表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アホすぎタクヤくん  作者: 綾瀬大和
第1シーズン
55/66

第55話逃亡

第55話:逃亡


名古屋・栄。繁華街のど真ん中で、突如として白煙が立ち込めた。


最初はガス漏れかと思われた。だが、数十秒後には咳き込む人々、目を押さえて倒れ込む通行人の姿が次々に確認される。

サイレンの音が鳴り響くよりも早く、SNSには「サリン」という単語が流れ始めていた。


そして――その混乱の中で、一枚の映像が拡散される。


**「サリン散布犯とされる“脱獄者グループ”」**


そこには舞木検査場から脱出したタクヤたちの姿が、はっきりと映っていた。

だが、それは明らかに合成されたフェイク映像。背景も時刻も不自然な編集だった。


「……やられたな。」


タクヤは、佐藤タクトのタブレットに表示されたニュース速報を見ながら呟いた。


「名古屋でのサリン事件、俺たちの仕業ってことにされた。これじゃ、ただのテロリスト扱いだ。」


「アキラ教の仕込みだな。証拠も報道も、全部操作済みだ。」佐藤の声は冷たく抑えられていた。


「早く動かないと、ここも危ない。」由紀子が荷物をまとめながら言う。


太田さんがすでに車を手配していた。

「名古屋から出る。もう地元の協力者にも頼れん。……東京に行こう。“氷川キャンプ場”なら、少しの間、身を隠せる。」


「キャンプ……?」由紀子が少し目を丸くした。


「奥多摩だ。東京の山奥。元は家族で行ってた場所でな、今はほとんど使われてない。誰にも知られてないし、通信も最低限。逆にちょうどいい。」


車は深夜、検査場裏の抜け道から音もなく発進した。

封鎖された街道、非常線をかいくぐり、旧道を使って名古屋を離れる。

バックミラーに映る市街地の灯りは、もはや彼らにとって敵の光だった。


───


東京・奥多摩。


日の出前、氷川キャンプ場の入口に、静かに車が止まった。

タクヤたちは深い山の空気を吸い込む。息が白く、空気が冷たい。


「ここが、俺たちの新しいアジトだ。」


キャンプ場は木造の小屋が数棟、川沿いに点在していた。

炊事場も、風呂もある。水は冷たいが飲めるし、発電機もまだ動いた。


「……まるで世捨て人だな。」由紀子が苦笑しながら寝袋を広げる。


「それでいい。世間にとっては、今の俺たちは“存在してはいけない人間”なんだから。」タクヤは地面に地図を広げ、黒川記者からの応答を待っていた。


「アキラを倒すには、まず“世間の嘘”を壊さなきゃならねぇ。」太田が火を起こしながら言う。


「そして真実を、正しい場所に届ける。」佐藤が加える。


その夜、彼らは交代で見張りを立てながら、凍えるような静けさの中で眠りについた。


**山奥のキャンプ場。**


**誰も知らない、新たな反撃の拠点。**


タクヤたちはもう、逃げるだけの存在ではなかった。

次に動くときは――必ず、アキラを暴き、世界の目を覚まさせる

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