51 ひとまずいい酒といい食品を
こうして王国は救われた。
王は死に民衆の英雄たる王国三大騎士たちも命を落とし、魔法陣ゾーイ・マザに命を吸われ皮肉なことに
心身深い信者たちは全員死に、不信心者の少数派だけが生き残った。
「「わああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」」
大歓声が巻き起こる
大型の魔物を模した人形の乗り物その背に乗ってルースとエルマーがパレードの中心を練り歩く
英雄ルース!英雄エルマー!
この国を救ったヒーローたちだ
エルマーは言った
ルース!すごい!みんな私たちを祝ってるわよ!
道行く建物の窓にはびっちりと人が詰まっていた。
一つの窓に8人が押したり引いたりしている
窓辺から見るとよく見えるからか二階に人が集まっているのかもしれない
おお!すげえ!これ全部俺たちのために集まってるのか!
男がタルの中から出たり入ったりしている
けど、マスター、どうしたのかしら?
そういうエルマーが周囲を見回してもマスターゼロスの姿はなかった。
おい!エルマー!城が見えたぞ!
気を取り直して城へと進んでいく。
パレードが終わり、乗り物から降りると
王都城前まで来ると正門にレッドカーペットが引かれ神官たちが肩を並べて立っていた
皆、ルース達アスピダの英雄たちを待っていたのだ
後ろのほうに現れた関係者らしき男から丁寧に歩みを進められルース達はレッドカーペットの上を歩き左右の人々に小さく手を振りながら階段を登っていく。
これより!英雄ルース様と!英雄エルマー様!への祭儀を始める!
進行の男が言った
エルマー様どうか前へ
はい。
エルマーが年老いた神官の前まで来ると
神官は言った
英雄エルマー様には侯爵の位とエッフェナー領の広大な領地を!
嬉しそうに笑うエルマー
拍手喝采が巻き起こる
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進行の男が言った
次に、ルース様どうか前へ
ああ!ルースは嬉しそうに神官の前まで来た。
前職のジール神官が失踪したことで急遽出世した中堅神官がルースの前に立つと片膝をつき、国王の証である宝剣エクスカリパーを渡す。国王が消えた場所に残されていた宝剣だ
新たな国王、英雄王ルース様に!拍手を!
うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!
ルースは振り返ると民衆の方に向けてが剣をかかげ雄たけびあげた。
拍手喝采が巻き起こる
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王都のそばの森にピュエロスの墓石を用意した。
職人技で作らせた墓だ。
よく研がれた岩にピュエロスの名前が刻まれている。
そろそろルース達が英雄としての功績をたたえられ国王即位の儀を行っている頃だろう。
ピュエロスの遺体は見つからなかった。
俺は彼女の墓前に華をそえる。
遺体はない。それほどの惨状。それでもせめてとむらってやりたかった。
墓を後にすると。風が吹いた。
妙な気配がして振り返るとピュエロスが俺を見ていた。
それはまばたきをすると次の瞬間に消えてしまったが見間違いだったのだろうか。
見守っている。そう言いたいのか・・・。
・・・また来るさ。
俺は何もいないはずの墓前にそう告げてデュシス王国へと戻った
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戦いから数日、すでに王都は立て直しを始めている。
破壊された城もそこまで崩壊していなかったためか外観の修繕は済んだ。
王都の会議室を開くと大勢が集まっている。
10万人の命を奪った魔法陣ゾーイ・マザの大災害でデュシスの民は大勢死んだ。
生き残った人々の推薦もあり国王ルースを中心にアスピダの団と新たな副団長から晴れて出世、騎士長プッチョを中心に正式な王国の騎士団としてアスピダ騎士団が組織された。
いまは幹部を集めた臨時政府による会議が開くほどだ。
さきほどからルース達が今後の行く末を話し合っているのだが。
どうやらエルマーは不在のようだ。
任された広大なエッフェナー領の統治に駆り出され忙しいのかもしれない。
そうそう、そろそろガーネットを迎えに行ってやらなければ。
明日にでも王都を出て向かうとしよう。
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俺はガーネットが引きこもった病院に到着する。
バルバルの街を出る前に前払いでガーネットの滞在費いっぱいまで療養ということにして住まわせておいた
引きこもった部屋の前に来るとコンコンとノックする
ガーネット、俺だ。久しぶりだな。ようやく王国での騒ぎがおさまって迎えに来れた。
唐突だが一緒にデュシスに来ないか?
