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アホすぎタクヤくん  作者: 綾瀬大和
第1シーズン
10/66

第10話2年間の空白

第10話: 2年間の空白

タクヤとナツミは、夕暮れの道を並んで歩いていた。空が徐々にオレンジ色に染まり、歩く足音が静かに響く。タクヤは、今日も無事に学校を終えて、ナツミと一緒に帰るこの時間を心から楽しんでいた。


「明日も頑張るぞ、ナツミ!」タクヤはいつものように元気よく言ったが、ナツミは少し不安そうな顔をしていた。


「タクヤ、無理しすぎないでよ。まだ体、大丈夫なの?」ナツミの心配そうな目に、タクヤは少し照れながら答える。


「大丈夫だって、ナツミ。お前がいれば、俺はなんでもできるさ。」


二人はそのまま笑顔を交わしながら歩いていた。しかし、その平和な時間が突如として崩れ去ることになった。


突然、後ろから不穏な音が響いた。エンジンの轟音、そして複数のバイクの音が近づいてくる。


タクヤが振り返ると、そこには見覚えのあるバイク軍団が迫っていた。ヤンキー仲間のアキラ軍だった。そのリーダー、アキラが冷ややかな笑みを浮かべながらタクヤに近づいてきた。


「タクヤ、お前元気そうだな。」アキラがニヤリと笑いながら言うと、タクヤはその笑顔を見て心の中で何かが反応した。


「おい、タクヤ、何だか気に食わねえ顔だな。久しぶりに俺たちのバイクに乗ってみろよ。」アキラが手を伸ばしてきたが、タクヤはその手を振り払う。


「お前らとはもう関わらねえって言ってるだろ。」タクヤはしっかりと答えるが、アキラはそれを無視して命令した。


「ナツミ、後ろに乗れ。」


ナツミは恐怖を感じたが、タクヤの反応を見て動けずにいた。その瞬間、タクヤの目が鋭く光り、アキラに対して一歩踏み込む。


「お前、ナツミに手を出すな!」タクヤの声は強く、怒りに満ちていた。しかし、アキラはニヤリと笑ってこう言った。


「じゃあ、お前が俺たちに勝てるのか?やってみろ。」


その言葉を受けて、アキラ軍のメンバーたちは一斉に笑った。その隙に、タクヤはナツミを守るために立ち上がろうとした。しかし、アキラ軍の一人が無理にナツミを掴んで、無理やりバイクに乗せようとした。その瞬間、タクヤの体が震えた。


「タクヤ…助けて…」ナツミの小さな声が耳に届いた。その声にタクヤは決意を固め、ナツミを守るために全てを捨てる覚悟をした。


しかし、そのとき、アキラが突然バイクのアクセルを一気に開け、アキラ軍のバイクが勢いよく前進した。タクヤが後ろを追おうとしたその瞬間、ナツミの乗っていたバイクが無謀に加速し、制御を失って道の端に飛び出し、激しく転倒した。


「ナツミ!?」タクヤは驚愕の声を上げて駆け寄るが、バイクの事故で倒れた二人を助ける暇もなく、意識が遠のいていった。


二年間が過ぎた。


タクヤは目を覚ました。しかし、それは最初はぼんやりとしていて、何が起きたのかも思い出せない。彼の周りは真っ白な天井が広がっていた。体中が痛む。その痛みだけが現実を突きつけてくる。


「ナツミ…?」タクヤはかすかな声で呟いた。記憶が断片的に蘇り、ナツミのことを強く思い出す。しかし、どうしてもその後のことが思い出せなかった。


その時、部屋の扉が静かに開かれ、見知らぬ女性が部屋に入ってきた。彼女はゆっくりとタクヤのもとに歩み寄り、涙をこぼしていた。


「タクヤ…よかった…あなたが目を覚ましてくれて…」その女性は、タクヤの母だった。


「お母さん…?」タクヤは驚きながらも、ぼんやりと答える。


「ずっと、ずっと…心配してたのよ。」母は手をタクヤの顔に当て、涙を流しながら言った。


その後、タクヤは少しずつ記憶が戻ってくる。そして、ナツミのことを思い出した。しかし、ナツミの姿はどこにも見当たらなかった。


「ナツミは…?」タクヤは必死に尋ねたが、母は言葉を詰まらせた。


「ナツミは…」母は深い息をついて、言葉を続けた。「ナツミは二年前に事故にあって、それからずっと目を覚まさないのよ。」


その瞬間、タクヤの胸が締めつけられるような感覚に襲われた。ナツミは目を覚まさないままだった。自分のせいだと思い込み、深い後悔の念に苛まれる。


「ナツミ…ごめん、俺が…」タクヤは涙をこらえながら、自分を責めた。母はその場でタクヤを抱きしめ、優しく言った。


「タクヤ、あなたは何も悪くないわ。でも、ナツミのためにできることがあるのなら、きっと彼女もあなたに感謝しているわよ。」


その言葉にタクヤは少しだけ力を取り戻し、心の中で決意を固めた。彼はもう一度立ち上がる。ナツミのために、自分のすべきことをするために。

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