TSしてしまったので、とりあえず二度寝しようと思います。
TSですがTSする前のお話が中心です。 それでもよろしければどうぞお進みください。
高校受験、それは中学まで何一つ不自由なく進学したものにとって、初めての壁だ。
片道四十分、周りが友達と騒ぎながらくる中、一人無言と歩く。
張り出された掲示板の前に立つと、受験票と比べながら、自分の番号を探す。探している番号は302番。
297、298、299、300、301、303、304、305…。
見てしまった現実を見なかったことにして、もう一度確認する。
297、298、299、300、301、303、304、305、306、307、308…。
携帯をいじりながら来た道を戻る。
落ちたかもしれないとは思っていたが、自分の周辺が受かっているのがキツい。同じ中学が固められてるため、「あいつ、落ちたんだってよ~。」とか言われてしまう。確かよく突っかかってきていた奴が自分の五つ後ろの席だったのを思い出した。…二回目確認の時に番号を見つけていた。
つらい、つらすぎる…。違う、滑り止めは受かったんだ、まだつらくない…つらたんだ。
受験中、唯一楽しみにしていた小説のフレーズを心の支えにして、学校の最寄りの駅を目指す。
行きよりも遥かに重い足取りでとぼとぼ歩く。
道行く楽しそうな学生の声が耳に障る。
(頭を地面にこすりつけてやりたい)など出来もしないことを考えながら歩いていると、見慣れた制服の集団が橋の向こう側で騒いでいた。 そのうちの一人が自分に気づいたのか、他の仲間の肩を叩き指差してくる。あれか、一緒にくる友人が居ない自分へのあてつけか。
苛つきながら歩いて、彼らとすれ違う。
道幅が細いため、少人数に別れたらしい集団が橋の隅を歩く自分を邪魔そうに避けていく。
絡まれずにすみそうだと、集団の最後を通り抜けようとしたとき、一人の男が立ちふさがった。
奴だ、舌打ちを抑えながら避けようとすると、腕を掴まれた。
「久世、見に行ったんだろ? 俺ら近かったから番号わかるよな、307番あった?」
奴、佐々木はへらへらと笑いながら「先行っといてー」と一緒に来た集団に手を振る。
佐々木は学年の上位成績者でもっと上の高校を狙えた。しかし、自分の志望校で圏内の上から数えて三番目の公立校を受験した。それに嘆く先生も多い。
「もうすぐ学校だし、自分で見ればいいと思いますが?」
「えー、だって受かってるのわかってるのに見に行くのだるくね? 久世が教えてくれたらいいし。」
キツくなった自分の態度を気にせず、笑いながら佐々木は掴んだ自分の腕を上下に動かしながら楽しそうに言う。
「だから今から一緒にカラオケ行かない?」などと宣う佐々木の言葉は耳に入らず、苛ついた衝動のまま捕まれてる腕を振りほどく。
ムカつく、こいつが居なかったら自分が受かってたかもしれないと無責任に思うと更に腹が立った。
自分がどんな思いで掲示板を見ていたか、知らないくせに…。
「久世…? 腕痛かった?」
そう心配する佐々木を睨みつけて、さっさと目の前から去ってほしくて口を開く。
「…受かってると思ってても、自分で確認するのが受験の醍醐味だと思いますが。」
「え、あー…じゃあ、すぐ見てくるから、駅で待っててくれない? で一緒にカラオケ行こうぜ、あ、金余裕ないなら奢るしさ」
「行かないし帰ります。」
それじゃ。と立ち去ろうと佐々木の横を通った自分の肩を佐々木が慌てて掴む。
「あー、じゃあ次の、」
お前と遊びに行くつもりはない。とそう捕まれた肩を払うため振り返った自分の目に映ったのは急カーブしてこちらに突っ込んでくるトラックの姿。
何か考えたわけではなかった。ただ自分はとっさに佐々木を突き飛ばした。腰が入っていたのか、火事場の馬鹿力か、かなり吹っ飛んだ佐々木がトラックに当たらないか確認する暇もなく、自分の体はトラックに衝突し、宙を舞った。
…そういえば橋の上だったな…。
川に背中から叩きつけられる。その痛みで気絶する直前、最後に見たものは青ざめながら橋の上から飛び降りようとして他の通行人に押さえつけられている佐々木と、橋の欄干を越えてしまったトラックが自分を押し潰そうと近づいてくる姿だった。
…あ、自分死ぬな
轟音が辺りに響いた。
目が覚めた。
ぼーっと白い天井を見つめたあと、ふらふらと周囲を見渡した。
クリーム色のカーテン、反対側には窓と白い壁、どこに繋がっているかわからないチューブ。
「…病院…?」
そう口に出した声は思ったよりもか細く、視線を下にすると緑色の透明なマスクが口を覆っていた。
チューブの先を確認すると自分の左腕と、布団の中に繋がっていた。
どうやら自分は一命を取り留めたらしい。
もぞもぞと動かした股間に違和感を感じるが…。
(とりあえず、もう一回寝よう)
そう考えて自分はもう一度目を閉じた。
起きたあと、両親に泣かれ、語られる事実に絶叫して怒られるまであと五時間。
朝日を取り込める部屋が少し肌寒さを感じる九月、自分はようやく目を覚ましたのである。
「葵、準備は出来たー?」
「はーい」
母が自分を呼ぶ。目覚めてから半年が経っていた。
あの事故から半年間眠っていた自分には様々な変化があった。体は容易に動かせず、声は変化し、体のパーツが増減していた。
トランスセクシャル…性別転換が自分の体に発生していた。
疾患や薬による女性化、男性化は存在するが、精密検査を行い健康と判断された身体が完全に変化してしまうものは前例がないため、経過観察が必要となり自分は大学病院が近くにある首都の大学付属高校に入ることになった。両親は、性別が変わった自分に新しい人生を歩ませるため、仕事を止めて再就職し、今まで住んでいた場所から首都に引っ越した。
今日はその付属高校の入学式だ。
リハビリを繰り返し、やっと慣れ始めた体を動かして真新しい制服を着る。
この半年間は大変だったが、これからは事情を知らない人たちと共に過ごすため苦労することも多くなるだろう。
けど生き残れたこと、性別転換などわけがわからないことに戸惑った自分を支えてくれた家族のため、新しい人生を歩んでいこう。きっと恋愛は難しいけど…、頑張ろう。
鏡で制服におかしいところがないか確認し、鞄を手に取った。
「行ってきます」 低い声が、ドアの閉じる音に紛れて消えた。
続きは考えてないわけではないですが、男女の違いがわからない…。
ネタはあるのですが。
佐々木くんの苦悩とか、乙男?久世にきゅんときて頭を抱える男の子やら、女の子に告白されて悩む久世とか…。
あ、佐々木くんはノーマルですよ
では乱筆乱文にて失礼いたします