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プロローグ

 花びらが宙に舞う。

 その花びらを受けながら少女は軽やかにステップを踏み、裸足でステージを舞う。

淡い桃色がかった髪が光を纏わせ、彼女の動きに合わせてやわらかく跳ね、輝く。

 観客はコインや花束をステージに向かって投げ込んでいく。

 たんっと足音を立てて最後のポーズを決めると、盛大な拍手や口笛、彼女の名前を叫ぶ声が響いた。

「エレノーラ! ブラボー!」

「エレノーラ! エレノーラ!」

 エレノーラと呼ばれた少女は、息を整えながら深々とお辞儀をする。



***



 熱狂的な声がする。

 男性の声も女性の声もする。そちらに視線を向けると、どうやら小さな子供から年配の女性の姿まである。その視線の先には、煌びやかだが、いくらか布が少なく心許ない衣装を見に纏った少女がきらきらと輝く笑顔で群衆に手を振っていた。

 彼の視線に気づいた隣の同僚が「あぁ!」と声を上げる。

「彼女は、ここいらでは今一番人気の踊り子ですよ。名前はエレノーラちゃん。性別問わず人気なんです」

「そうなのか」

「ワタシも新しい衣装は初めて見ました! 巷では姿絵がバンバン売れてるんですよー」

 同僚の女性が嬉しそうに少女に手を振った。

(そんなことをしても彼女は気が付かないだろうに)

 彼がそんなことを思いながら同僚を見ていると、つい視線に気持ちが乗ってしまったのか、同僚は「はしゃいじゃってすみません」と頭を下げた。

「いや」

 それにしても目の奪われる輝きだな、と再び少女に視線を戻す。目のやり場に困る衣装である。

「もしかして、先輩もエレノーラちゃん気に入りました? ワタシのコレクションの姿絵を一枚差し上げますね!」

 そう言うと、肩にかけていたカバンからノートを取り出し、大事そうに一枚抜き取った。

「一番新しい姿絵ですよ! お守りにでもしてください」

 お守り? と思いながらも、彼は素直に受け取る。

 姿絵の中の少女も、群衆に囲まれる少女と同じ輝く笑顔だ。

 彼は不思議な気持ちで自分のカバンにしまった。

「じゃぁ帰りましょうか」

「もう見ていなくてもいいのか?」

「もっとエレノーラちゃんのキラキラを浴びていたいのですが、一番は踊っているところを拝みたいので、今日は大丈夫です」

「?」

 難しいことを言うな、と思いながら、彼らはその場を後にする。


 職場へ戻りカバンを開けると、先程の姿絵が目に飛び込んできた。

 彼は群衆に囲まれる少女の姿を思い出し、自分も踊っている姿を見たいものだなと机の引き出しにしまい込んだ。

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