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三国羅将伝  作者: 藍三郎
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第二十二章 長坂の戦い(六)

 無双甲冑が威嚇のために撃った火砲により、民草は一気に恐慌状態に陥る。

 加えて、劉備が自分達を見捨てて逃げたという情報が、民の混乱に拍車をかける。

 多くの民は一目散に逃げ出す。少しでも遠くに、急いで逃げようと、他の民を押しのけ、踏みつける。そのせいで、何人もの民が屍を晒すことになった。


(大衆は迫り来る危機に対して、あまりにも魯鈍ろどんだ。

 危機を危機として認識できないから、何の寄る辺も無い劉備について行くなどという愚かな決断を下せる。

 だが、一度危機を感じとれば、瞬く間に自己の保身へと頭を切り替える……)


 蜘蛛の子を散らすが如く逃げていく民草を見て、賈栩は心中でそう呟く。

 彼もまた、悪来改に乗り込み、戦場を見渡している。


 その数に限りは無く、いざとなれば自己の保身を第一に考える。

 超常の力を持つ武将達と言えども、彼らの働きが無ければ食べていくこともできない。だから、無闇に数を減らすことも出来ないのだ。

 つくづくしぶとい生き物だと思う。中華で最強の存在とは、実はこの民草かもしれなかった。


 数十万の民が逃げ惑う様は中々に大迫力だが、地獄絵図……というには些か物足りない。

 董卓軍に所属していた頃ならば、この民草を一人残らず殺せという命令が下っていただろう。




 後方で民草の警護についていた歩兵……劉備に置き去りにされた彼らの内、半数は十分足らずで撃滅された。

 無双甲冑の前では、歩兵の肉壁など薄い紙のようでしかない。

 残る兵は、降伏するか、民に混じって逃げ出した。


「命が惜しくば武器を捨て、道を開けよ!

 刃向かう者には容赦はしない! 皆殺しにして、押し通る!!」

 

 曹洪の、あまりに直截的な脅し文句に、兵士達は震え上がって道を開く。

 この最後尾には、腕の立つ将が一人もいない。

 心の支えを失い、浮足立った兵卒など、民草と何も変わらなかった。


 逃げ惑う民によって開かれた道を、無双甲冑の群れが駆け抜ける。



「うおおおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!」


 張繍は、沸き上がる興奮を外に解き放つ。

 間も無く始まる本当の戦に向けて、己を戦士にするための儀式であった。


 賈栩も、張繍に追随して先を進む。後は劉備を捉え、始末するだけ……

 思っていた以上に、面白味のない戦だ。

 それでも、見るべきものがあるとすれば……


 仁者の呼び声高い劉備が、民を見捨てて一目散に逃げ出す。見世物としては悪くない。

 虚飾を取り払い、人間の本性が剥き出しになる瞬間にこそ……賈栩は強い興味を覚えるのだ。




「う、うわあぁぁ……」

「だ、駄目だ! とても勝てっこねぇ!!」

 

 無双甲冑を目の当たりにし、武器を落として震える二人の兵士。

 曹操軍の威容に恐れをなし、彼らも逃げ出そうとしていた。


 劉備は、既に逃げ出した。彼は所詮、曹操軍と戦うには力量不足だったのだ。 

 今更何を憚る必要があるのだろうか。

 

 だが、次の瞬間……



「ぐはああああぁぁぁっ!!?」


 兵の肩口が、音も無く切り裂かれた。


「ごふっ……!」


 続けて、もう一人の兵も、心臓を背中から貫かれる。

 


「どいつも、こいつも……」


 徐庶は、顔面を味方の血で染め、絞り出すように声を漏らす。

 絶命した二人の兵士の屍を、強く踏みつける。

 その顔面は、悲しみと怒りで鬼のごとき形相に変わっていた。


 主君は真っ先に逃げ出し、民草を守るべき兵士もまた使命を放棄し、全員一丸となって曹操に抗おうとした民草も、散り散りになって遁走している。


 徐庶の思い描いた理想は、跡形もなく破壊されてしまった。

 それでも、彼は正義を捨てることは出来なかった。

 正義とは何なのか、考えることもしないまま……



「やってやる……! やってやるよ……!

