第57話崩壊の序曲
**第57話:崩壊の序曲**
数週間後。
東京の空が、真昼なのに異様に赤く染まっていた。
テレビもラジオも沈黙し、SNSには「通信障害」「停電」「地下へ避難を」といった断片的な言葉が流れ続けていた。
そして、それは突如として起こった。
**中国から発射された、小型の原子力爆弾が――東京湾で炸裂した。**
爆心地は港湾地区。建物は音もなく崩れ、光と熱が空を覆った。
数十万が即死、残された都市機能も壊滅状態。電力網、通信網、交通インフラ――日本の心臓部が、一瞬で沈黙した。
アキラ教の“支配構造”が日本全土に拡がる中、外交はすでに崩壊し、政府もアキラ教に事実上乗っ取られていた。
防衛ラインも指揮系統も、全てが麻痺していたのだ。
人々は呆然と立ち尽くし、燃えるビルを見上げていた。
誰もが、理解できなかった。
なぜ、日本が攻撃されたのか。
なぜ、中国が動いたのか。
そして、**なぜアキラ教が何も語らなかったのか。**
───
「……アキラが、仕組んだ。」
タクヤは、廃工場の地下室で、その情報を噛み締めるように呟いた。
「奴らは、自分たちに逆らう“日本”という国を一度破壊したかったんだ。“ゼロ”にして、作り直すために。」
由紀子が顔を曇らせる。「まさか、中国と……組んでたの?」
「いや……利用されたんだろうな。アキラ教も、どこかの段階で“コントロールを失った”可能性がある。」
佐藤が静かに言う。「つまり……日本は、もう国じゃない。“アキラ帝国”の実験場になったんだ。」
ニュースは統制され、ネットも“信者用フィルター”がかけられ、真実を語る言葉は次々と消された。
学校も、会社も、自治体も“教団の命令”で再編され、“反抗の芽”は未然に摘み取られるようになった。
街には“信仰警察”が巡回し、祈らない者、アキラへの忠誠を誓わない者は、その場で連行される。
タクヤたちは、もはや“亡命者”だった。
だが――まだ終わってはいなかった。
「東京が焼かれようと、俺たちは生きてる。まだ動ける。」
タクヤの声は、かすかに震えていたが、確かな意思がこもっていた。
「この国は、アキラのものじゃない。絶対に、取り返す。」
彼らは地図を広げる。
赤く塗られた“支配エリア”と、わずかに残された“自由な地域”。
それをつなぐ、危険な地下ルート。
「次は、北だ。」太田が言った。「東北の奥、まだ電波の届かない山村が残ってる。そこから……始めるしかねぇ。」
東京が焼け落ちたあの日。
国が崩れたあの日。
**タクヤたちは、“新たなレジスタンス”の誓いを立てた。**
それはたった数人の、弱き者たちの反撃。
だが――**すべては、そこから始まる。**




