表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
三国羅将伝  作者: 藍三郎
72/178

第十三章 伝説の終焉(六)

「がはっ!」


 岩壁へ背中から叩きつけられる夏侯惇。

 獣人将と化した高順は、屈強な肉体を得たことで至近距離においても死角が無くなった。

 黒翼の投擲を織り交ぜた猛攻に、夏侯惇は完全に劣勢に追いやられている。


「はぁぁぁぁぁっ!!!」


 鬼面の形相で襲い掛かる高順。

 夏侯惇に対して、圧倒的な優位に立ちながらも……


 焦っているのは、彼の方だった。


 曹操軍の狙いははっきりしている。

 彼らは、呂布から自分達を切り離し、先に殲滅する策に出たのだ。

 

(呂布将軍ではなく、我らならば楽に始末できると思ったか、曹操……!)


 実際、追い込まれているのは否定できない。

 荒れ狂う激流の洗礼を浴び、高順の部隊は壊滅寸前だ。

 この分では、既に下丕城にも手が回っているだろう。

 これだけの思い切った策を講じてくる相手だ。

 難攻不落の下丕城といえど、安心はできない。

 いや……高順は既に、下丕城の命運すら絶望視していた。


「見事だ、夏侯惇……いや、曹操!

 我が魔獣騎馬隊はもはや壊滅したも同然!

 呂布軍も程無くして空中分解するであろう!!」

「はっ……負けを認めるってか? ならとっとと死ねや!!」


 夏侯惇が飛び出した直後、赤く膨張した腕から、黒翼を投擲する高順。

 彼は素早く足を止め、岩塊を切り裂くその刃を、紙一重でかわしていく。

 かつて左眼を失った戦いから、少しは学習しているようだ。


 その隙を狙って、一気に距離を詰める。

 放たれた拳が鎌と激突し、眩い火花を散らす。


「だが……だがッ!!

 呂布軍が滅びようと、呂布将軍は滅びぬ!

 ただ一人になろうと必ずや貴様達を血祭りに上げるだろう!

 私はそれを見届ける! あの御方の傍で戦い続けるために……私は戦う!」

「てめぇは、どこまでも呂布と一緒に戦いてぇから戦うってのか!」

「その通りだ……! あの御方が求めるのは強さのみ!

 だからこそ、私もどこまでも上を目指すことができる!!

 貴様のような、命令に従うだけの曹操の駒とは違うのだ!!」


 黒翼が、夏侯惇の肩を切り裂く。

 流れる血が、ぬかるんだ大地を赤く染める。

 

「そうかい……じゃあ……」


 肩を襲う激痛に怯むことなく、大地に根を張る樹木のように不動の体勢を崩さない夏侯惇。

 肩の傷だけではない……既にあばら骨は何本か折れ、内臓にも損傷が見られる。

 もはや満身創痍のはずだが……

 夏侯惇は大鎌を構え、更なる闘志をむき出しにする。



「お前は、俺に勝てねぇよ」



「ほう……」

「偉そうなことを抜かしてんじゃねーよ。

 てめぇは単に将の責任から逃げてるだけだろうが」


 口許にいつもの不敵な笑みを浮かべ、高順を挑発する。


「呂布は確かに強ぇ……けどな、俺は奴を凄ぇとは思わねぇ……

 もっと凄ぇ奴を、俺ぁ知っているんでな」

「曹孟徳か……奴が呂布将軍に優るだと……?」

「おうよ。野郎の時代はもう終わった……

 曹操あいつにとっちゃ、呂布やつもただの踏み台に過ぎないだろうぜ」


 どこか愉しげに語る夏侯惇の口調からは、曹操への全幅の信頼がうかがえた。

 高順にとっては、ただ不快でしかないが、あえて問う。


「主君が優っているから、貴様も私に勝てる。そう言いたいのか?」



「な、わけねーだろ!」



 だが、夏侯惇から返ってきたのは想像とは真逆の返答だった。


「勝つも負けるも、戦場での生死は全て自分てめぇ一人の責任だ。

 他の誰のせいでもねぇ……主君のせいでもねぇ……」


 乱世を生きる意志も、覚悟も、全ては自分一人で背負うべきもの。

 曹操軍は巨大な集団の武であると同時に、その根源はやはり個々の人間なのだ。


 曹操軍を支えているものは、将兵一人一人の意志の高さだ。

 最前線で血を流す将軍だろうと、卓の上で策を練る軍師だろうと変わりない。

 各々が各々の未来を見据えて戦っている。

 それでいて、勝利へ向かう意志は皆同じ。

 

 違う存在であり、同じ存在。


 そんな人間の本質を取り入れているからこそ、曹操軍は強いのだろう。


 夏侯惇はよくそれを理解している。

 曹操を支え、同時に支えられているという自負が、夏侯惇に力を与えるのだ。


 ただ一人で天下と向かい合う気概無くして、曹操の将たる資格はない。

 曹孟徳とは違う道を行きながらも、同じ場所で天下を見る。

 それこそが、真の意味で曹孟徳に仕えることなのだと夏侯惇は信じていた。


「てめぇは一人で戦っているつもりだろうがな、

 結局呂布の強さにべったりなだけで、何も考えずに生きているだけだろうかよ」


 高順は、声と体を震わせて答える。


「黙れ……それが……それがどうした!