 あんたらが民を見捨てるなら、俺が民を守ってやる!

 俺は正しい! 俺は正しい! 俺が……正義だ!!」


 直剣に道を注ぎ込み、曹洪に目をやる。

 大将首を取れば勝ち……という考えがあったわけではない。

 ただ、溢れ返る激しい殺意を、誰でもいいからぶつけたかっただけだ。


「うおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ――っ!!」


 射程圏内に入った瞬間、“撃剣”を放とうと、剣を赤く輝かせたまま突撃する。



 だが……




「ぶぎ……っ!」


 脳みそが消し飛ぶような痛みが、徐庶の身体を打つ。

 曹洪の武器……八年前より倍以上に長くなった鉄鞭が、徐庶の体を打ち据えたのだ。

 肉が裂け、鮮血が吹き出る。

 撃剣を放つ暇もない。一撃でも致命傷となりうる鞭打を繰り返し、何度も叩き込まれる。


「ぐぎ、がっ!?」


 留めとばかりに腰を打たれ、血まみれになった徐庶の身体は、宙へと舞い上がる。

 そして、驀進する無双甲冑の内一体に跳ね飛ばされ、ボロ雑巾のようになって地面に転がった。


 脇目も振らず逃げ惑う民草が、彼の存在に気付くはずもない。


 徐庶は、彼が守りたかった民草達に足蹴にされ、踏み付けられ、血塗れの体で地面に埋まった。



「……よし、往くぞ!」


 馬鹿が一人襲って来たので始末した。

 鞭に濡れた血を払うと同時に、曹洪の頭から、あの男の存在は綺麗さっぱり消え去った。













 瞳から溢れる涙が、顔の泥汚れを洗い流していく。

 逃げる民草に何度も踏まれ、鼻は潰れ、顔面は瘤だらけになり、以前の面影はどこにもない。 


 徐庶の身体は、大の字になって地面に埋まっていた。


 彼は微動だにすることなく、周囲に転がっている民や兵の屍と見分けが付かなかった。

 既にこの場所には、彼以外誰もいない。民は逃げ出し、曹操軍は劉備を追って先に行ってしまった。



 彼が動けないのは、重傷を負い、体力が尽き果てていること以外に……精神的な要素が大きかった。

 彼は、何もかもに絶望していた。

 劉備に、曹操に、兵士達や民草、そして、誰からも顧みられず、こんな無様を晒している自分自身に……




 諸葛亮に投げかけられた言葉が、脳裏によぎる。




 ――あんたさぁ、もうちょっと空気読みなさいよね――




 徐庶の内で、苦い過去の記憶が蘇る……



 彼は、若い頃から勉学に励み、武芸にも打ち込んでいた。

 それも全ては、多くの民草を救い、己の正義を貫き通せる男になるためだ。

 だが、彼のそんな志は、周囲の人間には理解されなかった。



「徐庶ぉ、お前何言ってんだよ」

「相変わらず空気読めない奴だな」

「仁だの正義だの…… 今の時代、そんなもの追い求めて何になるってんだ」

「曹丞相は、大の儒教嫌いだって聞くしな。出世したきゃ、儒に関する話題は禁句だぜ」

「袁家との戦ももうじき終わる。

 これからの時代は、よりよい官職に取り立ててもらうことを考えねぇとな」

「俺達はそのために勉強しているんだぜ」

「ていうか、さすがに冗談だよな? あはははははは!!」

「あははははははは!!」

「あははははははは!!」



 覚えているのはそこまでだった。自分を罵る学友達をしこたまぶちのめし、徐庶は学び舎を抜け出した。

 

