空から降りてきた。
その羽を操っているのは私とそんなに年が変わらないくらいの女の子。
その子は男の子に話しかけているようだ。
しかしなにを話しているのか聞こえない…。
それから、そろそろ限界のようだ。
ついに体力が尽きたらしい。
すごく…眠い……。
次に私が目覚めたとき、そこは病院のベッドの上だった。
なぜ自分が助かったのか?
それを知るのはそう難しくなかった。
一度施設に入れられた私は必死に彼を探した。
しかし全くと言っていいほど手がかりはなく、すぐに手詰まりになってしまった。
そして、あの日から約一年経ったある日、孤児院に研究者が訪ねてきた。
研究者は言った。
化物達に復讐したくはないか…と。
私は考えた。
あの子ならきっと戦っているはずだと。
それは復讐じゃなくて人を守るためだろうけど…。
私も戦えば君に会えるかな?
なんだか会える気がした。
それだけの理由で私は立候補した。
私のいた孤児院では唯一の存在だったようだ。
普段温厚な私を大人達は止めたけども、私は少しでも可能性があるなら賭けてみたかった。
―結果から言うと…会えた。
彼―長月慶刀君に。
感極まった私は咄嗟に抱きついてしまったが、
その後慶刀君からは驚き半分、呆れ半分のお説教を受けたのは、いい思い出。
―そして決めたこの人に助けられた命なのだから、この人の為に使っていこうと。
これが私の存在理由であり、セカイなのだ。
「慶刀君、今晩何食べたい?」
「うん?そうだな…舞華に任せるよ」
「え~実はそういうのが一番困るんだよ?」
訓練が終わって帰路に着きながら私達は夕飯の献立について話し合っていた。
私と慶刀君は同じマンションの隣の部屋に住んでいる。
だから基本的に食事は一緒にとることになっている。
お互いに一人暮らしで味気ないからだ。
「冷蔵庫の中なにかあったっけ?」
「確か…調味料とかあったぞ」
「つまりなにも買ってないんだね…?」
「そうとも言うな」
はあ…とため息をつきながらも行き先をスーパーマーケットに変更。
晩ご飯の献立を思案する。
いつもの日常。
柵の中の平和。
―これはこれで幸せだった。
化物との戦闘はあるが、こんな日々がいつまでも続いてくれればいいのにと思っていた。
そして、私達の活躍でこれからもっと平和になっていく…はずだった……
―街に警報が鳴り響く。