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そっと恋して、ずっと好き  作者: 朱ウ
そっと恋する一年生編
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クリスマスのご予定は?2

 月曜日、深雪は登校してすぐに成瀬へと話題を提供した。


「クリスマスの予定?」

「うん。 空いてる日無いかなって」


 深雪がそう尋ねると、成瀬は「そうねえ」と言いながらスマホのスケジュール表を確認した。


「二十五日は、母親主催のパーティに参加しないとうるさいし。 二十四日は千太郎、バレー部の助っ人じゃなかった?」

「うん」


 成瀬の確認に、千太郎がだるそうに頷く。


 恵まれた体格と、万能な身体能力はどこの部活でも引っ張りだこだ。当の本人のやる気が伴っていないのが玉に瑕だが。


 自分とは違い、二人は予定が詰まっているらしい。


 深雪が「そっかあ」と残念そうに肩を落としていると、成瀬が小さく首を傾げた。


「何よ、何かあったの?」

「実はねえ・・・・・」


 深雪は成瀬と千太郎の二人に、この日曜日に起きたことを説明した。


 日路の姉に会ったという話辺りで、既に興味津々になっていた成瀬が、クリスマスの予定を日路と合わせようとしているところの話のところで、驚きに目の色を変えた。


「大神先輩のお姉さんのお店で、クリスマス会!? その約束を深雪が取り付けてきたってこと!?」


 信じられない、と驚愕する成瀬。あまりに大きなリアクションに、深雪は少しだけ気後れして、口をもごもごとする。


「いや、未だ決定ではないんだけど・・・・・」

「ちょっと待って」


 深雪の言葉を遮って、成瀬が真剣な顔つきでスマホの画面と睨めっこする。


「二十三日! 二十三日の昼間なら、私も千太郎も空いてるから! というか、こじ開けるから!」

「俺の予定まで勝手に・・・・・」


 隣で眉を顰める千太郎に発言権は無いと、成瀬が勝手に日程を決めてしまう。


 深雪は喜んで、早速自分もスマホを取り出した。


「本当? じゃあ、大神先輩に言ってみるね」


 にこにこでスマホを弄る深雪の姿を見て、成瀬が涙目になる。


「深雪が、大神先輩とクリスマスの予定を合わせている・・・・・成長してるっ」

「羽澄は立花の母親か何かかよ」


 千太郎が成瀬に突っ込みを入れるのに笑いながら、深雪は日路へとメッセージを送った。





━━━━成瀬ちゃんと双葉君、二十三日の日中なら開いているそうです━━━━


 教室で深雪からのメッセージを確認した日路は、丁度登校してきたばかりの頼来に声をかけた。


「おはよ、頼来。 あのさあ、二十三日って空いてる?」

「おはよ・・・・って、なんか唐突だな。 まあ、多分空いてるけど」

「実はさあ・・・・・」


 日路が経緯を説明すると、頼来が驚きに感嘆の息を漏らした。


「日路が、深雪ちゃんとクリスマスの予定をなあ・・・・。 時代は変わったな」

「頼来、何の話してんの?」

「いや、別に。 成瀬は泣いて喜んでるんだろうなと思って」


 しみじみと頷きながら腕を組む頼来に怪訝な顔を向けながら、日路が話を続ける。


「成瀬と双葉も、その日なら空いてるらしいし。 頼来も一緒に行ければさ」

「行く行く」


 頼来の了承を聞いて、日路はもう一度スマホと向き合った。


「じゃあ早速、杏姉に連絡しとこ」


 そう言いながら、杏香にメッセージを送る日路の傍らで、頼来が懐かしそうに表情を緩める。


「杏香さん、最近会ってないなあ。 変わらず美人?」

「そこは、元気? って聞けよ」


 頼来に突っ込みを入れつつ、日路はあることを思い出していた。


 そういえば、杏香には蓮季と千里も連れて来いと言われていたのだった。声だけでもかけておかないと、後で杏香に責められてはたまらない。


