8 彼らの運命が狂う
疲れたので井戸の中でヘッドホンを耳にあてyoutubeを見ていた。
そろそろ、休憩を終わりにしよう。
いそいそと井戸をよじ登ると
え・・・何・・・これ・・・。
城は倒壊し街は荒れ果てていた。
周囲を見回せば血と死体が飛び散る大惨事だった。
ケガして生き残った男がいた
いったい何があったんですか!
魔王メガロス・エドモが出たんだ
魔王メガロス・エドモだって!
いや知らないけど、話を聞いてみると伝説の魔王らしく。
その魔王が酒場の冒険者たちを襲ったあとこの国の城に襲撃をかけ、何千もの兵士たちと死闘を繰り広げたそうだ。
城の近くまで来ながら惨状を目の当たりにする。
立派だった城壁が砕けたのではない。溶けてえぐれている。
王室のあったであろう頂上付近などまるで露店風呂状態でスカスカになっていて住んでいる王族など皆、骨すら残さず蒸発しているに違いない。
今後の世継ぎ問題で内戦にでもなるんじゃないだろうか。
昨夜は無数の火矢が飛び交い、大砲がうなり、城壁にのしかかる超大怪虫を無数の槍で突き案の定、城は壊滅的打撃を受けたそうだ。
ひいきめに見て大敗北だ。
大勢が死んだ。
生存者がいただけ儲けものだろう。
僕たちは現場に姿を現す。
カブリートが治療を受けている生存者たちを指さして数えていく
男が1、2、3
女が1、2、3、4
よくぞ生き残ったと言える。
それも全員、魔王付きだ。
ゼロス、仲間にするチャンスじゃないのか?
仲間に?
・
・
・
・
・
・
僕は壁に背を預け、寄りかかりながらみんなを見ていた。
そして戦いを生き抜いた冒険者の少年はつぶやいた
みんな・・・。と。
かろうじで生き残った人々で仲間たちの亡骸を供養していく。
不気味な雰囲気を持つフードをかぶった女が手を前にかざすと手を振るい、傘に似たマークの模様を空に描く。
縦、横、右斜め、左斜めと手を動かしている、宗教的な行為だ。
パリョ・テオス、この者たちに静寂な安らぎを
女はそう唱えてくれる
そうそう、きっと少年は幸せなほうだろう。
仲間たちが生きているのだから
クソ・・・クソ・・・クソ・・・クソ・・・クソ・・・あいつら・・・あいつら、俺を置いて逝きやがって・・・掛け賃払ってから逝きやがれ!ちくしょおー!勝ち逃げなんて・・・してんじゃねぇよぉ・・・。
邪剣の男が涙を流しながら悔しそうに何度も壁を殴った
女騎士は友の死を前に嗚咽も漏らして涙する。
格闘家はライバルの武士の死を前にふ抜けた状態になってうなだれている
それぞれの生存者は悔しんだり憔悴しきった表情をしていた。
少年が口を開く。
あのとき・・・男の僧侶がずっと笑っていました。あの人、本当に人間ですか?
は!っとした顔をしてみんな少年を見る。
確かに魔王たちもそうだがあの僧侶何かあるのか?
あんたも何か見てなかったか?
そう言って僕に話を振る邪剣の男
いえ、すいません。僕は何も・・・。
そうか。
格闘家の男が言う
それを言うならそこの女と姉妹もどうなんだ?メガロス・エドモって言ったらおとぎ話の魔王だぞ。それと渡り合った冒険者って何なんだよ。
その場の空気が凍り付く。
誰もが異様なものを奇異の視線で見ていた。
沈黙をやぶったのは少年だ。
彼女たちは・・・。
魔王です。
話を遮るようにそう言って一歩前に出る不気味な雰囲気を持つフードをかぶった女
女が仮面を取るととても美しい美女が姿を現す。
この呪いの仮面には魔王ディリティリオが封じてあります。
それが自分を守るために一時的に動きました。
魔王だって?
その真実を知ると一斉に全員が立ち上がり武器を構える
少年がフードの女の危機に叫ぶ
皆さん!何を!
邪剣の男が言った
当然だろうが!魔王だぞ!信用できるか!
そういう本人は魔王エファアルティスが封じられている邪剣を使っていることに気が付いていない。
私の一族は代々魔王ディリティリオを封じてきました。
この仮面も私が引き継ぎ次代の子たちに継がせるつもりです。
私が死ねば魔王の仮面はどこへなりと流れ、いずれ封印から解放される。
仮面が壊れれば魔王は死にますが、そのとき仮面から漏れ出る強力な呪いの余波で大勢が死ぬでしょう。
邪剣の男が聞く
何?呪いだって?