 “強さ”のためならば全てを捨てる! それが私の生き方だ!

 貴様などに、否定させはしない!!」


「おお、そうだな」

「何……?」

「さっきのは単なる売り言葉に買い言葉だ。

 てめぇの信念なんざどうでもいい……

 呂布を追いかけるために強くなる……それも一つの道だろ。

 そいつを支えにして強くなれるんなら、幾らでも縋り付けばいいさ。

 高順……それがお前だよ」


 一転して高順を認めるような発言に、高順は面食らう。


「けっ……孟徳の喋り方がうつっちまったか……」


 夏侯惇は、自嘲するように吐き捨てる。


「とにかくだ!孟徳も呂布も関係ねぇ……

 夏侯惇おれ夏侯惇おれで、高順おまえ高順おまえでしかねぇんだ。

 大体、信念“なんぞ”で勝敗が決まるほど、戦いってのは甘いもんじゃねぇだろ」

「………………」


 夏侯惇の言葉を聞き、高順は頭の中の熱が冷めていくのを感じた。

 いかなるものを背負っていようと、戦場で相対した以上は互いに一個の武でしかない。

 どれだけ言葉を尽くそうと、立ち会うまでは勝敗はわからない。


 自分は、強さと言う言葉に囚われるあまり、闘争の本質を見失っていたのではあるまいか……


 改めて夏侯惇の隻眼を見つめる高順。

 この男が放った言葉の意味。それは、自分の信念を揺るがすためではなく……

 無駄な焦りや力みを取り払うためだったのではなかろうか……


 万全の状態の自分と立ち会うために……

 

 高順は、すっかり変わってしまった声で、高らかに笑う。

 いつ以来だろうか。こんなに清々しい気分になったのは。


(認められる喜び……なるほど。

 曹操軍の者達はこれを求めて、曹操の下に集まっているのだな……)


 それを理解したところで、呂布と共に歩もうとする信念は揺るがない。

 目の前の男との戦いを、避けるつもりも毛頭ない。


「夏侯惇! 貴様は本当に馬鹿正直な男だな!!

 全く持って曹操に相応しくない男だ!!」

「てめぇこそ、呂布なんぞよりこっちに来た方が、よっぽど似合ってそうだぜ!」

「そうだな……」

 

 曹操の下で、精強な軍を率いて、緻密な軍略と共に戦う。

 確かにそれでも武人として満足の行く生を得られるだろう。


 だが、自分はあの男に、呂布に出逢ってしまった。


 彼の放つ最強の輝きは、全てを賭して見届けたいと思うほどに高順を魅了した。

 今となっては、それも己の人生の一部だ。

 自分で選び、進んで来た道だ。ならば、最期までその道に殉じよう。


「しかし、だからこそ、私は呂布将軍と同じ道を行く!」


 呂布の為ではない。彼は、誰も欲してはいない。

 あくまで、自分自身のために戦うのだ。



「俺もだよ。何かと腹の立つ御主人様だが……」

 

 曹操がそんな男だからこそ、自分は彼の下にいる。

 直情な自分には無い、複雑怪奇にして人間離れした思考。

 戦場の最前線に立ち、敵を屠ればそれでよしとしてきた夏侯惇にとって、曹操とは本来相容れない存在に思える。

 まだ、呂布の下でひたすら戦に明け暮れていた方がずっと自分らしいだろう。


 彼の覇道は予想のつかないことばかりで、その人格は共感とは程遠い。

 

 されど、だからこそ、面白い。

 彼と共に歩む道は、新鮮な刺激に満ち溢れている。


 この男となら、ただ思うように生きていては得られない、己の及びもつかない生き甲斐を感じさせてくれる。



「俺にとっちゃ、曹孟徳は最高の主君だよ」



 あえて言葉にする必要もなく……二人は互いが似た者同士であると理解していた。

 お互い、自分に無いものを求めて今の主君を選んだこと。

 そして、もはやそれは決して譲れない自分の生き方と化していることも。


 だからこそ、絶対に負けられない。

 二つとない、自分だけの道なのだから。


「早い話がよぉ! 俺はお前より強い!

