「第3回下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ大賞」参加作品シリーズ
助手のジョッシュとカセットテープ
ラジオ大賞3 参加作品です。
雪だるまジョッシュのシリーズとなりますので、他の作品もあわせてお楽しみくださーい。
俺は超売れっ子作家だ。
現在四つの連載を抱えているため、助手のジョッシュを雇ったが、雪だるまだった。
イケメン外国人風の名前だが、バリバリの日本人らしい。バリバリってなんだっけ?
暖房をすると溶けてしまうのが難点だが、それ以外は超有能な万能雪だるまだと思う。実際、とても助かっているのだから。部屋の中が外よりも寒いけれど。
「先生、大掃除大体終わりました~!!」
「ご苦労さま、ジョッシュ」
年の瀬も近くなり、毎年大掃除に頭を悩ませていたものだが、今年はジョッシュがいる。
天井の埃まで綺麗になって、実に空気が美味い。ジョッシュが溶けないように真冬にもかかわらず窓を全開にしているせいも多分にあるが。
まあ流行りの感染症には換気が有効なのだ。少しぐらい厚着をすれば良いだけの話。
「先生、これなんですか? 片付けていたら大量に出てきたんですが……」
「おおっ、カセットテープじゃないか!!」
懐かしさが込み上げてくる。
「カセットテープ? 何ですかそれ?」
「なんだ、ジョッシュは知らないのか? 昔はこれに音楽やラジオを録音していたんだよ」
「つまり……蓄音器ですね?」
蓄音器を知っているのにカセットテープを知らないとかあり得るのだろうか? いや、雪だるまだからあり得るのかもしれない。
「あ~、でも残念だな……カセットテープを再生できるプレーヤーが無い」
去年全部処分しちゃったんだよな……。さてどうしたものか。
「再生したいんですか? 出来ますよ」
「……へ? どうやって?」
「私の口に差し込んでください。再生されます」
そうか、その口はカセットデッキだったんだな。カセットテープ知らなかったのに再生出来るなんて、すごいぞジョッシュ。
「ちなみにビデオテープも再生できます」
そうなのか。もはや何でもありだなジョッシュ。
学生時代に戻ったような、ワクワクする高揚感に戸惑いつつも、ジョッシュの口デッキにカセットを挿入する。
ジョッシュのハイライトが消えた真黒な目が赤く光って、音楽の再生が開始される。
「うーん……ちょっと音量が小さいな」
「音量の調節は、ほっぺたをつねってください」
意外だがジョッシュの雪肌ほっぺは大福のようなもちもちのぷにぷにほっぺ。
「……痛くないっ!? これはもしや夢?」
定番のボケをありがとうジョッシュ。俺にとっては夢のような時間だよ。
歌手の声がお前じゃなければもっと最高だったんだがね。
週末に新しいプレーヤー買いに行くことが決定した。