 この国には、本物の正義などない。

 目の前の安寧に飛びつき、曹操という侵略者の野望を容認してしまっている。

 自分がどれだけ正義を説こうとも、彼らは鼻で笑って嘲るばかり……

 こんな人間が動かす天下に、未来はない。


 世の中の全てに絶望し、お尋ね者となった徐庶は、ただ宛てもなく彷徨うしかなかった。


 そんな中……彼は、あの人と出逢った。




水鏡すいきょう……せんせぇ……」


 涙声で、師の名を呼ぶ徐庶。

 

 初めて、自分を認めてくれたあの方。

 自分に数多の知識を授けてくれたあの方。

 自分に真の正義を示してくれたあの方。


 彼が今の自分を見たら……どんな言葉を掛けてくれるのだろうか。

 徐庶は、満月の浮かぶ夜空に手を伸ばし、この場にいるはずの無い人に向けけ呟いた。

 

「私は……私は間違っているのでしょうか……この世界には、もう正義など無いのでしょうか……教えてください、先生……!」










「いいや、お前は間違ってなどいない」


 懐かしい声が、徐庶の耳に響いた。


 聞き間違うはずも無い。

 だが、僅かな疑念を挟みつつ……徐庶は力を振り絞り、声のした方向へと首を動かす。


 そこに立っていたのは……



「あ、ああ……!」


 目を大きく見開く徐庶。

 感激と驚愕のあまり、上手く声を出すことが出来ない。



「久しいな、元直……」


 彼は、月明かりに照らされ、静かに佇んでいた。

 夜風が、身体を覆う白衣を揺らす。


 頭から白い布を被った、白装束の男。

 夏侯兄弟相手に絶体絶命の危機に陥った魏延を助けた男と、同一人物である。



 男は、徐庶の下へと歩み寄る。


 そして、頭の布を取り払い、徐庶に向けて素顔を晒した。


 徐庶の瞳からは、止め処なく涙が流れる。

 だがそれは、今までのような絶望と悲嘆の涙ではない。

 この世で最も尊敬している方に出会えたことへの、歓喜と感動の涙だった。


 徐庶は震える声で、男の名を呼ぶ。




 

「水鏡……先生!!」


 



 背中まで伸びた黒い髪が、外気に晒され風になびく。




 男は……司馬しば仲達ちゅうたつは、自らの弟子に向けて柔和な笑みを浮かべた。








 師に助け起こされ、簡単な治療を受けた後……徐庶は涙ながらに、事の顛末を話す。


「そうか……劉備と孔明がな……」

「はい……彼らは必ずや天下を救う英雄になる……

 そんな貴方の言葉を支えに、私は彼らに尽くして参りました。

 しかし……それが……あんな……!」


 徐庶は唇を噛み締め、わなわなと肩を震わせる。

 司馬懿は嘆息すると、徐庶に向かってこう告げる。


「済まないな。元直。まさか私も、彼らが君にここまでの仕打ちするとは思っていなかった」

「と、言いますと?」

「私も彼らの語る理想に共鳴し、同じ夢を託したいと思っていたのだ。

 彼らの下でならば、君も多くの事を学べると期待していたのだが……

 私の責任だ。彼らの中身を見通すことができず、結果として、君の心に深い傷を負わせてしまった……」

「そ、そんな!!」


 では、彼らは自分だけではなく、この水鏡先生までも騙していたというのか。

 諸葛孔明。あの女は、水鏡先生の友でありながら、その友情と信頼を踏みにじったのだ。

 自分が裏切られた以上の怒りが、徐庶の中で湧き上がってくる。

 

「水鏡先生は悪くありません!! 悪いのは……悪いのは……!」



 玄徳ゥ…… 孔明ェ……



 許さねぇ……あいつらだけは、絶対に許さねぇ……!!




