第59話灰に誓う
**第59話:灰に誓う**
札幌の空は、真っ白だった。
吐く息も凍る冬の朝。
雪祭りの準備が進んでいたはずの市街地は、突如として――**消えた。**
**光、熱、そして沈黙。**
北海道・札幌。
人口およそ200万人の都市が、**一瞬で火の玉と化した。**
後に“第二の東京”と呼ばれることになる、その核爆発は、東京湾以上の破壊力を持っていた。
アキラ教が用いたのは、中国から密輸された小型核弾頭――それも、自爆信者による直接起爆という、**狂気の儀式**だった。
> **「アキラを信じぬ都市は、罰を受ける」**
SNS、テレビ、ラジオ、すべてが同時にその声明を流し始めた。
黒い画面に白文字の警告。
繰り返される祈りの歌。
まるで洗脳のように、国中に響き渡る“信仰の呪い”。
───
「……ふざけんなよ……ッ!!」
東北・廃寺の地下に響いた怒声。
佐藤が、札幌の写真を机に叩きつけた。
焼けただれた街の空撮映像。
骨だけになった大通公園。
真っ黒に焦げた札幌駅の残骸。
由紀子は、手を口に当てながら震えていた。
「こんなの……もう、宗教でも戦争でもない。これは……**虐殺**だよ……」
太田が深く息を吐き、地図の上に新たな赤い印を加える。
「長野、仙台、福岡、東京、そして……札幌。奴らのやり方は、完全にパターン化してる。“離反都市を見せしめに潰す”。それで信者を繋ぎ止めてんだ。」
「しかも、今度は……」
タクヤが低い声で続ける。
「**“裏切り者の処刑”を、全国で始めた。**」
SNSには、アキラ教の“新たな処刑映像”が次々と投稿されていた。
「祈りを拒んだ教師」「信者を脱退した母親」「報道を続けた記者」。
彼らは“反逆者”として、広場や教会前で見せしめにされ、**次々と命を奪われていた。**
> **「次は名古屋だ」**
その言葉が、画面に浮かび上がる。
由紀子の目が大きく見開かれた。
「……まさか、また……」
タクヤは拳を握りしめた。
「もう時間がない。あいつら、本気で“日本そのもの”を焼き尽くす気だ。」
───
同時刻、関西の地下都市ネットワークでは、わずかな自由人たちが秘密裏に集まっていた。
彼らはタクヤたちと繋がる“新しいレジスタンス”だった。
「本拠地は……やはり“富士山の地下”って噂が濃厚です。」
「信者の幹部たちも、ほとんどがそっちに集結してる。アキラ本人も……恐らくそこにいる。」
「やるしかねえ……“日本を、終わらせる前に”――**アキラを終わらせる。**」
───
札幌の空から降った灰は、やがて本州に届いた。
その灰を見つめながら、タクヤは静かに誓った。
「焼かれた命の分だけ……俺たちは、強くなる。」
**今や日本は、アキラ教による「信仰か死か」の地獄となった。**
**だが、その炎の中に――抗う意志が、確かに生まれ始めていた。**
**次の標的は名古屋。**
**そして、最後の決戦の火蓋が、ゆっくりと――上がり始めていた。**




