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短編(ヒューマンドラマ)

或る男の懺悔

作者: 御厨カイト


なぁ、刑事さん。

俺はなぁ実は人を殺したことがあるんだよ。


そんなお前何言ってんだみたいな顔をしないでくれよ。

本当なんだって。

ちょっと話したくなったから聞いてくれよ。

これ以上罪を増やすなだって?

まぁいいからいいから。



俺はなぁ、これでも小学生とか中学生の時には「天才」とか「神童」とかって呼ばれてたんだよ。

いや、嘘じゃないって、本当なんだって。


それでさ、運動もすごくできたし、テストも100点を取らなかったら逆にクラスのみんながびっくりするような感じだったんだよ。


そのおかげというか何というか親にもじいちゃんばあちゃんにもすごく可愛がられていたんだよな。

父さんは自分の会社の経営でとても忙しかったからあまり話す機会はなかったけど、じいちゃんなんかは地主さんですごくお金を持っていたからよくお小遣いとか貰ってたんだ。


そんな結構人生勝ち組みたいな毎日を送っていた俺だったんだがな、ある日を境に歯車が狂い始めたんだ。



父さんの会社が倒産したんだよ。

駄洒落なんかじゃないぞ。


ずっと自分の会社の経営に命を懸けていた人だったから、急にそのものが無くなっちまって生気のようなものが無くなっちまったんだよ。

いつもため息ばかりでドヨーンとしていてさ。

でもさ、俺的にはいい機会だと思ったんだよ。

ずっと仕事しか興味を示さなかった父さんが今度は俺にもちゃんと接してくれるようになるんじゃないのかなってね。


だが、そう思っていた矢先、父さんはあるものにハマり出したんだ。


ネトゲだよ、ネトゲ。

刑事さん、ネトゲって知ってるか?



そうそう、昨今よく言われるオンラインゲームとかのことな。

有名な奴で言えば「モン〇ン」とか「原〇」とかかな。

あぁ、そこまでは知らないか。

まぁ、そういうやつがあるんだよ。


それでな、父さんもそう言う類のゲームにのめり込むようになっちまったんだよ。


収入の面はどうしたのかって?

これが実は心配が無かったんだよな。


なんでかというと地主だったじいちゃんばあちゃんが死んじまって、それで莫大な遺産が残ったんだよ。

マジで莫大すぎてこれから当分は全然仕事しなくても、家族3人生きていけるぐらいの額だったんだ。



そんなわけで父さんは四六時中パソコンの前に座ってネトゲをするようになった。

最初は母さんも俺も今まで仕事頑張ってきたから好きにさせてあげようって思ってたんだけど、流石に2,3週間ぐらいロクに睡眠も食事もとらず、ずっとネトゲをする父さんを見て、これはヤバいと思ってちゃんと睡眠も食事も摂ってもらうように父さんに注意したんだ。

そしたら、意外にも父さんは大人しくその注意を聞いてちゃんと睡眠をとるようになったし、食事も家族3人でとるようになった。

相変わらず、そこで父さんが話す話はゲームの話で全く分からなかったけどな。


だけど、その1か月後にはもうネトゲ三昧の日々に戻っていたんだ。

いつも見ても父さんはパソコンの前でネトゲをしている。

睡眠はどうか知らんけど、食事は母さんがいつもおにぎりとかを父さんの横に置いている。

それもふとした瞬間には無くなっているからちゃんと食事はとっているようだった。


そんな父さんにしびれを切らしたのか母さんは「お父さんと話し合いをちゃんとしておくから安心して学校に行っておいで」と学校に行く前の俺にそう言った。

母さんがちゃんと言えば、父さんも流石にやめるとは言わないがちょっとぐらいは家族との団らんの時間が取れるようになるんじゃないかと予想していた。



違った。

家に帰った俺が見たのは父さんと同じようにパソコンの前でネトゲをする母さんの姿だった。

そう、母さんは逆に父さんに言いくるめられてしまったようだった。

これぞまさにミイラ取りがミイラになるってやつだな。

お、この言葉が使えるっていうことは俺って賢くね。


まあいいや。

それでそんな光景を見た俺は愕然としたわけよ。

そりゃそうだろうな、なんてたって俺が学校に行く前にあんなことを言っていた母さんが逆に父さんに言いくるめられちまったんだからな。


それからの日々は地獄だったよ。

朝起きたら、ネトゲをずっと寝ずにやり続けている両親をしり目に母さんも料理をしなくなったから買っておいた菓子パンを食って学校に行き、そして帰ってきたらスーパーに晩飯買いに行って、でその晩飯を食って、父さんたちの机の横にもその晩飯を置いて、風呂に入って寝る。