 狂気の形相に変わる徐庶の言葉を遮って、司馬懿は静かに告げる。


「だが、今回の一件で決心が付いたよ」

「え……?」

「混迷を極めるこの時代……陽の光を浴び、民の支持によって選ばれた英雄こそが、天下を安んじるべきと考えていた。

 だが、劉玄徳が、民からの信頼を、自身の野心を満たす為だけに使うというのならば……

 彼が目指すものが、救済ではなく、曹操と同じ支配に過ぎないのならば……

 彼にこのまま天下の平定を任せておくわけにはいかない。


 私が、立とう。


 この私が、自らの手で天下を変革し……一人でも多くの民草を救う道を、切り拓くとしよう」


 


「お、おおおお……」


 徐庶は、瞳を感激で潤ませ、神々しき師の姿を見上げている。

 ついに……ついにあの水鏡先生が、天下の安寧がために動き出すのだ。

 劉備のような欺瞞の塊ではない、真の正義を持つ、本物の救世主が――!



「その言葉……私は、生まれた頃から待ち望んでいたように思えます……」

「元直、お前の力を私に貸してくれ。

 お前の真っ直ぐな正義の心こそが、新たなる時代を創り出すには必要なのだ」

「あ、ありがたき幸せ……!!」


 荒んでいた心は、瞬く間に歓喜に満たされていく。

 心から尊敬できる方のために尽くすことこそが、彼にとっての本懐。


 これぞ孝だ、これが絆だ。あいつらとは違う――!


 同時に、彼の内では、どす黒い感情も沸き上がっていた。


 彼自身は意識することはないが……


 それは、“復讐”。


 彼の心を傷つけた、二人の人間への復讐心だった。




「ク……クククク……クヒャハハハハハハハハ……ハハハハハハ!!!!

 ハハハハハハハハハハ!! アヒャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!」


 瞳を見開き、顔面を狂気で彩り、満月に向けて笑う徐庶。


「玄徳ぅ! 孔明ぇ! 今に見ていろ!!

 てめぇらの好きにはさせねぇ……! てめぇらの歪んだ正義は、俺がぶっ潰す!!

 俺が、俺が正義なんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

 心から尊敬する人の為に戦い、自分を裏切った憎い二人に復讐する。

 これ以上の喜びが他にあるだろうか?

 


「殺してやる、ぶっ殺してやるよぉ!!

 メチャグチョにぶち殺して、“正義オレ”を裏切った罪を、償わせてやるぅぅぅぅぅぅ!!

 イヒャハハハハハハハハ!! アヒャハハハハハハハハハハハッ!!!!」



 それでも徐庶は、自分の内より湧き上がるこの衝動が、“正義”であると信じて疑わなかった。







 実に愚かで単純で、御しやすい男だ。

 司馬懿は彼を眺めながら、侮蔑の混じった笑みを浮かべる。

 狂乱のまま吼える徐庶が、それに気づくことはない。

 

 彼を弟子にしたのも、道術の素質以上に、この性格があったればこそだ。


 彼は、事あるごとに“正義”や“信念”といった文句を口にする。

 しかし、実のところ徐庶は、漢王朝に深い忠義を抱いているわけでも、曹操に個人的な怨恨があるわけではない。


 彼の行動原理を成すものは、全て“言葉”。

 

