第17話初乗務、タクヤ運転士
第17話: 初乗務、タクヤ運転士!
タクヤの訓練はついに終わりを迎え、運転士としての初仕事が決まった。その日は、緊張と期待が入り混じった特別な一日だった。タクヤは、慣れない制服を身にまとい、東急電鉄の田園都市線の運転士として、初めて車両を走らせることになった。
朝早くに駅に到着したタクヤは、無線の確認や車両の点検、そして乗務前の打ち合わせを済ませた。すべてが初めてのことだらけで、緊張が身体中に張りついているのを感じた。しかし、それでも心の中には強い決意があった。これからの一歩一歩が、ナツミのための復讐に繋がっていくのだという信念があった。
初めての運転席に座ったタクヤは、目の前に広がる風景をじっと見つめた。車両がホームを出発し、田園都市線の線路が走り出すと、彼は少しずつ呼吸を整えながら運転を続けた。慣れない操作に手が震えたが、ナツミの笑顔が浮かび、その優しい言葉が頭に響いていた。「一緒に未来を見ようね」という言葉。その言葉だけが、タクヤにとっての支えであり、彼を動かす力となった。
乗務中の心情
車内の音が耳に心地よく響き、線路の上を進んでいく感覚が徐々にタクヤに馴染んでいった。無線での指示を受けながら、運転士としての基本的な業務をこなすことに集中していたが、次第に彼の意識は別のところに向かっていった。
普段は何気ない風景が、タクヤにとっては一つ一つが大きな意味を持つようになった。駅のホームに立つ人々、車両の揺れ、駅間の景色。すべてが彼にとって特別なものとなった。
「この線路を走りながら、犯人に近づいていくんだ。」
タクヤは心の中でそう思いながら、車両の進行を見守った。田園都市線は渋谷駅から始まり、神奈川県内の各駅を通る路線だ。その途中にある駅や車両に、かつて犯人が関わっている可能性があると思うと、タクヤは一層慎重に運転しながらも、どこか不安を感じていた。
普段、乗客たちが何気なく乗り降りしている駅の風景も、タクヤにとってはそのひとときが無駄ではないと感じられた。ここで犯人を見つけ、捕まえるための手がかりを掴むために、すべての小さな出来事を無視してはいけない。彼の心はその一歩先にある復讐のために進み続けていた。
田園都市線の風景
タクヤが運転する車両は、田園都市線の特徴的な風景の中を進んでいった。緑豊かな土地、住宅地、そして都会的なビル群が交錯する場所。それぞれの駅でドアが開き、乗客が乗り降りしていく。
タクヤは、その度に乗客の顔を一瞬見ただけで、その中に怪しい人物がいないかを瞬時に判断していた。普段ならば特に気に留めることなく流れる時間が、今はすべて彼にとって重要な瞬間だった。乗客たちの中に、ひょっとしたらナツミを奪った犯人が紛れ込んでいるかもしれない——そんな考えが頭をよぎるたび、タクヤの心拍数はわずかに上がった。
その日は特に問題なく、運転は進んでいった。しかし、タクヤは一瞬も気を抜くことなく、慎重に車両を進め続けた。沿線の風景が、かつてナツミと一緒に訪れた場所と重なり、彼の胸に悲しみと怒りが入り混じった。
「俺は、この街で犯人を見つけるんだ。」
タクヤは心の中で再び誓い、ハンドルを握りしめた。その瞬間、あの時東横線を走る車両が、ナツミを失った日からの自分を変える唯一の手段となったことを実感した。
目的地に到着
タクヤが担当する区間を無事に終え、長津田駅に到着すると、彼は安堵の気持ちと同時に少しの寂しさを感じた。まだ復讐は果たせていない。あの犯人を捕まえるためには、もっと多くの情報を集め、もっと慎重に行動しなければならない。
車両が停車し、ドアが開くと、乗客たちが次々と降りていった。タクヤは一人、車両の中に残った。外を見つめながら、彼は改めて決意を固めた。次の乗務、次の一歩に全てをかけよう。
「ナツミ、絶対にお前の無念を晴らす。」
タクヤは車両から降りるとき、ふと一瞬だけ目を閉じた。周囲の喧騒が耳に入ってくる中で、彼は再び心の中で誓った。次こそは、復讐のために、全てをかける。そのために、今はこの職を全うすることが最善だ。
そして、タクヤは再び運転席に座り、次の勤務へと向かっていった。彼の前に広がるのは、ただの線路ではなく、復讐を果たすために必要な道のりだった。




