表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
三国羅将伝  作者: 藍三郎
177/178

第二十四章 赤壁の戦い(五)

「だぁらぁぁぁぁぁぁっ!!」


 鉄甲を嵌めた拳を、高速で繰り出す楽進。

 一撃が鉄板を貫通する拳の連打は、一個小隊の放つ矢の斉射よりなお多く迅く鋭い。

 その光の雨を、太史慈は脚業で捌き、受け流している。

 もはや彼は地に脚をつけていない。繰り出される楽進の拳、それ自体を足場として、宙に浮いている。

 奇しくも、両者とも武器を手で“持つ”のではなく、身体に“装着”し、格闘技を用いて戦う武将だ。

 違いは、手と脚のどちらを主体にするかという点のみ。ゆえに。


「ぐっ!」


 烈火のごとき気魄と共に、相手を圧する手数を繰り出しながらも、圧されているのは楽進だった。

 脚の力は腕の三倍、単純な理屈だ。いかに楽進が拳を繰り出そうと、元々の力で凌駕されている以上、その拳は太史慈に届かず、押し退けられるのみ。


 太史慈の扱う蹴術の要諦は、脚を徹底して攻撃の道具として使う点にある。

 足場とは立つものではなく、蹴り砕くもの。足場が無くなれば、また別の標的あしばへと跳び移る。

 地上ではなく、空中を主戦場とすることで、本来、地面と身体を繋ぐべき脚を、その役目から解放し、完全に攻撃の手段としてのみ利用する。

 それによって、他の武将と比べ、常時三倍の攻撃力を実現できる。

 脚技を主体とした武術は、この世にいくらもあるが、太史慈の扱うのは、その究極と言ってよいだろう。


 むろん、易々と実践できるものではない。

 並外れた脚力に加え、空中での姿勢制御、何より、手を扱う以上に脚を自在に操ることが出来ねば、成し得ぬ芸当だ。

 確かに、武将の身体能力は常人を凌駕する。だが、脚を腕として扱う感覚の齟齬を消し去るのは、至難の技だ。

 太史慈は、幼少よりある拳法の寺で育ち、蹴術を身体に叩き込まれた。そんな、“英才教育”を受けた彼だからこそ辿り着けた、蹴術の極地。

 旋回しながら繰り出される脚技は、舞踏のように華麗で、砲弾のように苛烈。

 その旋律に隙は無く、楽進の拳を封じ込めていく。


「たぁらぁぁっ!!」


 楽進の頸動脈目掛けて、脚刃を放つ太史慈。脚を掴まれるような愚は犯さない。

 風圧だけで、太い鉄柱を蹴り砕く威力を乗せている。

 仮に防御されたとしても、それは相手が護りに入った証。荒れ狂う豪脚で、蹴り潰すのみだ。


 だが……


 斬撃蹴が、虚空を一閃する。

 目標消失。が、太史慈の目は、敵から離れはしない。彼は、後方へと退いただけだ。

 太史慈の脚技は、その軌道を自在に変幻する。紙一重で回避して、反撃カウンターを放とうとしても、軌道を変えた脚刃の餌食となる。

 あえてそうさせるように誘いをかけてみたが、相手もそれを察知しているのか、乗って来ることはなかった。


 太史慈の蹴りを避ける方法は、一つ……物理的に脚の届かぬ距離まで、逃れる他ない。楽進がやったのはそれだ。

 だが、それも一瞬のこと。


「!」


 刹那に満たぬ間に、楽進は再び太史慈の間合いへと侵入していた。放たれた高速拳を、間一髪、振り上げた脚で打ち払う。


「やっぱ、そう簡単には片付けられねぇか」


 楽進の口から言葉が漏れる。

 口調は冷静そのもの。だが、その形相は野獣の如く、瞳には極限の戦意を煮詰めてある。


「素早く、じっくり、殴り潰してやらぁ」


 再度太史慈の眼前から、楽進の姿が掻き消える。

 その直後、四十五度離れた場所から敵手が跳んで来る。

 咄嗟に蹴りで迎撃するも、その際受けた衝撃は、先程よりも倍加されていた。


(野郎、脚を使い出したな)


 あれもまた、一つの脚業であろう。脚を蹴撃こうげきに使わず、脚捌き(フットワーク)に集中する。

 敵を砕くのは、あくまで己の拳。脚は、間合いを取り、眩惑し、加速により拳の威力を高めるためのもの。

 楽進は、太史慈の蹴りの射程から逃げ、その隙を狙い再度地面を蹴って突撃を仕掛ける。

 回避と打撃ヒットアンドアウェイ……戦法としては単純だが、速度と威力の伴った打撃、さらに、あらゆる方向から襲い来る包囲攻撃に、太史慈の蹴撃はその威力を殺されていた。

