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「次は私の番か。秘密というと難しいな……だが、婚約にはこの話は不可欠だな。私の以前の婚約の話をしよう」
以前の婚約とは第三王女との婚約だ。王女の一目ぼれだとか、お互い一目ぼれだとかさまざまなウワサが飛び交っていたがどうなのだろうか。今更、昔のウワサを思い出してゴクリと唾を飲む。
「世間のウワサは恋愛物語に仕立て上げられていると聞いているが、第三王女殿下との婚約は私の外見がお気に召したあちらからの強い要望で整ったものなんだ」
お互い一目ぼれというウワサは嘘だったようだ。
「私のことは自分で言うのもなんだがアクセサリー感覚だったのだろう。茶会でも夜会でもいろいろ連れまわされた。さすがに相手が王女殿下だから気を遣った。王太子殿下を狙ったあの事件後は『子供は欲しいし、傷物になった男はいくら綺麗でも婚約者としてはいらない』と言われてね。あぁ、そんな顔をしなくても直接言われたわけではない。婚約解消の話を持ってきた遣いがそう言っていた」
「いくら何でもその言い方は酷いですわ」
「不能騎士を連れて歩いても得にならないと思ったんだろうね。おかげで騎士仲間にはとても同情してもらえたよ。正直、王女殿下とは一緒にいるととても疲れるから不能になって婚約解消になって良かったと思ってるんだ」
「その婚約解消のおかげであの場で私に結婚を申し込んで頂いたので……でも王女殿下は酷いですわ」
「ルアーンにプロポーズしたときは不能云々の話はすっかり忘れてプロポーズしてしまったな。私は王族相手にあんなにはっきり言ったことがなかったからとても眩しかった」
「まぁ、それではもっと言っておけば良かったですね」
「あのくらいが尾を引かず丁度いいさ」
会話がポンポン続くのは楽しい。
出会ったのが昨日で今日初めてまともに会話したけれど、気が合うとはこういうことなのかもしれない。
「これからのことだが。ルアーンの母君が旅行から戻られたら挨拶をするとして。まずはうちの兄だな。そしてこれは王太子殿下からのアドバイスなんだが婚約解消と私達の婚約が成立次第、夜会などにはできるだけ参加した方がいいと。あの夜会の目撃者も大勢いるからすでにウワサは広まっているだろう。バートン公爵家でも対処しているが、見せるのが一番早い」
「そうですわね。私とウォルフ様が先に浮気していたなどとウワサされてはこれからが困りますもの。せっかくですから、第五王子殿下や第三王女殿下がいらっしゃるところにいろいろ行きましょう」
「第五王子殿下はしばらく謹慎だと思うが……君は強くて切り替えが早いな」
ざまぁはできなくても、元婚約者の驚いた顔くらいは見たい。
「せっかく良い人と出会えたのですから見せつけるのは当然の権利ですわ。デートもしたいところですが書類が整うまでは大人しく文通をしましょうか。それで参加する社交の場を決めていきましょう。あ、もし他の女性と行きたくなりましたらそう仰ってくださいませ。この前の騒動の夜会は王子殿下が『体調不良』だったので一人で参加してあんなことになったのです。ハッキリ仰って頂いた方が私、助かります」
「んん? 昨日の今日で恋や愛がすぐに芽生えるとは思っていないけど、ルアーン。もしかして……君って手ごわそうだね……」
「ちゃんとウォルフ様のことは好ましいと感じております。あ、ただ婿入り前から愛人は困りますよ? 王女殿下の婚約者だったので女性関係は恐らく大丈夫だと考えていますが」
ルアーンはあの夜会でプロポーズされた瞬間に計算していた。ウォルフがヴィクトル伯爵家を守っていく婿として好ましいかどうかを。不能も加味してたたき出した計算は「非常に好ましい」だったのだ。ただ、その計算をしたルアーンは父と母とその愛人の関係により普通の令嬢よりも価値観が狂っていた。
「私が知っている好ましいとは意味が違うかもしれないな……」
ウォルフが頭を抱えて何か呟いていた。