2.おかんスキア
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短めですがご容赦ください
ここは魔法学園。建国して間もない頃から存在する由緒正しい名門校である。
ほぼ全ての王侯貴族だけでなく少数ながら庶民も受け入れるその学園に、今日足を踏み入れるものがいる。
「いいですか!1人でなんでもやろうと無理しないこと、何かあったら容赦なくすぐに俺を呼ぶこと、荷物はとりあえずリビングに置いておきましたのでこの後の移動は…」
「ああもう!うるさいわね。お前はわたくしの母かなにかかしら?」
「だって姫さん…味方なんてほとんどいないじゃないですか」
それは、まあ、そうかもしれないけど…ともごもごと文句を言うのはこの国の第一王女、ユリアナ。狂い姫と名高い彼女はその評価からすればありえないような可憐さで従者に言い負かされていた。
「とりあえず、この王族専用寮にはアルファくらいしかいないんですから困ったらすぐ呼んでくださいね!」
「わかったわよ!呼べばいいんでしょ呼べば。アルファ、こいつ追い出してちょうだい」
「はいはい、姫様も兄さんも喧嘩しない。仲良くなさってください」
ユリアナの唯一の侍女、アルファはスキアと同様ユリアナの事情を知る人間の1人。
それもそのはず、アルファはスキアと同じ黒目黒髪。彼らは兄妹であった。
「とりあえず俺は自分の部屋に行くので無理はなさらないこと!ダメだと判断したらこの建物内に俺の部屋ができると思ってください」
「わかったって言ってるでしょう!早く行きなさい」
「そもそも俺も髪と目の色を誤魔化している都合上姫さんのところの方が楽なんですけど」
「やかましいったら!だからわたくしがわざわざ二人一部屋のところを個室で用意してあげたんじゃないの。アルファ、この無礼者を外に追い出しなさい」
「かしこまりました。兄さん、あなた心配のしすぎでちょっとうざいです」
「うざ…」
アルファがスキアを追い出したことでようやく王族専用寮に静寂が戻ってきた。
「さて、兄さんもいなくなったことですしお召し替えをしましょう。これから入学式とのことです、しっかり着飾らなくては」
「…面倒だわ」
「姫様」
「わかってるわよ、アルファに任せるわ」
「かしこまりました」
御前失礼致しますとアルファはユリアナの服を脱がせる。
一糸纏わぬ姿になったユリアナには無数の傷跡があった。
「………」
「何を黙っているのよ、今更でしょうこんなもの」
「しかし…」
「…お母様との唯一の繋がりなの。これは」
大切そうに、悲しそうに傷跡に触れるユリアナは今にも散ってしまいそうなほど儚く見えた。
普段のイメージを作るためにユリアナは無理をしすぎている。それをアルファは改めて思い出すも、主人の望みのためにやめろとは言えない。
「ほら、早く着せてちょうだい」
「はい…失礼いたします」
王族専用寮には先ほどとは同じで全く違う、重い静寂が立ち込めていた。
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次の更新は明日18時です