 その意味が何なのか、深く理解しようともせず、ただ言葉の善し悪しで全ての価値観を決している。


 曹操は強者だ、奸雄だ。天子を操り、朝廷を意のままにする独裁者だ。

 劉備は弱者だ、英雄だ。仁義を重んじ、漢王朝を復興させる忠義者だ。


 周囲の人間が与えた評価だけを見て、それが全てだと信じきっている。

 それこそが唯一無二、絶対の正義であると疑いもしない。


 だから……彼は、曹操の政の中身など理解しようとせず、同時に劉備の実像についても、深く考えようとはしなかった。

 彼にとって重要なのは、どちらの在り方がより聞こえがいいか……それだけなのである。


 守る、助ける、救う、絆、誇り、無垢、忠誠、信頼、慈愛、仁徳、友情……そして、正義。


 そんな聞こえの良い言葉に酔うことが出来れば、それで良かったのだ。


 自分は、何のために戦うのか……

 そのことについては一切考えることなく、ただ正義という言葉で、自らを鎖してしまっている。


 本人は、自分の薄っぺらさに気づきもしない。

 ただ感情に従って動くだけの彼を、良識ある周囲の人間が受け容れるはずも無い。

 彼が疎外され、このような末路を迎えるのは必然であった。


 それでも彼は、自分の非に気づく事が出来ず、己が正しいと言う考えを決して曲げない。

 悪いのは自分ではなく、自分を騙していた劉備や孔明だと考える……


 明確な正義などは、この世界の何処にも存在しない。

 だが、徐庶にとって正義とは、絶対不変の概念なのだ。

 様々なしがらみゆえに、不純物を含んだ正義など、到底容認できるはずもない。

 “絶対の正義”という、ありもしないものを追い求める彼は、誰からも受け容れられることはない。


 

 そんな人間を操るなど簡単なことだ。

 ただ、彼が好む綺麗事を並べてて、全てを受け容れてやればいいのだ。

 案の定、今まで誰からも避けられてきた彼は、少し優しい言葉をかけてやった途端、“水鏡先生”の信奉者となった。

 


 徐庶は実に良く働いてくれた。

 諸葛孔明に近づけ、その動向を逐一報告させていた。

 万が一不穏な動きあらば、即座に知らせる為に。

 あの怠け者の彼女を劉備と引き合わせ、軍師として劉備軍に加入させることができた。


 三顧の礼、劉表の死、曹操の侵攻、劉備の逃亡……何もかもが、未来歴史書【三国志】の記述通りに進んでいる。


 徐庶からの文で、劉表がまだ生きていることを知った時には些か驚いたが、徐庶は首尾よく劉表を始末してくれたようだ。

 


 ――貴方が生きていると、“あの方”のためになりません。



 あの男は、自分の命令ならば何でも聞く。それが、暗殺のような汚れ仕事であろうと、疑念を差し挟むことはない。

 

(孔明め。大方、劉表やつを生かすことで私の目論見に皹を入れるつもりでいたのだろうが……無駄なことを。

 その程度の些細な瑕疵は、巨大な運命の流れの前では、何の意味も成さん。

 物語の結末は、既に決まっているのだよ)


 他にも、自分に不都合な事態を、いくつか修正したことはある。だが、それ以外の大半は、司馬懿が手を下したものではない。

 水が上から下へと流れるように、歴史は自然に、司馬懿の望む形を描き出している。

 現実と、【三国志】とのズレが、限りなく消失しつつあるのだ。

 官渡の決戦以降、その傾向はより顕著となった。


 運命は収束しつつある。たった一つの……司馬仲達が、神となる未来に向かって。

 

 その流れは、もはや誰にも止められはしない。



 徐庶だけではない……


 劉備も! 曹操も! 孫権も! そして諸葛孔明も!


 中華に生きる全ての人間は、この司馬仲達の駒に過ぎないのだ。


 思えばそれも当然のこと。

 自分は神になるべき存在。

 神を崇め、神の為に尽くすのは、全ての人間の義務なのだから。



(ふふふ……孔明よ。精々頑張って劉備を立派な王にしてやるがよい。

 その為の道は、私が創ろう。奴は、私が神の座に登り詰める為の人柱なのだからな……!)


 徐庶が狂乱の雄叫びを上げる中で……司馬懿もまた、覇気を充溢させ、己が野望への情熱を新たにする。

 


 さぁ! 第二幕は始まった!



 流血せよ! 慟哭せよ! そして讃えよ! 新たなる神の生誕を!!



 天下よ! 我が野望に踊れ――!!




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