青く美しい星
「船長、まもなくあの惑星に到着します」
「そうか、やっとか。この時をどれほど待ちわびたか」
青く美しい星からはるか遠く離れた星を出発して、30年が経った。あと1年であの惑星をわれわれのモノにすることができる。出発してからの気の遠くなるような歳月に比べればあと1年なぞ造作もない。あの星に宇宙人がいることは出発前から確認済みだが、科学力、軍事力でわれわれが圧倒的に進歩していることに違いはない。到着し次第、反抗する者は皆殺しにし、そうでない者は奴隷にしてやる。向こうの女をわが奴隷にするのが楽しみだ。
船長がそう考えていると、部下が慌てて報告に来た。
「船長、大変です。とある宇宙船から通信が入りました。メッセージを読み上げます。『あと2年後にわれわれが、あの青く美しい星に到着する。お前たちがあと1年後に到着することは分かっている。悪いことは言わない。すぐに引き返せ。お前たちに勝ち目はない。あの星はわれわれのモノだ。引き返さぬ場合、お前たちの宇宙船を破壊する』」
「なんということだ。あの青く美しい星を狙っていたのはわれわれだけではないのか」
船長は驚嘆した。
「船長、どうしますか?警告を無視して、このままあの青く美しい星に向かいますか?引き返しますか?」
船長は部下を一瞥してこう言った。
「引き返すしかあるまい。われわれは向こうの宇宙船の位置を把握できず、向こうはわれわれの位置を把握している。先制攻撃をくらった時点でこの宇宙船は終わりだ」
「そんなぁ」
部下は泣くような声を出して、引き返す準備を始めた。
「船長、あの船、通信が届いた途端すぐに向きを180度変えて引き返しましたぜ。はは!良い気味でさぁ」
「ああ、そうだな。あの青く美しい星のためにわれわれがどれほど苦労したことか。どこぞの星の宇宙人にやるものか」
船長がそう言うと、別の部下が慌てて報告しに来た。
「船長、大変です。とある宇宙船から通信が入りました。メッセージを読み上げます。『あと3年後にわれわれが、あの青く美しい星に到着する。お前たちがあと2年後に到着することは分かっている。悪いことは言わない。すぐに引き返せ。お前たちに勝ち目はない。あの星はわれわれのモノだ。引き返さぬ場合、お前たちの宇宙船を破壊する』」
報告を聞くと、すかさず船長が
「どこかで聞いたことがある文章だな」
と言った。
「確認するが、その通信は、あの引き返した宇宙船とは別の宇宙船から来たのだな」
「はい。ただ、相手の宇宙船の場所までは分かりません」
「これは困った。向こうだけがわれわれの位置を知っていては攻撃は避けられない。攻撃を受ければ全員死ぬ。よし、引き返そう」
「そんなぁ」
部下は泣くような声を出して、引き返す準備を始めた。
「船長、あの船、通信が届いた途端すぐに向きを180度変えて引き返しましたぜ。はは!良い気味でさぁ」
部下がそう言うと謎の通信が届いた。
『あと4年後にわれわれが、あの青く美しい星に到着する。お前たちがあと3年後に到着することは分かっている。悪いことは言わない。すぐに引き返せ。お前たちに勝ち目はない。あの星はわれわれのモノだ。引き返さぬ場合、お前たちの宇宙船を破壊する』
完