 高速で移動しながら、ただ一人で包囲し、撃滅する拳の監獄。

 逃げを知らぬ楽進が、曹操への忠義の為に逃げを覚え、新たに獲得した戦術。

 短時間での決着は望めないが、確実に敵を逃さず、削り尽くして仕留める戦い方だ。


 暴風に飲まれ、拳の驟雨しゅううに晒され、太史慈は微笑む。

 卑怯だとも、せせこましいとも思わない。これは将の戦い方だ。

 例え己の信条に反しようと、確実に勝利を手にするための戦い。

 その根底にあるのは、主君への灼熱の忠誠。何が何でも勝たんとする絶対の意志。

 あまりにも熱すぎる忠義を持つがゆえに、どこまでも冷徹に、冷酷に勝利を追い求められる。


 なるほど、周瑜が忠告した通りだ。曹操軍の将は、皆尊敬に値する、気持ちのよい漢だと。


 それを聞かず、余分な先入観を抱いたまま開戦を迎えていれば、僅かな迷いを抱いたかもしれない。


 こいつとは、味方として共に戦ってみたかったと……


 周瑜は、太史慈のそんな“悪癖”を知り尽くしていた。

 彼が孫策に降ったのも、そんな感情があったからだ。


 戦場における最大の敵は、自分自身の無自覚な弱さ。

 それは、病魔の如く内に巣食い、知らぬ内に脚を引っ張り死地へと沈める。

 迷いとは、惑いとは、いつ動き出すかも分からない、最も恐ろしい敵だ。

 だが、その弱さを自覚し、意図的に別の方向へ向けることが出来たならば……

 それは、何より強力な追い風となる。


「っらぁっ!!」


 太史慈は、船板を蹴って駆け出す。

 そう、好ましく思う相手だからこそ、共に戦ってみたいと思う相手だからこそ、

 同じ格闘技を扱う者同士、強い共感を覚えるからこそ……


 どちらが強いか確かめたい。

 一方が死ぬまで、いや、自分が勝つまで、ただひたすらに潰し合いたい……


 太史慈は、そんな将にあるまじき、窮めて素直な願望に従うことで、一切の迷いを振り払った。


 相手が高速で駆けて間合いの利を確保するならば、こちらも走ってその差を埋めるのみ。

 二人の闘士が、船上を爆走し、互いの暴をぶつけ合う。

 最大の加速をつけた双拳と、最大の加速を乗せた蹴撃が激突する。

 今や、両雄の力は拮抗していた。

 忠誠、友誼、義務感、そして何よりも、目の前の相手に勝ちたいという渇望。


 煮えたぎる闘争本能の渦に、数多の渇望を混ぜ、全身を烈火と成す。

 拳と脚、窮極の近接格闘者同士の戦いは、更に激しさを増して行く。





「……っ!」


 凌統が跳びはねた瞬間、音も聞こえぬ神速の刺突が、甲板を穿つ。


「えいやぁっ!!」


 裂帛の気魄と共に、八角棍を繰り出す李通。

 目にも留まらぬ速さで刺突を放ちながら、使い手は鋼のように重厚かつ堅牢。僅かな隙も見出だせない。

 それでも、攻撃の間隙を縫って、居合抜きを試みるも……


 ……!


