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ゲームか?現実か?  作者: howari
3/3

ゲームオーバー?

小さな勇者を食べるのに夢中になった。自然とお腹が膨らんでいく感覚がし、口の中には血肉の味が広がる。ニタニタしながら頭がおかしくなった、と思いながらもゲームを進めていくと……大きな勇者2人にぶち当たる。




〝ラスト勇者2人の名前を入力して下さい〟



ラスト?ついにラスボスか?

2人と言ったら、俺を虫けらの様に扱って育てたアイツらの名前しかないだろう。

憎いあの2人の顔。



〝タカシ〟

〝ミユキ〟

両親の名前を入力。


 


2人はなかなか倒せなかった。俺は両親が振るう剣に切られ、気を失いそうになる。

痛い、痛い、痛みで気絶しそうだ。

これはゲームだろ?どうして痛いんだ?

意識が遠のいていき、俺は瞼を閉じて倒れ込んだ。




 


「……シ?」



「タケシ?」



父さん?母さん?




目を覚ますと、目の前には勇者の格好をした2人。右手には剣を握っている。2人とも何故か涙を流して泣いている。

 


「ごめんなさい、タケシ」

「ごめんな、タケシ」


「最低な親でごめんなさい」

「暴力を振るって悪かった」


「あなたが嫌いだなんて言ったけど、本当は愛しているのよ。嘘をついていてごめんなさい」

「本当は愛しているのに、お前をずっと傷付けていた。嘘つきで最低な親ですまん」



「どうして、今更……」



「ごめんなさい」

「ごめん」

 


2人は俺目掛けて、剣を振り上げる。


俺も鋭い爪を振り上げ、鋭い牙を出す。


涙が溢れ落ちて、胸の奥がぎゅっと痛む。

両親を殺したくない。でも腕が勝手に動いてしまう。

鮮やかな血飛沫が上がる。どちらのものか分からないぐらい、大量に飛び散る。



「グワグワグワ……」

倒れながら変なうめき声が出る。俺は本当に悪魔になってしまったんだ。



イソベ社長は俺を育てようと、本当は愛のムチをくれたのに。アユミだって、俺を本当に愛していたのに。

全ては俺の被害妄想のせいだ。

そんな2人を俺は、食べてしまった。



倒れている俺の背中に、父さんが剣をひと突きした。振り返ると父さんは苦しそうに泣いている。このゲームに勝手に参加させてしまったのは俺だ。ごめんなさい、父さん、母さん。

口の中に血の味が広がるのを感じながら、瞼をゆっくり閉じていった。



  



ん?


目覚めると、また両親が剣を持って立っている。たくさんの涙を流しながら。

  


ゲームだから……

ゲームオーバーにならない?

ずっと痛みを味わうのか?

いやだ、いやだ、そんなのいやだ!


 


誰かが向こうでコンティニューを押している。



俺は画面を見つめながら叫んだ。



「グワグワグワワワ!!」



助けてくれ!

ここから出してくれ!



この声は誰にも聞こえない。



俺はゲームの中で、永遠にコンティニューさせられる。




the end



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― 新着の感想 ―
[一言] 面白かったです! 人を憎めば、自らに帰ってくるってことですかね……。
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