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天使を倒してから俺たちは急いで旅支度をしてより医療施設の整っている大きな街、西の果てバルバルに到着した。

ガーネットを一刻も早く医者に見せなければならなかった。

なんだあれは・・・。

ピュエロスがとらえられているといわれたバルバル城はすでに砕け散って滅びていた

ルースが言った

マスター!先に行きます!

ピュエロスを助けに来た事情を知っているからかルース達は俺ひとりを残し病院に向かった。

唖然としながらひとり城跡地に向かう

老兵が一人座っていた。

ご老人、ここにいた捕虜は

ん?お前さん知り合いでもいたのか?

そうだ。

数日前、謎の化け物たちの襲撃を受けてね。

兵士たちは俺を残して全滅さ

捕虜、と言ってもここに来たのはティーモスに誘拐された無実のものばかり、切り捨てるほうが都合がよかったのかもしれんな。

そんな・・・それならいままでの旅はいったい・・・。

徒労感に襲われる。

ピュエロスが死んだ・・・嘘だ・・・。

俺は呆然としたままその場に座り込んだ。

数時間後、老兵がいなくなるとひとりトボトボと病院に向かう。

地面を見ながら歩き続け顔をあげる。するといつの間にか病院のそばまで来ていた。

病室に入ると

マスター!

エルマーが声をかけてくる

ベッドの上、ガーネットは顔を包帯でぐるぐる巻きにして寝ていた。

それから数日後

一応の治療が済み包帯を取るも、傷が癒えたと言うにはあまりに酷いありさまだった。

その顔はコウモリの毒の傷だけでなく無事だった方の顔も焼けただれていた

俺は見ていられなくなって目を背けようとしてそれはいけない気がして背けることをやめた。

エルマーも似たような心境だったのだろう。席を外している。

ダンテ達も美しかったガーネットの惨状を目にして悔しそうな顔をしていた

ルースが呼びかける

ガーネット・・・。

ルース。

ガーネットは震えながら自分の顔をそっと触ると

ああ、ああ・・・ああああああ!

悲鳴にも似た声を漏らす

ルースはガーネットを落ち着かせるように言った

ガーネット、大丈夫。

私の顔・・・どうなったの・・・。

大丈夫だから

ルースは悔しさと悲しさに打ち震え必死にガーネットをなだめすかす

ルース・・・私を・・・抱きしめて・・・。

ガーネット!愛してる!約束する!必ず幸せにしてやる!

ルースはガーネットを力強く抱きしめ決意するのだった。

しかし、信じられないことにそれからすぐルースは現れなくなった

ガーネットを愛すると誓った言葉はルースの精一杯の強がりだったのだ。

それどころかエルマーもルースほどではないにしろ来なくなった。

ガーネットだけではない。

俺自身信じられない気持ちになる。

ただでさえピュエロスが死んで精神的に追い詰められているときに、ほとんど同じ時期にルースの過去を見せられルースが命をかけて誰かのために戦う姿を見て同情した。

その同情した気持ちの分だけ激しく失望してしまっていた。

ルースが来なくなって俺は代わりにガーネットのそばにいることにした。

ピュエロスのことで悲しんでいるわけにはいかない。

悲しい気持ちを押し殺して、目の前の弟子を支えなければならなかった。

ダンテは言った

ゼロス殿、何か手伝えることがあれば言ってくれ。俺たちは宿にいる。

ああ、すまないな。

ダンテ達が果物を持ってきてくれた。そして見舞いから帰っていく。

夜、病院で寝ていると

きゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!

悲鳴があがる

ガーネットの叫び声だ

あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!ルース!ルース!

どうした!ガーネット!

俺は大慌てで部屋に飛び込む

怖い・・・怖いの・・・。コウモリが怖いのおおおおお!ルース!ルース!

コウモリ?

コウモリはどこにもいない。それどころか気配すら感じない。

ただ窓から見える月明りと枯れ枝がコウモリに影に見えなくもない。その程度のものだ。

ともかく俺はルースの代わりに半狂乱になったガーネットを力任せに抱きしめて言った

大丈夫!大丈夫だ!静かに・・・心を静めて・・・深呼吸するんだ・・・。

うう・・・うう・・・マスター・・・助けてええ・・・。

肩を上下させるガーネットをなだめすかし眠りにつくまで待つ。

俺は窓の外の月を見て思った。

・・・マスターアカーテス・・・俺は一体・・・どうすればいいんだ・・・。

朝、俺はルースの泊っている宿屋の前に来た。

ルース!