 火花と金属音。


 凌統の刀は、鞘から抜け切らぬ内に、棍の尖端で止められていた。自分を一回りは上回る剛力が、それ以上の抜刀を許さない。

 このままでは押し込まれる……そう見做した凌統は、一旦距離を取る。


 このやり取りをもう何度繰り返したことか。

 凌家伝来の抜刀術の要諦は、鞘走りによる加速と、自身の加速を複合し、防御も反応も許さず相手を切り捨てることにある。

 最短距離による最大加速。

 凌統の技は、今や父と比較して何ら遜色ない域に達している。


 だがそれも、刀を鞘から抜けなければ不発に終わる。

 李通は、凌統と一定の距離を保ちながら、相手が居合の動作を取るや否や、刀に狙いを定め、高速の突きを放ち、柄の尖端を抑え、居合を封じ込める。

 一連の動作、刺突を繰り出す時間、間合いの取り方、全てが完璧で無駄がない。


 もしも失敗しくじれば、その時は胴を両断され、あえなく敗死するだろう。

 それを承知の上で、李通は凌統の得意な間合いを維持しつつ、凌統の居合を完封する気でいる。

 失敗を恐れぬのは、己の武に絶対の自信を持つがゆえ。

 その自信を支えているのは、主君そうそうへの忠誠心。

 あの方の臣下として、不様な戦は許されない。

 その一念が、李通のシンハガネに変える。戦闘体制に入った李通は、心身全てが武と威の塊。

 例え億万回繰り返そうと、凌統の居合を防ぎ切るだろう。その前に、凌統の体力が尽きるであろうが。


 凌統も、それを理解している。彼は、己の実力を過信しない。

 眼前の男は、自分よりも格上の武人だ。

 互角に戦っているようでは、いずれこちらが負ける。

 ならば……



 凌統は、後方へと跳びはね、敵手と距離を取る。

 最短距離での抜刀が叶わぬのならば、間合いを開け、相手の棍が届く前に抜刀する。

 本来の神速は望めまいが、棍の一撃を掻い潜り、必殺の零距離まで潜り込めば……


 凌統は、自らの体を弾丸に見立て、疾走しながら抜剣する。

 迫り来るは豪速の棍。

 直撃すれば、頭蓋骨を易々と穿つ一閃。だがそれは、凌統の頬が擦過するに留めた。

 避けた。棍は既に伸び切っている。今からでは、いかな防御も間に合わない。


 この時、凌統の胸に去来したのは、勝利への確信……ではなく、苦い敗戦の記憶だった。

 あまりにも、上手く行き過ぎる。

 この鋼鉄おとこが、それほど柔であるはずがない。

 結果としてそれが、凌統の命を拾うことになる。


 刃が李通に届く寸前……これ以上、何の変化も見せぬはずの棍が、勢いよく“しなった”。


 それは、蛇のように屈曲し、凌統の右肩を打ち据える。


「ぐっ!!」


 一撃で、肩甲骨が砕けたのを感じる。


「!!」


 李通もまた、表情が僅かに歪む。

 本来は、今の一撃で凌統の顔面を貫き、勝敗を決していたはずだった。

 しかし、寸前で凌統が身を引いたことで、肩を砕く程度に留まった。


 凌統は、肩の激痛を表には出さず、正体を現した李通の武器えものを注視する。


 李通の八角棍は、七つの節目で分かたれ、八つの鉄棒を鎖で繋ぎ合わされていた。


 八角七節棍はっかくしちせつこん


 棍の強度と、鞭のしなやかさを併せ持つ、剛柔一体を現す武具だ。


 これで、今の李通からは一部の隙も無くなった。

 自在に屈曲する七節棍は、あらゆる方向の攻撃を払い、手痛い反撃を喰らわせるだろう。


 李通の八角七節棍が、大蛇の如く宙を舞い、凌統に牙を剥く。

 その変幻自在の動きと速さに、凌統は避けるので精一杯。肩の負傷もあるが、それだけではない。

 戦いの序盤、李通が棍を曲げずに、単なる八角棍のまま使っていたのには、凌統を、直線の動きに慣れさせる意図があった。

 長い間、直線の攻撃に対処し続けていれば、それが突如曲線に変じた時、すぐには対応し切れなくなる。

 今凌統は、李通の狙い通りの状況に陥っていた。


 李通には、派手さや突出した技能があるわけではない。堅実に、全ての能力を満遍なく鍛え上げている。

 ゆえに、彼には死角が存在せず、小細工や一か八かの賭けは、この男には通じない。

 李文達を討ち倒すには、純粋に実力で上回る他にない。


「…………」


 出来るのか、自分に……

 この戦いの間に成長し、李通の実力ちからを上回ることが……


 肩に傷を負った、今の体で。

 視線の片隅に、甘寧の姿が映る。彼はまだ、張遼と次元の違う戦いを繰り広げている。


 それを見る度、思い知らされる。てきは未だ、遥かな高みにいる。

 心に冷たい炎が点る。それは魂を凍てつかせる、復讐の劫火。己が本性が叫ぶ、真実の渇望。

 自分には成すべき使命、果たすべき復讐がある。

 こんな程度の限界で、足踏みしている余裕などはない。

 殺意を絞れ、苦痛を忘却せよ。限界を越えて、更にはやはやはやく――


 あの甘寧あくまに届くほど、速く――





 変わった……


 凌統から放たれた殺気を感じて、彼が先程までの彼ではないことを実感する。

 なるほど、彼は天才だ。

 強者と戦う度に、己の殻を破り、更なる高みへ駆け上がっていく若さと意志を持ち合わせている。

 現在の実力は、自分の方が上だ。だが、武将としての伸び代は、あの青年が上だろう。

