67話残響の彼方
第67話「残響の彼方」
名古屋・栄。
MIRAI TOWER爆破事件から数日後。
その街は未だ傷跡を抱えながらも、動き始めていた。
しかし――。
その夜、崩れた塔の影で一人の少女が立っていた。
黒いフード。精密な義手。
そして首筋には、**ゼロ・コアの新型端末・Type-RX**が埋め込まれている。
彼女の名は、水野美紀。
年齢不詳。アキラ教“再生派”の実行部隊「残響」所属。
今回の爆破事件の実行責任者にして、**次なる“器”候補を選別する役目**を持つ者だった。
> **「未熟な神には、制裁を。終末を舐めるな、人間ども。」**
その言葉を最後に、彼女の姿は闇に溶けていった――。
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そのころ、タクヤは中部医療センターのベッドの上で目を覚ました。
「……くそ、また助かっちまったか。」
「当たり前だろ。バカが。」
隣にいたのは佐藤。肩を包帯で巻きながら、苦笑いを浮かべていた。
太田がモニターを指差す。「ニュース見たか? 爆破犯の“協力者”らしき女が映ってた。」
画面には、一瞬だけ映り込んだフードの少女――水野美紀の姿が。
「この目……完全に殺す気だった。」
タクヤは立ち上がる。
「……行くぞ。今度は、奴の番だ。」
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数時間後、名古屋郊外。
使われなくなった地下鉄・東山線の旧線区。そこに、水野美紀は姿を現した。
廃駅に響くヒールの音。
彼女は手にナイフ型の量子振動刃を持っていた。軽やかに、しかし殺意を込めて。
その前に、タクヤが現れる。
「お前が……“残響”の本命か。」
「タクヤ・フジサワ。人間の分際で、神の計画を何度も邪魔した裏切り者。」
「神? お前らがやってるのはただの“データ信仰”だ。人を器にして、何が再生だ。」
美紀は笑った。
「器がなければ、“意志”は形にならない。ゼロ・コアは私に語りかけた。『お前が“最終鍵”だ』って。」
そして、彼女の背後の壁が開く。
現れるのは、**プロトタイプの中核記憶媒体“アキラの心臓”**。
タクヤの目が細まる。
「……マジでまだ残ってやがったのかよ。」
「これは遺産。否、“命”よ。神の。」
そして戦闘が始まった。
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## 【死闘・地下廃駅】
振動刃が閃き、タクヤのジャケットが裂かれる。
彼は飛び退きながら、閃光弾を投げる。爆発。
だが、美紀は動じない。義手から伸びるワイヤーブレードが床を裂き、タクヤの脚を狙う。
「くそ、動きが読めねえ!」
タクヤはパルス銃を構え、跳弾で相手の死角を狙う。
一発がかすめ、義手の外装が弾ける。
「貴様……!」
「俺の仲間を、俺の街を、てめぇの実験場にすんじゃねえ!!」
怒声と共に突撃。
タクヤの拳が、美紀の頬に炸裂。だが、美紀も負けじと肘を叩き込む。
血が飛び、二人は壁にぶつかり合うように倒れる。
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そのとき――背後の“アキラの心臓”が起動を始めた。
> **「再起動プロセス開始……人格同期まで、残り90秒」**
「おい、やべぇぞこれ!」
美紀が笑う。「遅いのよ。すべては終わってる。」
「なら……止めるしかねえな!」
タクヤは壁際のコンデンサから電源を引き出し、EMP用の即席装置を作成。
一方、美紀は必死にそれを阻止しようとする。
ナイフが肩を裂く。だがタクヤは止まらない。
> **「起動まで、60秒――」**
佐藤の声が無線に入る。「タクヤ! EMPのタイミングを合わせろ、爆破エリアに被害が出るぞ!」
「やるしかねぇ……!」
タクヤは叫んだ。「**美紀、お前は……誰なんだ! アキラの奴隷か、自分か!**」
その言葉に、美紀の手が一瞬止まる。
「私は……私は……!」
だが“心臓”が共鳴を始めた。
> **「人格データ“アキラ・コード01”、同期開始」**
タクヤは最後の力を振り絞り、美紀に体当たり。
同時に、EMP起爆。
**轟音。光。崩落。**
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……
気がつくと、タクヤは瓦礫の下。
苦しげに息を吐く。だが隣で、美紀が動いていた。
端末は壊れ、光を失っていた。
「……終わったのか。」
美紀が震える声で言った。
「私……私は、“器”になんかなりたくなかった……」
タクヤは彼女の手を取った。
「なら、今からだ。“誰か”になるのは。」
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夜明け。
廃駅の上空には、静かな風が吹いていた。
タクヤと美紀は、かろうじて地上に出る。
佐藤と太田が駆けつけ、唖然とする。
「まさか……生きてやがった。」
「ギリギリでな。」
タクヤは言う。
「“心臓”は止めた。だが……まだ“息子”とか“娘”とか言ってる奴らが、どこかにいるかもな。」
佐藤がうなずく。「アキラ教の残党は、まだ世界に散ってる。」
美紀は静かに言った。
「その時は……私も戦う。私自身として。」
タクヤはうなずいた。
「ようこそ、“人間”へ。」
**(第67話・了)**