相当強い剣幕で宿屋に怒鳴り込む。

ちょ、ちょっと!お客さん!何なんだい!

一言、言ってやらなければ気が済まない。

何事かと止めようとする店主を無視しドスドスと二階の階段を登っていく。

二階の部屋の扉を片っ端から蹴り破り

1、2、3枚目の扉を蹴破ったとき

ベッドの上で女と全裸でからみ合うルースを見つけた。

その瞬間俺は我を失った。

ちょっとこおおおおおおおおおい!

きゃああああああああああああああ!

絶叫する女と

わ、わ、や、やめてください!マスター!

抵抗するルースの髪をわしづかみにして外に引きずり出す。

死ぬほど殴り飛ばした。

この!馬鹿があああ!

ぶえええええええええええ!

おい!止めろ!

ダンテ達が宿から出て来ると俺の手足を羽交い絞めにする

離せええええええええええ!

力任せにダンテ達を投げ飛ばすと3人の巨体がいともたやすく宙を舞った

ルースの胸倉をつかみあげ立ち上がらせる

お前はガーネットを見捨てて!女と!遊びやがってえええ!

何度も殴りつけた

ごほ!ばえ!ぐえ!ごおお!ぐあ!ねえ!えあ!ふえ!あえ!ぎい!

お前のせいでガーネットがケガをしたようなものだ!この!クズめえええ!

ルースは全身あざだらけで鼻から大量の血を流した。

首をしならせ顔を前後に揺らすと何とか言葉を発する

マ、マスター!ぶえ!やめ、やめてください!ごえ!やめてください!あぶえ!お願いですから・・・やめてください!ぎえ!・・・やめろって!んだよおお!

ドン!

ルースに突き飛ばされそうになったので逆に突き飛ばす。

まさか反撃してくるとは思わなかったのであっけにとられて面くらった。

いつの間にか周囲には大勢の人々が集まり俺たちのやり取りを見ていた

周囲の人々が奇異の視線を送る中

尻もちをつくルースを見下ろした。

何考えてる!ガーネットはお前を待ってるんだぞ!

ああああああああああ!もう!うる!うるせええなあああ!あいつとはもう終わったんだよ!いくらマスターだからって男と女の色恋にまで口出すんじゃねえよ!

な、なんだとおおおおおおおおおおお!

恐怖に身構えるルースは怯えながら言った

そうやって暴力に訴えかける!あんたそれでもマスターかよ!

こざかしいことを!言うな!

・・・ガーネットのこと好きだったはずなのに・・・世界一幸せにしてやるって思ってたのに・・・あの顔を見るの苦痛で・・・人と話している気がしなくて・・・あんな化け物みたいな・・・。

だからガーネットを避けたのか!

そうだよ!文句あるかよ!そういう苦労あんたならわかるってのかよ!耐えられるわけねえよ!経験してないやつに何がわかる!知ったような口叩いてんじゃねえ!ふざけんなあああああああああ!

息を荒げるルース

ルースの絶望は理解はできる。だがガーネットはもっと苦しんでいるんだ。

憔悴したルースに対して言いようもない怒りが沸き上がる

なぜならルースの言い分はガーネットの見た目が損なわれているから愛せなくなった。そう言っているからだ。

言いたいことはわかる。人間見た目は大事、そういうことだ。だがどうにもそれを受け入れられる素養を俺は持ち合わせていないようだ。

お前・・・。

俺は冷静なのか?この気持ちは哀れみか、憎しみか、あるいは愛情なのか、それともすべてか、何かを言いかけて口を閉じる。

最低だな?

お前に人の心はないのか?

クズめ!

死ねよ!

なんでもいいが言葉を呑み込むとはこういうことを言うのだろう。

安い人間的倫理観を持ち出してきつく罵ったところで何になるのか。

これ以上ルースを責め、追い詰めてもより絶望させるだけだ。

二人のためを思うならルースが立ち直ってガーネットのもとに戻ってくれるわずかな可能性にかけるしかない。

またそれを待つこともマスターの務めではないのか・・・。

・・・無様な。

ありあまる激情を捨て台詞に込め自分を律すると、俺はその場を後にした。

ほら、ルース大丈夫か。

ダンテが倒れたルースに手を貸して立たせてやっていた。

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