 だから俺が勝つ! それだけだぁ!!」


 大鎌を持ち、何の根拠も無い口上をぶちまける夏侯惇。

 大義も、友情も、信頼も、忠誠も、

 抑え切れない闘争本能も……その全てが混在しているのが夏侯惇だ。


「もはや言葉は要らぬ……

 ただ、貴様との決着をつけるのみ……!」


 高順もまた、ただ一人の高順として、最後まで戦い抜こうとする。

 


 気魄は双方互角だが、戦況は明らかに夏侯惇に不利だ。

 彼は既に満身創痍で、崖下に追い詰められている。

 一方、獣人将となった高順は、体力、気力共にますます充溢している。


 しかし、夏侯惇の威勢はまるで裏づけが無いわけではない。

 彼にはまだ、“奥の手”が残されていた……




 高順の腕が、大きく膨れ上がる。

 両腕を肩の後ろに回し、筋肉のバネを限界まで引き絞る。

 体内の幻獣の細胞が、活性化しつつある。

 高順も、眼前の敵を討ち果たすことにのみ意識を収束させていく。


「はっ!」


 体内の気を全て吐き出すような発声と共に、二枚の黒翼を投擲する。

 かつてない速度で飛翔する三日月型の翼は、大きく弧を描いて、左右両面から標的を襲う。

 夏侯惇も、大鎌を手にこれを迎え撃つ。


 岩壁を背にしたのは、追い詰められたからではない。

 退路を塞ぐことで、背後からの奇襲を無くすためだった。

 これまでの戦いは、防戦一方ながらも意図的に崖の下へと移動していたのだ。


 夏侯惇は、その気質こそ直情的ながらも、

 戦場に身を置けば、実に冷静に策を弄すことのできる男だった。

 その点は、従兄弟の夏侯淵によく似ている。

 そんな性格だからこそ、彼は曹操に重用され、一軍の指揮を任せられているのだ。


 高順の黒翼の恐ろしさは、標的を取り巻く空間内のありとあらゆる方向から襲ってくる点にある。

 まるで、球形の部屋に閉じ込められ、頭上を含めた壁にびっしりと銃口が備え付けられ、どれがいつ発砲されるかわからない状況のようだ。

 しかし、崖を背にしたこの位置ならば、前後の選択肢が消え、上下と左右に専念して迎撃できる。

 球形の密閉空間が、半球になった。


 選択肢が二分の一になれば、視界に捕らえられなくとも、対応することは十分に可能……!



 黒翼が以前より勢いを増したことで、風を切る音がより鮮明に聞こえる。

 そして、夏侯惇の聴覚は、以前よりも発達していた。

 

 かつて、高順の策で夏侯惇は片目を失った。

 彼はそのことを恥じ、何としても以前の強さを取り戻そうとした。

 しかし、格下の雑兵ならばいざ知らず、強敵を相手にすれば、視界の狭さはやはり致命的な弱点となる。

 

 失った片目は取り戻せない。

 残った目に頼って戦うのも限界がある。

 それゆえに、夏侯惇は、視覚に頼らない強さを求めるようになった。


 彼は、戦場を離れた場所では、常に片方の目も閉じて生活するように努めた。

 不自由な日々の結果、彼の視覚を除く六感は、著しく発達した。

 

 空気の香りを嗅ぎ、風の音を聞き、全身の感覚で物を見るのだ。

 今となっては、夏侯惇は眼を閉ざしていても生活に何ら支障が無い域にまで達していた。

 残った右目は、今や他の感覚の補助機関に過ぎない。

 

 特に聴覚の発達は凄まじく、家を一軒隔てた位置で落ちた針の音さえ聞き取れる。

 これは、とある拳法に存在する、一切の光の無い暗闇の中で、聴覚だけを頼みにする修行を積んだ成果だろう。

 この聴覚があればこそ、夏侯惇は変幻自在の黒翼をに対し、傷を最小限に抑えることができたのだ。


 夏侯惇は、眼を一つ失ったが、その欠点を補おうとした結果、彼は新たに二つの眼を手に入れた。

 

 今の夏侯惇は、三つの眼を持っているも同然なのだ。



 彼の聴覚は、二枚の黒翼の位置と軌道を正確に把握している。

 ゆえに、黒翼が命中する直前……二枚の黒翼が自分を挟んで一直線に並ぶ瞬間も、見逃すことはなかった。

 大鎌を黒翼の軌道に沿って水平に構え、長い柄の両端で弾き飛ばそうとする。


 大鎌を振るう夏侯惇。その構えも振るう瞬間も、全てが完璧だった。

 しかし……


「ぐっ!!」

 

 夏侯惇の両腕に、骨まで響く衝撃が走る。


 これまでの高順が相手ならば、この対応で問題なかっただろう。

 しかし、今の高順は、武将を超えた怪物、獣人将なのだ。

 幻獣の細胞で強化されたその膂力は、以前の彼とは比べ物にならない。

 黒翼に乗せられた高順の剛力は、大鎌の耐久性をも凌駕していた。

 

