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アホすぎタクヤくん  作者: 綾瀬大和
第1シーズン
18/66

第18話闇の中で過ちとナツミの慰め

第18話: 闇の中での過ちとナツミの慰め


タクヤは運転士としての2回目の乗務に臨んでいた。今回は新横浜線の新横浜日吉区間を担当することになった。新横浜から日吉間は、全てがトンネル区間で構成されており、視界はほぼゼロに近い。タクヤはそのことを知っていたが、今回は前回の経験を生かし、少しでも冷静に運転しようと心がけていた。 

タクヤはいつも通りアナウンスした 

「ご乗車ありがとうございます東横線東武東上線直通急行志木行きです停車駅は日吉まで各駅に停まり武蔵小杉、多摩川、田園調布、自由が丘、学芸大学、中目黒、渋谷から終点まで各駅に停まります」とタクヤはアナウンスした

トンネルはやはりその不安感は強くなる。視界が暗く、無線で作業員がいることが伝えられても、彼らの姿は全く見えなかった。トンネルの中では、作業員の位置や動きがまるで把握できず、車両は無音の中で進んでいった。


その時、タクヤの心に不安が湧いた。作業員がいると言われても、何も見えない。そのことに焦り、そしてなぜか冷静さを欠いていた。運転に集中するはずのタクヤの目には、どこか焦りと緊張が混じっていた。進行方向に何も見えないまま、車両は進んでいく。


そして、最も恐れていたことが起こった。


タクヤは無意識のうちにブレーキをかけるタイミングを逃し、作業員がいる区間を進み続けてしまった。突然、車両が何かを引いた感覚が走り、タクヤはすぐに現場を確認できなかった。やがて無線で緊急事態が告げられ、タクヤは事の重大さに気づく。


その後の調査で、幸いにも作業員には命に別状はなかったものの、タクヤには一週間の停職処分が下されることとなった。彼はその知らせを受けると、言葉も出なかった。運転士としての自分に大きな失望を感じ、悔しさと自己嫌悪に苛まれた。


ナツミの慰め


その晩、タクヤは深い眠りに落ちた。夢の中で、彼は再びナツミに会った。彼女の笑顔は、タクヤの心の中に温かな光を灯すようだった。目を覚ますと、部屋の中には誰もいないが、心の中で彼女の声が響いた。


「タクヤ、どうしてそんなに自分を責めるの?」


タクヤは驚いて目を閉じた。ナツミの声が、どこからともなく聞こえてきた。その声に耳を傾けると、彼の胸は少しだけ軽くなった。


「ナツミ…俺、また失敗してしまった。あの時、冷静さを欠いて…作業員を…引いてしまったんだ。」


「それは辛いことだったわね。でも、タクヤ。あなたは誰かを傷つけるつもりはなかったでしょう?事故を起こしてしまったことは悔しいし、反省しなければならない。でも、それを悔やみすぎることはないわ。」


ナツミの声は優しく、温かさを感じさせるもので、その言葉がタクヤの心に染み込んでいった。


「あなたは前に進むためにここにいるんでしょう?復讐のために、ナツミを守るために。でも、あなただけが苦しむ必要はないのよ。私がいなくても、あなたは一人じゃない。」


タクヤは目を閉じて、再び深く息をついた。ナツミの言葉が、まるで彼を抱きしめてくれるかのように感じられた。彼女がいなくても、心の中でずっと支えてくれている。そのことに気づくと、タクヤは少しずつ涙がこぼれてきた。


「ナツミ、ありがとう。俺、頑張るよ。自分を責め続けることなく、前に進むために。」


「それでいいのよ。あなたにはまだ進むべき道がある。私も応援しているから。」


その後、タクヤは目を開け、静かな部屋の中で再びナツミを感じ取った。彼女が伝えたかったことは、ただ一つだった。『悔しさに囚われず、前に進み続けて欲しい』と。


タクヤはゆっくりと立ち上がり、心の中で固い決意を新たにした。復讐のために、そしてナツミの無念を晴らすために、前に進み続ける。そのためには、過去の過ちを受け入れ、未来を見据えることが必要だ。


「ありがとう、ナツミ。お前のために、絶対にあの犯人を見つけ出す。」


タクヤはナツミの声を心に刻み、再び歩みを進める決意を固めた。

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