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三国羅将伝  作者: 藍三郎
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第十九章 孔明の出廬(二)

 時は渾元暦208年の初春。



 あの、官渡かんとの決戦から、七年もの歳月が流れていた。



 渾元暦202年、袁紹えんしょう急死。これを切欠として袁家の勢力は、離反と内部分裂で急激に弱体化していく。

 渾元暦204年、曹操は袁氏の本拠地である冀州きしゅうぎょうを攻め落とし、ここに本拠地を移す。

 渾元暦205年、袁紹の子の袁譚えんたんを滅ぼし、冀州を完全平定。同年、黒山賊の張燕ちょうえんが十数万の軍勢を率いて降伏している。

 渾元暦206年、袁紹の甥の高幹こうかんを討伐し、并州へいしゅう平定。

 渾元暦207年、袁家の残党に味方する烏丸うがん族を討ち、二十数万を降伏させる。

 同時に袁煕えんき袁尚えんしょうら袁家の抵抗勢力に完全にとどめを刺し、幽州ゆうしゅうを平定、河北(黄河の北岸地域)を統一した。



 中原ちゅうげんを制覇した曹操の勢力は中華最大となり、残る敵勢力は荊州けいしゅう劉表りゅうひょう江東こうとう孫権そんけん益州えきしゅう劉璋りゅうしょう漢中かんちゅう五斗米道ごとべいどう関中かんちゅう馬騰ばとう、そして劉備りゅうびだけとなった。


 官渡の戦いの最中、曹操に敗れた劉備は、荊州へと逃げ延び、劉表の下に身を寄せていた。

 長い逃亡生活で散り散りとなった劉備一行であるが、趙雲ちょううんという優れた将を得、張飛ちょうひ、曹操軍から抜け出した関羽かんう、そして曹操に解放された甘夫人かんふじん糜夫人びふじんとも再会を果たした。

 今は劉表の庇護の下、荊州・新野しんやで平穏な時を過ごしていた。




「うんめぇ――――っ!!」


 あまりの美味に、思わず目と口から光線を出しそうになる。


 劉備一家の食卓には、色とりどりの食事が並び、香ばしい匂いを放っている。

 これらの食事は、全て劉備の部将件護衛件執事件料理人件その他諸々の趙雲が作ったものだった。


「荊州に入って八年……ずっと同じことばっか言い続けている気もするが……

 やっぱり子龍しりゅうの料理は最高だぜ!!」


 狐色にこんがり焼けた鶏肉を頬張りながら、劉備は快哉を叫ぶ。


「お褒めに預かり光栄に存じます、玄徳げんとく様」


 彼の傍らで給仕を行う趙雲は、一部の乱れも無い礼を返す。その物腰は、何十年と仕えた名家の執事の如くだった。

 実際、彼はかつて公孫贊にそうしていたように、劉備の護衛から食事、身の回りの世話、予定管理の全てを取り仕切っている。

 その仕事ぶりは完璧の一言で、この七年間、彼の仕事に何か不満を抱いたことなど一度も無い。



「お前もそう思うだろ、阿斗あと?」


 劉備が太陽のような笑みを向けるのは、劉備の長男、阿斗、後の劉禅りゅうぜんである。

 甘夫人の息子で、長らく子に恵まれなかった劉備一家に、ようやく授かった宝である。


「うふふ、機嫌の悪い時も、趙雲さんの料理を食べればすぐに機嫌を直すのよね」


 朗らかに笑う甘夫人。


「いやはや、赤子というものはいつの時代も得難き宝です。純粋無垢なる姿は、我々の心をどこまでも癒してくれる……」


 小さい匙で離乳食を食べる阿斗を見て、劉表もまた相好を崩す。


 荊州の統治者、劉景升けいしょう。黒い衣服に片眼鏡をかけた、文学青年のような姿をしている。

 彼はこのところとみに、劉備一家と食卓を囲むことが多くなった。


「子は親の愛情を受けて育ち、親は子の健気な姿を見て生きる活力を得る。

 何と温かく、麗しき姿でしょう。これも、原始より連綿と受け継がれてきた、人間の文化なのです」


(そりゃそうだ。息子達が揃って後継者争いをしているあんたからすりゃあ、何も言わない阿斗はさぞかわいらしいだろうよ)


 そんな皮肉は、勿論表には出さない。何せもう七年の付き合いになる。

 彼がどういう人間なのか、何を好み、嫌うのかをよく理解していた。


「しかし本当に美味しい。衣食住は、あらゆる生物にとって必要なもの。

 ですが、それを芸術の域にまで昇華させられるのは人間だけです。

 趙雲さん、貴方の類い稀なる腕前は、きっと中華の食文化に、新しい地平を拓かれることでしょう」

「勿体なきお言葉に存じます」

 