 大鎌の下端には黒翼が垂直に刺さり、柄を深々と裂いて止まる。

 それより深刻なのは上端の部分だ。 

 大鎌の刃の部分が根元から寸断されて、消失してしまっている。

 黒翼は、背後の崖に突き刺さり、夏侯惇自身へは命中していない。

 しかし、これで夏侯惇の大鎌はただの壊れた棒きれになってしまった。

 

 得物を破壊された夏侯惇に、暴威の塊が襲い掛かる。

 獣人将・高順は、黒翼を投げた直後、自ら弾丸と化して飛び出していた。


 先に投げた二枚の黒翼は、夏侯惇の動きを止め、あわよくば武器を破壊するための下準備。

 真の狙いは、身を守る術を失った夏侯惇を、己が手で確実に仕留めることだった。

 強化された手刀は、研ぎ澄まされた青龍刀も同然。

 これで夏侯惇の喉元を貫く。

 断末魔の抵抗も許さず首を刎ねたその瞬間、高順の勝利が確定する。



「終わりだぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」



 必殺の間合いに足を踏み入れた瞬間……



 焼け付くような痛みが、高順の背中を貫いた。




 高順の意志は、敵を屠るまでは決して止まらぬほどに純化されている。

 ゆえに……高順は、ここから決着までの過程を、一切認識することは無かった。



 高順の背中に突き刺っているのは……切断されたはずの夏侯惇の大鎌の刃だった。

 あれは、斬り飛ばされたのではない。

 夏侯惇自身が、意図的に“飛ばした”のだ。


 夏侯惇の大鎌は、槍の柄に湾曲した青龍刀を接続したものだ。

 その武器を、夏侯惇はある時を境に改造を施した。


 それが、刃と柄の部分を切り離せるこの仕掛けである。


 青龍刀と棍棒の二刀流……

 あるいは、“飛び道具”として使えるようにするために。


 “ある時”とは、まさに高順と初めて戦った時のことである。

 彼と戦った際に、飛び道具の有用性を認識した夏侯惇は、自身もその系統の武器を修得しようと考えた。

 もし、再び高順と戦う事があるならば……同じ手を使って敵の意表を突いてやろうと言う気持ちもあった。


 その狙いは、見事成功を収めた。

 あの時……黒翼に切断されたと見せかけて、夏侯惇は大鎌から青龍刀を切り離し、投擲した。

 大鎌の刃は、高順の黒翼と同じく湾曲している。

 だから、黒翼と同じ性質を有していた。

 それは即ち……空中で大きく弧を描いて、戻ってくるというものである。


 狙い通り、刃は中空を旋回した後、絶妙の瞬間に高順の背中へと突き刺さった。

 その激痛は、勝利を目前にして彼の動きを止めてしまう……

 


 ここからが最後の仕上げだ。

 

 夏侯惇は背後の崖を蹴って、高順の頭上を飛び越える。

 そして……高順の背中に刺さった刃を掴み、力の限り中へと押し込む。

 高順の背骨が砕け、刃が内臓へと達する。


 この瞬間に、夏侯惇は己の力の全てを振り絞る。

 押し込んだ刃を、そのまま一気に下へと引き降ろす。

 

 下へ向かって疾走する刃は、背中の肉を切り開いていく。

 高順の背中は、蝉の抜け殻のようにぱっくりと割れてしまう……

 


 

 高順は理解できない。

 何故、自分がこんな傷を負ってしまったのか……

 それよりも、何故、あそこで動きを止めてしまったのか……


 大鎌から飛翔し、背中を貫いた刃は、確かに予想外だ。

 しかし……それでも普段の彼ならば、自身の痛みも厭わず突き進んでいたはずだ。

 高順の勝利へ向かう意志は、痛み程度では止まらない。


 誰が知るだろうか……

 彼の最大の敗因が、“獣人将”と化した肉体そのものだったことに……


 幻獣の細胞を移植された高順の体は、彼一人のものではなく、同時に幻獣の体でもあるのだ。

 あの時、背中に受けた痛み……


 高順の鉄の意志ならば耐え切れるはずだが、幻獣の肉体はそれより早く音を上げた。

 想像を絶する痛みに、細胞そのものが戦闘行動を拒否したのだ。

 その結果……高順の肉体は、彼の意志に反して、一瞬だけ動きを止めてしまった。


 強さを求めるが故に得た獣人の肉体が……逆に致命傷を招く結果となった。

 天才・陳宮は知らなかった。

 肉体が活動を拒絶するほどの痛みが存在することを。

 そして、その痛みに耐え切れるのは、人の身体と意志だけだということを……





 切り裂かれた背中から、赤い濁流が溢れ出る。

 鮮血と臓腑の洪水が、夏侯惇の身体を濡らす――――



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