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「はぁ……」
「ルアーン、この間の夜会から帰ってきてため息ばかりじゃないの。一体どうしたの?」
本邸でお茶会をしてもいいのだが、ミカエラが肩身狭そうにするので離れで女三人のお茶会である。こういう図々しくないところもミカエラが嫌われない理由なのだろう。
ここ最近、ため息ばかりの娘を伯爵夫人は心配している。
「第五王子殿下にやり返すことばっかり考えていて、ウォルフが『不能騎士』って呼ばれて傷ついていることを失念していました。上っ面でしか分かってなかったというのか……」
「自分に対して落ち込んでるってことかい?」
「そんなところです」
自分に置き換えてみればすぐ分かることなのに、彼のことを上っ面でしか考えていなかった。以前の夜会で主催の伯爵に見せたあの表情。あれにウォルフの気持ちが詰まっていた気がした。
「ルアーン、それは仕方がないわ。他人の心を全部理解するのは難しいもの。だからコミュニケーションが大事なのよ」
「そうだよ、お嬢さん。それに、婚約者と手紙のやり取りばっかりで全然デートしてないじゃないか。会って話をしてお互いを知っていかなきゃね。それにしてもイイ男だったね」
「本当よ。惚れ惚れしてしまったわ」
以前のウォルフとの顔合わせを思い出したらしく伯爵夫人とミカエラのテンションが上がる。
「次期公爵夫妻にはもうご挨拶したのよね。でも現公爵夫妻はまだ領地にいらっしゃるから、帰ってこられる前に仲を深めておかないと。先に次期公爵夫妻と仲良くなってもいいし」
現公爵夫妻はまだ領地にいらっしゃる。事情を説明した手紙は送っており、この婚約にゴーサインはもちろん出ているのだが改めて顔合わせとなると気が重い。というか緊張する。
「今、デートはどういうのが流行りなんだい? 観劇や買い物? お嬢さんはあまり人混みが好きじゃないからやっぱりピクニックやどちらかの家で会う感じかい?」
ただでさえ落ち込み気味なのに現公爵夫妻との顔合わせの未来を考えて気が重くなっているルアーンをよそに、二人でえらく盛り上がっている。
そういえばウォルフは第三王女に付き合わされて疲れたと言っていた。あまり出かけるのは好きではないのかもしれない。
「ま、何にせよお嬢さんと婚約者が仲睦まじいのが一番だよ。不能になったからってさっさと婚約解消したどこぞの王女様をぎゃふんと言わせてやりな」
「そうね、それが一番の復讐になると言うものね」
「まともなデートってあまりしたことがないもの。何をしたらいいのか……」
第五王子と婚約していた時も定期のお茶会くらいだ。婚約が調って最初の頃は一緒に出歩きはしたが。
「これからまともなデートをしたらいいんだよ。お嬢さんはまだまだ若いんだから」
「ふふ。一緒に考えていきましょう。観劇や芸術鑑賞もいいわ。演目は何をやっていたかしら。とりあえず手紙を送らないとね」
離れでの茶会を終えると、ウォルフから手紙が届いていた。美術館へのお誘いだ。
「あら、向こうから誘ってくれるなんて良かったじゃない!」
母である伯爵夫人は我が事のように喜んでいる。
「ルアーンは私たち夫婦の関係を見てしまっているから、男性に頼ったり、一緒に支え合ったりって想像しづらいかもしれないけど。ちゃんとそういうことができる夫婦もいるのよ。それにはコミュニケーションが大切だからね」
「……はい。まず、手紙のお返事を書きます」
案外、私は単純なのかもしれない。デートのお誘いの手紙を貰って嬉しかった。さっきまで気が重かったのに、胸が少し温かくなった気がした。