たまにネトゲの中のクエストに駆り出されて、ゲーム内通貨とかを稼がさせられたり。

そんなクソみてえな毎日だったよ。


そんな毎日を送っていた俺だったけどな、父さんたちも日々、効率を求めてプレースタイルが変わっていくんだよ。

飯を食っている時でさえゲームがしたいのか左手でマウスを操作しながら右手でカレーを食ったり、最終的にはトイレに行く暇すらめんどくさくなったのか、いつも座っている近くにバケツを置いて、そこにゲームをしながら大とか小とかをするんだよ。

流石に母さんはしなかったけどな。

そんでそのバケツに溜まった大とか息子である俺がトイレに流しに行くんだ。

何が嫌で父さんの大とかをトイレに流しに行かないといけないのか。


流石に俺もこんな生活はもううんざりだと思うようになった。

だけど、父さんたちに話しかけても父さんたちは返事もしてくれない。


そんな時俺はあることを思いついた。

父さんたちがハマっているネトゲのセーブデータを消してしまえば、父さんたちも目を覚ますんじゃないのかってね。

そう考えた俺は早速実行に移すことにした。


俺は学校のコンピュータ室でゲームのセーブデータを破壊するウイルスを作ることにした。

その当時は頭が良かったから、あまり苦労をせずにウイルスを作ることが出来た。

あとはこれを遠隔で父さんたちのパソコンに入れてセーブデータを破壊するだけ。


そうして、俺はとうとう実行に移すことにした。

朝、いつも通りパソコンの前でネトゲをしている父さんたちを見ながら学校に行って予め、父さんたちが席を外したときなんかに仕込んでおいたウイルスを遠隔で操作してセーブデータを破壊させる。

うまくいったよ。

これで父さんたちのセーブデータは全部消えた。

これで父さんたちも目が覚める。

やっと家族みんなで一緒にご飯を食べて楽しく話せる。

やっとちゃんとかまってもらえる。


そんなことを思いながら、俺はルンルンと家に帰ったわけさ。




死んでいたよ。

父さんと母さんは仲良く首つって死んでたよ。

唖然した俺だったけど、2人が自殺した理由がすぐに分かった。

いつも2人が使っていたパソコンの画面には見慣れたネトゲのホーム画面と「お使いのデータはすべて消去されました」っていう文字。


2人は自分たちが住んでいた「世界」が消えたから死んだんだ。



それからのことはあまりを覚えていないなぁ。

だけど、この件が自殺で処理されたことは知っている。


自殺?


違う!


2人は俺のせいによって死んだんだ。

俺がただかまってほしかったから。

俺がただ今までのように家族と楽しく話したかったから。

俺がただ褒めて欲しかったから。

そんなことを望んだ俺の手によって2人は死んだんだ。


これはただの自殺なんかで処理されていいものではない。

そう思うだろ、刑事さん。


いまさらそんなことを言ってももう処理されたことなんだから仕方がないだろだって?

刑事さんは冷静だねー。


ああそうさ、その通りさ。


これは誰が見ても自殺だと考えるだろうして、俺が可哀そうだと思うだろう。

だけど、違う、そうじゃない、そうじゃないんだ。


これは俺が余計なことをしなければ、こんなことにはならなかったかもしれないだろ。


元々、そんな家庭はおかしいだって?

確かにそうかもしれんがな。



はぁー




まあいいや


刑事さんに聞いてもらってなんかすっきりしたわ。


それで何だっけ、今のスピード違反についてだったけか。










皆さんこんにちわ 御厨カイトです。

今回は「或る男の懺悔」を読んでいただきありがとうございます。


読んで「面白い」とか思っていただけたら、感想とか評価のほどよろしくお願いいたします。

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