会話
「がらっ」
教室のドアを開ける、俺の顔はこわばっている。みんな首をかしげながらこちらを見る。
しかし、今はそんなことどうでもいい。彼女は、席に座っていた。思い切って
「お・・・・・おはよう」とあいさつした。
決まった、我ながらと思いながら、彼女の返事を待つ。
「おっはよー」
明るいあいさつが返ってきた。やっぱりかわいい。
今日はイケる、そんな気がした。
「キーンコーンカーンコーン」
授業が終わった、給食の時間だ。この時間のために俺は、ずっと緊張していたし、作戦も完ぺきに練った。いくしかない。
配膳が終わり、会食の時間だ、ドキドキする。なかなか言い出せない。
「あ・・あの・・・。」
隣のやつにも聞こえない。
意を決して隣のやつに。
「お…お・・俺さぁぁ・・・。」
と話しかけてみた。
「ん、何?珍しいなお前から話してくるなんて」
当然だ。彼女と話すためなら、なんでもするつもりだ。
「昨日、と・とトイレに行こうとしたら、か・か・か階段から落ちた。」
「はっはっはっはっは」
「話はどうでもいいけど、噛みすぎだろ、力抜けよ同級生だろ。」
「そ、そ、そうだね。」
作戦失敗だ。会話が終わってしまった。なんで俺はいつもこうなんだ。
しかし、思いがけないことが起こった。
彼女が笑っているのだ。もちろん俺のことで。
目が合う、彼女から微笑みかけてきた。俺もにこっと笑顔で返す。
そうこうしているうちに給食が終わった。
今日も俺は、すこぶる機嫌が良かった。彼女のあの笑顔を思い出しながら、時折にやにやする。だが、その後は、先日同様たいした収穫はなかった。
しかし俺は、彼女を笑わせたことに大満足で、軽い足取りで家に帰った。
その晩、俺は、考えた。今度は、しっかりとした会話をしよう。
作戦なんかいらない。強い決意とともに、俺は眠りについた。