ええ、呪いです。長い年月の中で熟成された強力なものです。王国まるごとが消えてなくなる量の死の呪い。
ですからこうして肌身離さず封印し定期的に清めることがもっとも被害が少なく済むのです。
それでもあなたたちは私から仮面を奪い破壊しますか?
全員黙り下を向く。
そこまで言われて破壊しようなどと思うものはこの場にはいなかった。
格闘家が聞いた。
あんたたちはどうなんだ?
私たちは・・・
そう言って互いの顔を見合う黒白の二人
互いの服をたくしあげると少年が赤面して顔をそむける
右腰と左腰の隅にそれぞれひとつずつ奇妙な模様が彫られている。
私達姉妹はその身に半分ずつ魔王トゥリパを封印しています。
格闘家が叫ぶ
魔王トゥリパだと!おとぎ話の魔王じゃないか!
邪剣の男が叫ぶ
おいおいおいいいい!冗談にしてもたちがわるいぜ!
白い服の少女が言う
私たちあのときとっさに抱き合ったからほんの少しだけ封印がゆるんだのかも
女騎士が言う
だとすると同じ理屈で封印ごと殺されないよう魔王トゥリパ自身が彼女たちを守ったと?
そういうことになるね!
突然の声が響き渡ったことで、全員が周囲を警戒する。
僕は彼らに真実を知らせることにした。
話を聞いてほしい。
あんたは?
ゼロスだ。
突然だが教えよう
そこの姉妹魔王トゥリパ、あと魔王マーゾに魔王バゴア、そして進化した魔王メガロス・エドモ
あの場にこれだけの魔王がそろっていたことを知っていたか?
女騎士が戸惑いながら言葉をつぶやく
な、何を・・・。
何かの作為的なものを感じないか?
女騎士がうなる
どういうことだ!いや、それよりもお前は誰だ?
僕は女騎士を無視して話を続ける。
あの笑っていた僧侶、黒幕の手先でしょう。
それだけじゃない。その邪剣には魔王エファアルティスが封じられている。わかるのさ。
カブリート
ああ。
魔王カブリートが姿を現すと
格闘家を先頭に全員が身構える
この力、まさか・・・魔王だと!
それより俺の邪剣に魔王がいるって?
僕はわかると言った。本当のことだ。
ウソだろ・・・おい・・・。
男はまじまじと自分の邪剣を見る
格闘家がこめかみに汗をかきながら言った。
あれほどの存在が言う言葉だ。事実だろう。
ああ、そこの格闘家は魔王モノマヒアの子孫だ。
何!
格闘家が驚愕して叫ぶ
適当なことを言うな!
本当だ。長い混血の中に魔王の血が混じった。次代の魔王となるか勇者となるかは君次第だが。
俺が・・・魔王の子孫?
邪剣の男が叫ぶ
か、関係ねえ!自分は自分だ!違うかよ!
どこかの小説にでも書かれていそうな月並みな慰めの言葉だ。
格闘家が落ち込み苦しそうにつぶやく
そ、そうかもしれんが。
カブリートが言った
この場にはそこの子供しかふつうの人間がいない。
女騎士はその発言にうろたえて言った。
何・・・?
戸惑う女騎士にカブリートが聞かせる。
ところで白の使徒はもういいのか?
何?白の・・・なんだ?
白の使徒だ。ああ、いい。いい。どうせ前世の記憶だ。
ぜ、ぜん・・・せ?
それよりも1年前に戦死したときから貴様は転生してる。いま当時の領地まで行けば前世の父と母との再会が可能だろう。
は、はあ!?
女騎士は驚きで顔を歪ませる
僕はカブリートの突然の昔話に驚いた。
どうやらカブリートは女騎士と知り合いのようだ。
それから貴様はあのとき危険な魔石を使って魔王デアになっていた。
ほら、見ろ。いまも魂に魔王デアが定着している。
どうした?狐に包まれた顔をして?我が嘘を言っているように見えるか?あぁ、感謝はいらぬぞ。我が魔王デアを倒すことで暴走を止めたのは偶然なのだから。
それは女騎士を同様させるには十分だった。
女騎士は顔を真っ青にして後ず去る
しっかりしてください!
