第13話高校3年生、タクヤとナツミの未来
第13話: 高校3年生、タクヤとナツミの未来
時は流れ、タクヤとナツミは高校3年生になっていた。あの無謀で暴走気味な旅行から一年が経ち、二人の関係も少しずつ変わってきた。タクヤは相変わらずヤンキー気質全開で、周囲を驚かせる行動を繰り返していたが、少しずつ成熟してきていることも確かだった。ナツミは、タクヤのことを心配し続ける一方で、彼が変わっていくことを感じ取っていた。
新たな出発
春の風が心地よい季節。受験を控えた忙しい日々が続く中、タクヤとナツミは久しぶりに二人だけで会うことになった。ナツミは少し緊張した面持ちで、タクヤがいつものようにドタバタしていないことを不安に思っていた。
「タクヤ、今日はどうしたの?」ナツミは少し心配そうに言った。
タクヤは少し遠慮がちな笑みを浮かべて答えた。「なんかさ、今の俺たちって、これからどうなるのかちょっと考えちゃって…。」
ナツミは目を細めて彼を見た。今までのタクヤなら、そんなことを口にするなんて思いもしなかった。それが少し嬉しく、そして驚きでもあった。
「どうしたの?なんか変なこと言ってるよ。」
タクヤは少し恥ずかしそうに頭を掻きながら言った。「いや、俺、進路のこととか、これからどうするか、少し真剣に考えるようになったんだ。」
ナツミは目を大きく見開いた。「え?タクヤが?」
タクヤは少し照れくさそうに頷いた。「うん。まあ、暴走族とかの仲間たちとはさすがにもう、ちょっと距離を置こうと思ってて。でもさ、何かしら夢を持ちたいって思うんだよ。」
ナツミはその言葉に思わず胸が熱くなった。タクヤが少しずつ変わってきていることを実感した瞬間だった。
「タクヤ、すごい…」ナツミは嬉しさを隠せず、微笑んだ。
タクヤは一瞬、ナツミの表情を見て恥ずかしそうに視線を逸らした。そして、深呼吸を一つしてから言った。「まあ、でもさ、俺、どうしてもお前と一緒にいたいんだよ。お前のことを守りたいし、支え合いたい。だからこそ、もっとしっかりした男になりたいんだ。」
ナツミはその言葉に胸がいっぱいになり、言葉が出なかった。ただ静かに彼の手を握りしめた。
受験と未来への一歩
受験が近づくにつれ、二人の間に新たな緊張感が生まれていた。タクヤは以前のように無茶なことをすることも少なくなり、むしろ勉強に力を入れるようになった。ナツミもまた、タクヤの頑張りを支えるべく、精一杯のサポートをしていた。
ある日、放課後に二人で教室に残って勉強していると、タクヤがふと呟いた。
「ナツミ、俺、受験に受かるかな…?」
ナツミはタクヤを見て、しばらく無言で考えた。そして、優しく微笑んで言った。「もちろん、受かるよ。タクヤ、ちゃんと努力してるじゃない。きっと大丈夫。」
タクヤは少し不安そうに目を伏せたが、ナツミの言葉に勇気づけられたようだった。「そうだな。お前が言うなら、信じるよ。」
その言葉を聞いて、ナツミは心の中で「タクヤ、絶対に夢を叶えてほしい」と強く願った。
そして、ついに受験の日が訪れた。二人は別々の会場で受験し、その日はお互いに電話をし合うこともなく、ただ静かに過ごしていた。受験が終わった後、タクヤはいつものように無邪気に笑って言った。
「終わった!結果はどうあれ、今はすごくすっきりしてる!」
ナツミはその姿を見て、心から安心した。タクヤがどんな結果を迎えても、彼がこれから成長していくことを確信していたからだ。
未来を見つめて
受験から数週間が経ち、結果が届いた。タクヤは合格通知を受け取ったその日、ナツミに真っ先に電話をかけた。
「ナツミ、合格したよ!俺、大学行けるんだ!」
ナツミは驚きと喜びが入り混じった表情で、思わず涙がこぼれそうになった。「タクヤ、ほんとに…?」
タクヤは少し照れくさそうに笑いながら言った。「うん、頑張った甲斐があったよ。でも、俺が頑張れたのは、お前がずっと支えてくれたからだよ。ありがとう、ナツミ。」
ナツミはしばらく黙っていたが、やがて笑顔で答えた。「私も、タクヤと一緒に成長できて嬉しいよ。」
そして、二人は静かにお互いを見つめながら、これから先の未来について考えていた。どんな困難が待っていようとも、二人なら乗り越えられる。タクヤの成長と、ナツミの支え合いは、二人の絆をさらに強くしたのだった。
それからの二人
タクヤとナツミは、大学生活を迎えることになった。タクヤはまだまだ暴走気質を持っているところがあるが、以前のような無茶な行動は減り、どこか落ち着いた雰囲気を持つようになっていた。ナツミもまた、タクヤと共に成長し続け、二人はこれからの未来に対して期待を膨らませていた。
そして、タクヤが何度も言っていた言葉が、今では二人の心に深く刻まれていた。
「お前と一緒に、これからもずっと笑っていられるように、頑張るからな。」
ナツミはその言葉を聞くたびに、胸が温かくなるのだった。