ルースとエルマーはデュシスを救った英雄として新国王と貴族になったんだ。
そこでならどんな待遇でも思うがままのはずだ。
外が嫌だと思うなら家を用意させよう。
ずっと引きこもっていられるぞ。
俺もお前を守ってやれる
お前にとっても悪い話じゃないはずだ。どうだ?
・・・。
無言か、わかった。考えておいてくれ、また来るよ・・・。
そうしてそれから俺は引きこもっていたガーネットを何とか説得して数か月かけてデュシスまで連れて来た。
ガーネット。お昼もうすぐだから、あそこに丘が見えるだろ。そこで休憩にしよう。お腹空いたろ?今日はタレと肉があるからな。うまいぞ~。魔物の肉は丁寧に肉をさばくのがコツなんだ。
そう語りかけるも荷馬車の方からは俺に背を向けて寝込んでいるガーネットだけが見えた。
マスター・・・
なんだ?
吐き気がします・・・
そうか!ちょっと待ってろ。
暗黒の鎧・スコティノース・パノプリアの胸に手を当て精神を集中させる。
鎧が黒いオーラで満たされる。
鬼畜魔法ドラゴ・ネストレ!
最上位回復魔法をかけ酔いを軽減させてやる
夜
無事、デュシスに到着するとあたりはすっかり暗くなっていた。
何やら騒がしい。
ここからでも花火が打ちあがるのが見えた。
関所を通過し、国内へと入る。
国家再建までまだまだ時間がかかるからか、ルースが労働者たちへのねぎらいに祭りでも始めたのだろうか。
ガーネット、ルースに会うか?
そう聞くもガーネットはただ首を左右に振るだけでこちらを見てはくれない。
もともとここに無理やり連れてきてしまったのは俺だ。
嫌ならルースに会う必要もない。
ただお前が心配だったからここに連れて来ただけだしな。
そうだ。ルースに会う必要はないが。この国で一番おいしいものを食べよう。
備蓄されている料理の材料を捕りに王城に向かう
王城目掛けて進んでいくと2人の衛兵が立っていた。
誰だ!
衛兵の一人が槍を構えるとそれを見たもうひとりが怒った
待て!ゼロス様だ!
ええ!ゼロス!?ルース国王様の師と言われるあの?
し、失礼しました!国王様たちがお待ちです。どうぞ中へ!
王城内へとコックたちのいる食堂へと入る。
アスピダの戦士たちがコックをしていた。
おお、ゼロス様!
悪いがすこし食料を分けてもらえるか?
もちろんです。それよりもよくお戻りになられましたね。
今日は妃様を決める日ですからそれはもう我々も大忙しで!
妃様を決める?ルースのか?
ええ!
俺はひとまずいい酒といい食品を用意してもらい。
その間にルース達のいると言われた会場へと向かった。
扉を開くと貴族となったアスピダの関係者と一層豪華な衣服を着こんだルースが会場に運び込んだと思われる玉座の上で女と話をしていた。
ルースのいる玉座目掛けて化粧やドレスや宝石類で着飾った女たちが長蛇の列を作っている。
料理こそささやかなものが並べられているが。
何も財政難のこんな時期にやらなくてもと思った。
当のルースだが妃候補の女とそれは楽しそうに話をしている。
プッチョ!
俺はプッチョのもとへと向かうと
おお!ゼロス殿!お戻りになれましたか!
ルースは新しく妻をめとろうとしている。俺は長年支えて来た父代わりとしてうれしく思う限りで
そう言って腕で目を隠し感極まって泣き出してしまう
エルマーは?
さあ?エルマーならここ最近見ておりませんな。