少年が叫ぶと
女騎士が気の抜けた返事をする。
あ、ああ・・・大丈夫だ・・・。
カブリート、あまり脅しつけるようなことは
ふう、人間とは弱きものよ。
僕はカブリートから主導権を取り戻すと会話を進める。
さて、武器は構えたままでいい。順に行こうか?
君の名は?
流浪の団、Lv30邪剣のサンツだ。クソ野郎!頬に大きな切り傷のある凶悪そうな男だ。
おやおや嫌われたものだね。
合鉄騎士団、女騎士レシーヌ・・・。Lv19・・・。
金髪で顔の横にある左右の髪をクルクル縦にロールしたような巻き方をした髪型と、赤い口紅をした女戦士だ。
生気がない。死んだか。
フリーの格闘家、Lv30ダンザだ。筋肉質なゴリラ男だ。
強そうなゴリラだ。
ほのぼのファミリー、Lv2ノエルです。5歳児だ。短パンに獣の皮を頭にかぶっている
期待してる。
ほのぼのファミリー、Lv4プリズマです。21歳ほどの不気味な雰囲気を持つフードをかぶった女だ。しかも美人だ。
ほのぼのファミリー、Lv4ミリアよ。13歳ほどの白服の少女
ほのぼのファミリー、Lv4ウィンです。12歳ほどの黒服の少女
魔王が2人もいるなんて全然ほのぼのしていない。
僕はふところから複数のリンゴを取り出し机に置く。
どうせ持て余していたいらないものだ。
これは?
ここにあるのは食べれば不老不死になれるリンゴ。
カブリートからもらったものだ。
君たちが仲間の死をいたみ、真に覚悟があるならそのリンゴを食べてくれ。
さすれば不死となり世界を滅ぼそうと画策している黒幕と戦うための力を得ることができるはずだ。
永遠の時を生き、途方もない時間の波の中で研鑽を積む時間を得る力を。
それで?どうする?
邪剣のサンツが叫ぶ
なんだよそれ!ふざけるな!なんで俺たちが!
力は力。使い方は任せよう。
本音を言えば僕は、君たちをスカウトするのに乗り気じゃないんだ。そこの魔王に言われてしかたなくだ。
選ぶのは君たちだ。
君たちに戦う力と正義の意思が宿ることを願ってる?さあ、どうする。
誰も動かなかった。
誰もしたくなかった。
そんな中でなんの力もない少年が最初に動いた。
僕やります!
そう言って少年ノエルはリンゴをつかむ
私も!
次に黒服の少女ウィンがリンゴをつかむ
ちょっと!ウィン!
ミリア、私やってみる!
白服の少女ミリアもリンゴをつかむ
ウィンが行くなら私が守ってあげないと!
ミリア・・・。ありがとう。
ぷっ、ははっ、
女騎士が突然、苦笑する。
ふふ、あまりに勇敢な子供たちばかりでな。失礼した。
・・・情けない限りだ。私はどうにも嘘に思えない。考えすぎて自分のことで精いっぱいだなんて、世界の危機に立ち上がれず何が戦士か!私は騎士だ!誇りがある!友を奪われた借りもな!及ばずながら協力させてほしい!
そう言ってリンゴを手につかむ
はい!ぜひ!
少年ノエルが勢いよくうなづく
女子供にばかり任せてられるか。やってやる!
筋肉ゴリラの男、格闘家のダンザがリンゴをつかむ
みんなが笑顔になる。
ダンザは振り返ると邪剣のサンツを見た。
お前はどうなんだ?邪剣。
・・・。
沈黙の時間がすぎた。
だああああああああ!わーったよ!この野郎の口車に乗るのはしゃくだが、元々、俺ひとりでもやるつもりだったんだ。あいつらの仇は俺が取ってやらねーとな!
そう言ってリンゴをつかむ
じゃあリーダーは少年ノエル、君だ。文句ないよね?
え!僕ですか?
格闘家のダンザが言った
ああ、リーダーはお前だ。いいよな?
女騎士レシーヌが言った
ああ、異論はない。
邪剣のサンツが言った
俺もそれでかまわない。
黒服の少女ウィンも言った。
私も・・・。
白服の少女ミリアも言った。
いいわよ!あんたがやりなさい!
最後に女騎士レシーヌが言った。
頼んだぞ。リーダー!
わかりました。それじゃあほのぼの流浪の合鉄騎士団の結成ですね。
こうして彼ら彼女らは不老不死を得たのだ。
対魔王の戦士たちとして




