第58話終わりの始まり
**第58話:終わりのはじまり**
東京湾の爆心地から、黒く焦げた風が日本中に吹き荒れた。
爆弾投下から一ヶ月、日本という国はまるで時間を止めたように静まり返っていた。
インフラは壊滅、経済は崩壊、そして――**アキラ教の“支配”もまた、深く揺らいでいた。**
信者たちの間に広がる混乱。
「どうしてアキラ様は東京を救わなかったのか?」
「これは啓示なのか? それとも……裏切りなのか?」
誰も答えられなかった。
各地で“反アキラ”のデモが発生。かつて教団が設けた“祈りの塔”が焼かれ、信仰警察が暴徒に襲われる事件も頻発した。
海外からの非難声明も徐々に戻り、日本への支援の動きも水面下で再開され始めていた。
**アキラ教の絶対支配は、ひび割れ始めた。**
───
東北・山奥の廃寺。
そこで、タクヤたちはようやく腰を落ち着けていた。
掘り出し物の古い発電機、アナログ無線、残された食糧と武器。
「……東京の“爆心”が、逆に奴らの首を絞めることになるとはな。」太田が缶詰を開けながら言った。
「でも完全には終わってない。」佐藤が古新聞を机に広げる。
《“アキラ様の復活を信じよ”全国一斉の新興祈念式 開催へ》
「……まだ火は消えてないどころか、むしろ炎上中だ。」由紀子が小さく吐き捨てた。
アキラ教は、爆弾を「神罰」として信者に解釈させ、“さらなる信仰の深化”を求めていた。
一部の過激派信者は、自爆テロや火炎事件を起こし、国民の恐怖を煽っていた。
「アイツら、“終わるくらいなら燃やし尽くせ”ってタイプだ。」タクヤの声に、怒りと警戒が混じる。
だが、風向きは確実に変わっていた。
SNSの裏ルートで、タクヤたちが発信した“アキラ教の犯罪証拠”が少しずつ拡散されはじめていた。
封鎖されていた報道局の一部も“地下ラジオ”として再起動し、真実の声が街へと流れ始めていた。
「……あと一押しだ。あと一つ、奴らの核を崩せれば。」佐藤が地図を見つめる。
「それって、やっぱり……**アキラ本人**?」由紀子が尋ねた。
タクヤは頷く。
「次の一手は、アキラの“本拠地”を突き止めることだ。中心を潰せば、この狂気は終わる。」
爆弾が落とされ、焼かれた東京の空。
そこから始まる“再生”の予感。
日本は、ようやく“普通”を取り戻しつつあった。
だが、その“普通”を壊そうとする者は、まだそこにいる。
**アキラ教――まだ息をしている。**
そして、次の標的はまだ、誰にもわからなかった。
**それでもタクヤたちは動く。
止めなければ、また誰かが焼かれる。
今度こそ――最後の火を、消すために。**




