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お人形遊び  作者: ティナ
7/8

7,賭け

神父は両親に言います。

「危険かもしれないが、ベルガモットに中に戻ってもらおうと考えてる。もしかすればクレオメが現れるかもしれない。ご両親の考えは?」


両親は「危険」という言葉に戸惑いました。

しかし、すぐにでもクレオメに戻ってきてほしかった両親は頷きました。


医者も頷き、神父は落ち着いてクレオメに話し掛けました。

「ベルガモット、一つ良い案が浮かんだ。ただ、ベルガモットとスターチスにも協力してもらいたい」


「クレオメが戻るのなら、何でも協力いたします」


「ベルガモットにも、中に戻ってもらいたいんだ。もちろん、スターチスも中にいてほしい」


「体だけは危険ですわ」


「我々がいるから大丈夫だ。どうだろう?協力してもらえないかな」


クレオメは悩んでいます。

今まで、そんな事をしたことがないので怖い様子です。

すると、クレオメが一人で会話を始めました。


「私も中にいこうと思うの。危険かしら?」


「スターチス、もっと真面目に考えて」


「ええ。でも、これ以外に方法はないのよ」


「そうね。周りにいてくれるから大丈夫よね」


「スターチスも協力してね」


会話が終わったクレオメは神父に言いました。

「覚悟しました。スターチスも納得しています」


神父は頷きました。


医者が両親に言いました。

「体を支えてあげて下さい」


両親は急いで、椅子に座っているクレオメを倒れないように支えました。


神父はクレオメに言いました。

「では、始めてくれるかな」


クレオメは「はい」と返事をすると下を向きました。


静寂が、緊張感を更に増させます。

両親は「どうか、上手くいきますように!」と願います。


医者は鋭い瞳でクレオメを見ています。

神父も同じように緊張しながらクレオメを見つめます。


クレオメの力が抜け、体が倒れそうになります。

両親は「ベルガモットが中に戻った」と分かり、汗が出てきました。

体の力が抜け、腕が力無くぶら下がっているクレオメは異様な雰囲気です。


静かな時間が流れます。

両親はクレオメを支えながら祈るしかありません。


その時、体に力が入ったのが分かりました。

両親に緊張が走ります。


ベルガモットかスターチスなのか、それともクレオメなのか…。


顔をあげた少女の表情を見て分かりました。


「クレオメ!!」


両親は喜び、クレオメを抱きしめました。


神父のホッとしました。

医者も安心しました。


母親は言います。

「ごめんなさい!クレオメの事を考えてなかったわ。それに気づかされたの!貴女はかわいい私の娘よ!」


父親も言います。

「すまなかったな!クレオメが悩んでいる事にも気づかずに。俺の大切な娘だよ!」


両親はクレオメを抱きしめ泣いて喜んでいます。


しかし、クレオメだけは無表情に近い顔でされるがままなのです。


医者は不可解に思いました。


クレオメがまるで、人形のようだからです。

ベルガモットやスターチスの方が人間味がありました。


しかし、両親は気にせず喜んでいます。


医者がクレオメに話し掛けました。

「君がクレオメかい?」


クレオメは笑っているようないないような表情で答えました。

「はい。私がクレオメです」


母親も言いました。

「先生!クレオメに間違いないです。この顔を見たら分かります!」


父親も嬉しそうに言いました。

「そうです!クレオメ以外有り得ません。この穏やかな顔はクレオメ以外有り得ません!」



そして神父が言いました。

「あぁ、いつものクレオメだ」

医者は驚きました。

「で、ですが、何だか違和感がありませんか?」


医者は初めてクレオメを見たので戸惑いが隠せないのです。


一つも変わらない表情、感情の起伏のない口調、全てが人間から遠い存在に見えるからです。


神父は医者に言いました。

「いつものクレオメだ。まぁ、今まではベルガモットと呼んでいたがな。彼女を見たら分かるだろ?今までのは悪魔の仕業だったと」


医者には、そうは思えません。

今のクレオメの方が、悪魔に憑かれているように見えます。


医者はクレオメに聞きました。

「ベルガモットとスターチスはいる?」


「はい、います」


「何て言ってる?」


「良かったと言っています」


医者は勇気を出して聞きました。

「何故、いなくなったのかな?」



「意味はないです」



医者は「異常だ」と、思い同時に助けてやりたくなりました。


クレオメは両親に言います。

「どうして、クレオメなんて呼ぶの?いつも通りが良いです」


両親は、更に嬉しそうに言います。

「幸せ!ベルガモット愛してるわ!やっぱり、貴女は私の大切な娘よ!私の理想の女性に育ってるわ」


「さすがだ!スターチス。それでこそ、俺の自慢の娘だ!成長するたびに、俺の理想の人に育っているぞ」


クレオメは神父にも言いました。

「神父様まで、クレオメだなんて止めてください。いつも通りが良いです」


神父は笑顔で頷きました。

「あぁ、わかったよ。ベルガモット、素晴らしい成長をしたな」



この空気を壊すかのように、医者が言いました。


「まだ、終わっていません」


周りは驚きましたが、医者が続けます。

「初めて見させてもらった私から言わせると、明らかに異常です。クレオメが人形のように見えます」


この医者の言葉に両親は怒りました。

「異常だなんて!何て失礼な医者なの!?ベルガモットは最高の娘よ!」


「信頼していたのに!スターチスは立派に育っているだろ!!」


両親は怒鳴っているのに、クレオメは落ち着き何も聞こえないような雰囲気です。

しかし、医者も言い返しました。

「いや、駄目です。クレオメが可哀相だ!両親に別々の名前で呼ばれ、明らかに苦痛を訴えてるのに無視をしている!」


母親が言い返します。

「可哀相!?どこが可哀相なのよ!ベルガモットは、幸せだと言ってるわ!ねぇ、ベルガモット。幸せよね?」


クレオメは頷きます。


「ほら、みなさい!ベルガモットが幸せだと言ってるのに可哀相だなんて。謝ってちょうだい!」


医者は謝りません。

「違います!クレオメは両親に合わしているだけです!本当の感情は別にあるはずだ!クレオメ、僕が味方だから言ってごらん」


クレオメは言いました。

「いつも通りなら幸せです」


父親が言いました。

「スターチスが幸せだと言っている。この穏やかな表情をみてみろ!嘘なんかついてないだろ!!」


医者は首を振り言い返します。

「その表情が問題なんだ!感情が全くない!わからないのか!?」


クレオメの表情を両親は見ました。

無表情なのに笑っているような、いないような表情。

両親は言いました。

「分からない!」


医者は両親は無理だと思いクレオメに話し掛けました。

「クレオメ、頼むから本心を言ってくれないか?」


「本心を言っています」


「だって、寝れないんだろ?」


「少し安心したので、眠れます。ベルガモットも寝ています」



医者は言葉を失ってしまいました。

両親は勝ち誇った様子です。


医者はクレオメに聞きました。

「今の悩みを言ってくれないか?」


クレオメはすぐに言いました。

「悩みは解決しました。先生、ありがとうございます」


医者には理解ができませんでした。

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