曇天の中
いつから人は夢という悪魔を心に宿すのだろう。 夢を持つ以上、それはおおきな両手が自身の体を握りつぶすということにほかならない。 夢を持つ人間の瞳はビー玉のようにきれいで美しく、夢を持たない人間の眼はどす黒く、先の見えないトンネルのようだ。 私がまだ小学校で悪さばかりをしていたころ、私は警察官になりたいと思っていた。 母親と一緒にいったデパートの行き先、おじさんはいつも手を振ってくれた。その姿が当時の私には凛々しく、スマートでかっこよく思えたのだ。 優しくて強い、そして少しせんべいの匂いのするおじさんが私は好きだった。 そう、凄惨たる事変の起こったあの日も今日と同じような。 湿った息が通り抜ける雨の日だった。
「シャクッ、、ぴちゃっ。」
あっというたわごとを合図ににびくびくっと細胞がきしむのを私は感じた。 途端に目の前に壁がせりあがってきた。 胸が痛い。 腹が痛い。 そうか、、私は斬られたのだ。 数秒前まで細胞を生かしていた鮮血が無機質なキャンバスを色鮮やかに染めてゆく。
「だいじょっ、、きゅうk しゃ!!! !!! きゅう う しゃ!!」
体力には自信があったんだけどな、、(笑) 意外と神様は仕事上手らしい。 ほら。 黒い空がだんだん降ってきたんだからよ。 こういう時は嫁さんや自分の、、いやぁ、、、 なんてきもちいいんだろうなぁ。
今日は僕が楽しみにしていた日だ! お出かけだし、好きなリンゴジュースも飲める! しかも、瓶で!
お父さんもお母さんも、おしゃれしている。 みんなで楽しいおでかけだ。
今日のお昼はお弁当みたい。 大好きな戦隊ヒーローのおもちゃを片手に、車に飛び乗った。
少しして、建物についた。 お城みたいにでかかった。 人もいっぱいいた。 でもみんな楽しくなさそうだった。 母に連れられて僕は部屋に入った。 直感で、だめだと思った。 僕は聞いてみた。
「あそこのおじちゃん、たのしそうだよ?」 母はすこし考えた後、目を見ていった。
「ごめんね、、おじちゃんは長い旅に出たの。 だからもう会えないの」
お昼の時間が来た。 大好きなリンゴジュースはキンキンに冷えていた。 プリンもあった。 オムライスもポテトもあった。
でも、全部しょっぱかった。
あれから、十数年。 僕の夢はイラストレーターに代わっていた。 まだまだ人に見せられたものではないけれど、、
今度は僕の絵で。 誰かの飯をしょっぱくできればいいのになと僕は思っている。