「あのさ、八人までなら個室OKって言われてるんだけど、蓮季達も誘ってみて良い?」

「よいよい」


 二つ返事で快諾する頼来。


 更に深雪たちにも確認しようとした日路に「あいつらは絶対良いって言うから聞かなくていい」と頼来が首を振る。



 まあ確かに、知らない仲ではないから良いか。



 日路が知らないところで、特に蓮季とは親交を深めているらしい。


 そう思いながら、日路は兄弟で組んだグループ会話に、メッセージを送信した。





━━━━二十三日、杏姉の店でクリスマス会やるけど

    二人とも来る?友達誘ってもいいよ━━━━


 そんなメッセージが、日路から送られてきたのを確認した蓮季は、隣の席に座っていた黒田に話しかけた。


「ねえ、バメちゃん。 二十三日の昼間って空いてる?」

「ん?二十三日?空いてるよー」


 黒田は、ぶかぶかな制服の袖を邪魔そうにしながら大きく手を挙げた。


 くりくりとした目が、話の続きを促してくる。


「姉が働いているレストランで、クリスマス会やるんだけど、バメちゃんも来ない?」

「クリスマス会? おいしいもの食べられる?」


 幼子の様にキラキラした目で聞いてくる黒田に、蓮季が肩を揺らして笑う。


 杏香の働くレストランのホームページを調べて、料理の写真を見せれば、黒田は更ににこにこになった。


 日路が誘ってくるということは、恐らく頼来も一緒だろう。そう推測して、蓮季は黒田にお伺いを立てる。


「バメちゃんが知らない人も交じってると思うけど、それでも良ければ」

「行きたい行きたい。 おいしいご飯食べたい!」


 人見知りゼロの黒田は、既に料理の方に興味が向いている。頼来相手なら、きっとすぐに仲良くなることだろうと蓮季が思っていると、日路から続きのメッセージが送られてきた。


 既に決まっているメンバーを知らせてくれた様で、その中には頼来は勿論、知った名前が並んでいた。


「この前会った、立花さんたちも来るって」


 蓮季の言葉に、黒田が一段とにっこり微笑む。


「じゃあ、楽しくなりそうだね」

「だね」


 蓮季も同じ様に微笑んで、楽しいクリスマスになりそうだと、早速日路に返事を送信した。





 兄二人のメッセージのやり取りに気が付いたのは、昼休みになってからだった。


 基本的に校内でスマホの使用は禁止なので、千里は教室の後ろの席でこっそりと内容を確認していた。


 日路から来ていたメッセージは、二十三日にクリスマス会を杏香の店でやるというものだった。既に決まっているメンバーの連絡に続いて、蓮季の返事も入っている。



━━━━友達一人連れて行くね━━━━



 どうやら、蓮季は参加するらしい。


 千里は今一度、メンバーの名前を確認した。


 頼来が来ることは最早確認するまでもないが、千里は“立花”の名前に眉を顰める。


 最近、日路の口からその名前を聞くことが、更に増えてきていた様に思っていたところだった。


 付き合っているということは無さそうだが、今まで日路の口から特定の異性の名前が出ることはほぼ無かったことを思うと、ただの後輩とも思えない。


 ふと、学校見学で出会った立花深雪を思い出してみる。


 すると、彼女の冴えない印象とともに、日路から態度の悪さを叱責されたことを一緒に思い出してしまって、胸糞が悪くなった。


「サッカーあるし、俺はパス」


 言いながら、ほぼ同文のメッセージを送信する。


 独り言が思いのほか大きな声になっていたようで、前の席に座っていたクラスメイトが訝し気な顔を向けてきた。


「大神? パスって何の話だ?」

「なんでもねーよ」


 ぶっきらぼうに返しながら、千里はスマホを鞄に放り込んだのだった。


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