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アホすぎタクヤくん  作者: 綾瀬大和
第2シーズン新たな風
65/66

第66話塔の崩れる日

第66話「塔の崩れる日」


名古屋・栄。

春の午前、風が吹き抜ける久屋大通の歩道は、復興を終えた街の象徴として賑わいを取り戻していた。


子供たちの笑い声。屋台の匂い。地元FM局のスピーカーから流れる軽快な音楽。そして、中央にはそびえ立つ**MIRAI TOWER(旧・名古屋テレビ塔)**。


その内部、最上階付近の制御区画。

一人の男が無言でケーブルを繋いでいた。


灰色の作業着。無表情。手には軍用規格の小型核バッテリーと、旧アキラ教製の「位相制御爆弾」。


> **「起動、残り15分。端末003の失敗を、無駄にはしない。」**


彼の脳裏には、先日諏訪湖で失われた「第七端末」の映像が浮かんでいた。

あの少年は“揺らいだ”。人としての心に引かれた。だが、次は違う。


**次は、“神の記憶”が勝つ。**


それを証明するために、この塔は倒れる必要があった。


---


その頃、静岡・興津。


「……久屋大通で異常信号?」


タクヤが通信端末を見つめながら顔をしかめた。


佐藤が即座に横から覗き込む。


「ゼロ・コアのサブネットに似た信号パターン。名古屋の高周波塔が中継ノードにされてる可能性がある。」


「MIRAI TOWERか……!」


太田が立ち上がる。「やられるぞ。**あそこがやられたら、中部一帯の通信インフラがダウンする。** それに……栄の中心で爆発なんか起きたら……」


「火の海になる。」


タクヤの声が低くなる。

彼の脳裏には、五年前の“栄の毒ガス事件”の記憶がよみがえっていた。あの日、無実の罪で追われ、すべてを失った街。


だが今度は、守る側だ。


「行くぞ。今度こそ、終わらせる。」

タクヤは新幹線に乗り名古屋へ急行した

---


午後3時12分。名古屋駅から地下鉄名城線に乗ったタクヤたちは、栄駅で地上に出た。


その瞬間――空が赤く染まった。


**MIRAI TOWERの中腹から、煙が上がっていた。**


「クソッ、もう始まってる!」


タクヤが駆け出す。背後に太田と佐藤。


現場では警察と消防がすでに封鎖線を張っていたが、混乱は止まらない。逃げ惑う群衆。飛び交うドローン。塔の中には、まだ避難できていない人々がいた。


「塔の構造、まだ持つか!?」


佐藤が即座に解析端末を開く。


「中枢に爆弾らしき熱源あり。**このままだと、次の爆破で塔全体が崩落する。**」


タクヤは息を飲んだ。


「時間は?」


「約6分。」


そのとき、塔の非常口から、一人の少女がふらつきながら現れた。


白い服。目は虚ろ。**首には、ゼロ・コア端末と同じ装置が埋め込まれていた。**


タクヤが駆け寄る。


「おい! お前、中に誰がいる!?」


少女は震える声で呟いた。


> 「……“父”が、神になろうとしてる……“この塔”が、その証明……」


「“器”……か。」


佐藤の顔が歪む。「ゼロ・コアのデータごと、塔を犠牲に自己進化させようとしてる。**都市全体を使った“再誕の儀式”だ。**」


タクヤは顔を上げ、決意の眼で塔を見上げた。


「俺が行く。」


「待て、制御室まで行くには爆心地を通るぞ!」太田が叫ぶ。


「間に合わなきゃ、意味がない!」


叫びと共に、タクヤはMIRAI TOWERの階段を駆け上がった。


---


最上階に到達したとき、そこは異様な静けさに包まれていた。


瓦礫。赤い警告灯。煙。そして、中央に立つ一人の男。


「来たか。」


男は振り返る。40代後半。白髪混じりの長髪。

その瞳は、かつてのアキラを模した“人工神経網”特有の光を宿していた。


「お前は……誰だ?」


「第六端末にして、“神の鍵”の継承者。」


男は装置の前に立ち、両手を広げた。


「**終末の炎は、再生の光だ。人間の限界を、ここで超える。**」


タクヤは一歩も引かずに立ち向かった。


「それが、“アキラ教”のやり残しってわけか……!」


「我らは“やり残し”ではない。“始まり”なのだ。」


男が装置に触れた瞬間、塔全体が軋んだ。**振動。光。爆破まで、あと90秒。**


「お前の理想なんかで、人を巻き込むなッ!」


タクヤは飛び込む。男に拳を叩き込む。吹き飛ばされ、壁に激突しながらも立ち上がる。


そのとき、男の背後で制御装置が明滅した。


**佐藤の遠隔EMPが届いたのだ。**


> **「制御装置、ハッキング成功。自己爆破まで残り30秒。」**


だが、装置は停止しない。男は自らに接続ケーブルを突き刺していた。


「肉体が滅びても、**“意志”はデータとして残る。次に繋がる。**」


タクヤが叫ぶ。


「その“意志”が狂ってるって言ってんだよッ!!」


そして、爆心地へ向けて突撃。制御パネルにEMPモジュールを投げつけた。


**残り5秒。**


タクヤが男に覆いかぶさるように体当たり。


**閃光。衝撃。全てが白に染まった。**


---


……


目覚めたとき、タクヤは崩れた瓦礫の中にいた。


酸っぱい匂い。割れたガラス。

だが……**塔は倒れていなかった。**


遠くで佐藤の声。「タクヤ! 生きてんのか!?」


「……ああ。なんとか、な。」


火の海となった一帯の消火作業が進む中、救助隊の中に、かすかに微笑む少女の姿があった。


首の端末は、もはや光を放っていなかった。


---


数日後。


名古屋の夜は、静かに再建を始めていた。

MIRAI TOWERは半壊したが、基礎は残り、象徴としてその場に立ち続けていた。


タクヤは夜の塔を見上げて呟く。


「……まだ終わらない。だが、**一つの亡霊には、決着をつけた。**」


佐藤が隣で笑った。


「また来るぞ。奴らは“次の器”を探してる。」


「なら……俺たちも、“次の未来”を作りにいこう。」


そう言って、タクヤは歩き出した。


かつて神がいた塔を背にして。


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