 その事実を正しく理解してなお、李通の精神は些かも揺るがなかった。

 現実を、あるがままに受け入れる。誰よりも尊敬する主君の思想は、李通の心魂に刻まれている。

 敵が誰であろうと、自分は自分の全力を尽くすのみ。

 戦は生き物、格や実力などという曖昧な要素は、決着がついて後初めて語れることだ。



 下腹部が熱い。痛みが、腰から背中へはい上がって来る。鎧の腰部分から血が流れている。

 刃の直撃は受けていない。超高速の抜刀が生み出す真空波が、鎧の隙間に入り込み、李通の肉を裂いたのだ。


 受けた負傷の度合いでは、あちらの方が上だ。

 だが、あの居合抜きは、鎧ごと自分の胴を両断する威力を持つ。

 条件さえ整えば、一撃で相手を殺し得る、二の太刀要らずの秘剣……それが居合抜きの恐ろしさだ。


 李通がその実力で押し切るか。凌統の居合いが、その差を覆すか。

 勝敗の天秤は、未だ危うく揺れていた。





「フ~~~ンフンフンフン、フンフフ~~ン、フ~~~ンフンフンフンフン、フンフフフ~~ン」


 やや音程の外れた鼻唄を歌いながら、周泰は敵艦内を闊歩する。

 彼の後ろには、わだちのように、叩き潰され、引き潰され、砕き潰された兵士達の血肉が、床や壁面にへばり付いていた。


「ン~~いっぱいいっぱい殺しましたね~~。可是バァット、この程度の生贄でーは、カミサマは満足されまセン。

 もっと! もっと! もっともっともっともっともっともっと!

 いけにえの食べ過ぎでゲップが出るまで捧げますのーネ」


 哄笑する周泰。彼の両手両足は、血を吸って赤黒く変色していた。

 戦場のただ中にあっても、彼の顔には、菩薩のような笑みが張り付いていた。


「んん!?」


 何か違和感を覚え、周泰は立ち止まる。だが、その時にはもう遅かった。


 回廊の四方八方から槍が伸びる。その数は十以上、鋭利な鉄の穂先が、残らず周泰の躯を貫いた。


「どうだ!」

「くたばれ、この化け物!」


 回廊のあちこちから、隠れ潜んでいた将兵が姿を見せる。

 彼らは荊州兵ではなく、曹操軍所属の精兵達だ。

 彼らは、艦に侵入したこの敵が、尋常ならざる怪物であることを知ると、正面からの打倒を諦め、狭い艦内という地形を生かした不意打ちに切り替えた。

 その判断力と、即座に隠れて罠を仕掛ける技量は、さすが歴戦の猛者達と呼べるだろう。

 彼らは、“詰み”に入っても油断することなく、槍に更なる力を加えていく。

 鋼の槍は、ずぶずぶと周泰の躯へとめり込んでいく。彼らは、自分達の槍が敵の肉をえぐっているのを確かに感じていた。

だが……


 男は笑っていた。全身を串刺しにされながらも、その顔面は、仏の笑顔で固まったままだ。


多么凝固了オーマイガッ! 痛い! 痛い! 痛いですネー!」


 と、笑顔のままで喚き散らす。まるで、その顔以外の表情を知らないようだ。

 兵士達は、そんな男の反応に不気味さを覚えつつも、更に深く槍を突き込む。

 創傷から溢れた血が、体中を走る傷痕を伝い……傷痕を、赤く染め上げる。

 いわおのような筋肉が、不規則に蠕動ぜんどうする。死に際の痙攣か……否。


「な!?」


 兵士達は、一斉に驚愕する。深く突き刺さった槍が、筋肉が収縮するたび、押し出されていくではないか。


 やがて、全ての槍の穂先は、肉からすっぽりと抜けてしまった。それだけではない。

 槍で穿たれた、十数の貫通孔も、見る見るうちに塞がっていく。


「無駄、無駄、無駄無駄無駄ァ――ヨ!」

「ば、化け物……!」


 一般に、武将の自然治癒力は、人間を遥かに上回る。

 普通の人間ならば、一週間は寝たきりになる大怪我でも、武将なら一晩安静にしているだけで回復してしまう。


 むろん、人によって個人差はある。だが、今の周泰のように、受けた傷をその場で修復してしまう武将など、前代未聞だ。

 これはもはや、人並み外れた治癒力などという領域を遥かに越えている。まるで粘土のような肉体だ。

 指を突っ込んだ水面が、すぐに平面に戻るように、槍傷は跡形も無くなった。傷が治るまでの過程を、高速早送りしたかのようだ。

 全く未知の存在ばけものを前に、兵士達は混乱の極みに陥る。


「無駄、無駄無駄無駄でぇス!

 ユー達に、ミーを傷つけることできまセーン。

 说到原因ビコーズミーに傷を付けられるのは、“カミサマ”だけだからデース」

 

 変わらぬ笑顔のままで、周泰は誇らしく語る。

 傷口は塞がったが、流れた血は元々あった十二のわだちに溜まって全身を赤く染めている。

 いや、傷そのものが、赤く輝いているようにも見える。

 いずれにせよ、混乱した彼らにそこまで気にする余裕は無かった。


「さぁ、もっと楽シク、傷ツケアイまショー。

 アーメン、インシャラー、ナンマイダー」


 十字を切って両手を合わせ、軽く一礼する。

 血に濡れたその笑顔は、凶猛きょうもうなものへと変わっていた。


 

 この数分後、兵士達は、二つに割られた船もろとも、長江の底に沈むことになった。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