 劉表の杯に茶を注ぎながら、趙雲は返礼する。


「特にこの甘く焼いた家鴨の皮を、野菜とともに小麦粉の皮で包む料理は素晴らしい。これは、貴方が考えられたのですか?」

「いえ、原型は、北に居ました頃に振る舞われた家庭料理でございます」

「へぇ~~そうなんか。ま、美味ければ何でもいいへほはぁ」


 あまりの美味さに、喋っていることも忘れて、口いっぱいに料理を頬張る劉備。


「おやおや劉備さん、そんな食べ方は文化的ではありませんよ」

「そうですよ。将来阿斗が真似するようになったらどうするんですか」


 劉表と甘夫人に窘められ、劉備はバツの悪そうに笑う。


「なはははは、そいつはいけねぇな。けど、美味すぎるんだからしょうがないじゃねーか。ははははは!」


 劉備に釣られて、甘夫人は笑う。劉表も笑う。阿斗も意味は分からないが、両親が楽しそうなのを見て笑う。


 笑っていないのは趙雲だけだが、場の空気を乱さぬよう影のごとくその場に佇んでいた。


 うららかな春の陽気が、窓から差し込んで来る。平和を絵に描いたような、午後の食卓だった。



「もう劉備さんが荊州に来て、七年になりますね」


 空になった皿を、趙雲が次々に片付けていく。阿斗も含め、皆美味な昼食に満足していた。

 しかし、何も王侯貴族しか食べられない豪勢な食事というわけでもない。

 材料自体は、庶民でも手に入れられる安価なものだ。

 それらを使ってあれだけの美食を作れるのだから、やはり趙雲の料理の腕は非凡と言わざるを得ない。


「七年すか。いやぁ、そんなに長く世話になっていて、何一つ返せない自分が情けねーですわ」

「とんでもない。貴方がここにいるお陰で、中華全土から人が集まってきます。

 この七年、荊州は中華に名だたる文化の都として、大きく発展しました。

 全ては劉備さんの大徳があればこそ。感謝したいのはこちらですよ」


 劉備には人望がある。それは間違いないが、荊州に人が流れて来るのは、結局中原の戦火を逃れたい、さらに言えば曹操が恐ろしいからだらう。

 曹操がその勢力を広げれば広げるほど、曹操への民の恐れは増していく。噂には尾鰭が付き、曹操に魔王か化け物のような印象を持たせる。

 そんな彼らが縋るのが、未だに反曹の御旗を掲げる劉備である。


 漢王朝の混乱に乗じて一気にのし上がり、並み居る至強しきょうを打ち倒し、一代で中原を制覇した破格の英傑、曹操。 

 その覇業はまさに偉業と呼ぶに値する。だが、そのあまりの速さゆえ、人々の目には曹操が得体の知れぬ悪鬼か妖怪のように見えてしまうのだ。


 実のところ、曹操の急速な覇業の裏にあるのは、緻密なまでの合理性だ。

 いかな窮地に陥ろうと、その場その場で迅速に最善の道を選べる決断力。

 五年、十年先を見据えて策を講じることのできる先見の明。

 身分、家柄に囚われず、優れた才を持つ者を重用し、適材適所に運用する柔軟性。

 温情と制裁、寛容と恐怖を巧みに使い分ける人心掌握術。

 天下を治めるためならば、一切の禁忌を恐れず、漢王朝の天子であろうと利用する。

 曹操の戦と政を支えているのは、機を読み才を重んじ、利用できるものは何でも利用する徹底的な合理性だ。


 だが、連綿と続いてきた中華の常識は、元来曹操の掲げる合理性とは相反するものだ。

 天子の権威が無条件で肯定され、根拠なき迷信や伝説が当たり前のように信じられる。

 そんな非合理的な思想こそが、中華の社会の主流であった。

 非合理こそが常識であり、行き過ぎた合理は非常識と見なされる。だから曹操は忌避され、劉備の下に人が集まるのだ。

 中山精王劉勝の末裔という劉備の出自は実はあやしいものだが、皇帝の血を引いている、というわかりやすい権威は、曹操の合理性、革新性を受け入れられない民が縋り付くにはちょうどいい。

 劉備自身も、それを狙って漢朝の復興、曹操の非正当性を謳っている。あくまで対外的に、だが。


 曹操が目指しているのは、単なる支配者の地位ではない。

 不条理を尊び、合理性を排斥する中華の社会そのものの変革だ。

 それが、彼の望む全ての人々が平等に評価される世界の第一歩となる。

 中原制覇を成し遂げた彼にとって、もはや敵らしい敵など存在すまい。

 次に彼が着手するのは、古い権威を破壊し、合理的で才を重んじる新たな中華の創造だ。


 きっと、凄まじい反発が起こることだろう。ある意味、これまで曹操が戦ってきたどんな敵よりも強大かもしれない。

 相手は、漢王朝四百年はおろか、千年以上も中華を支えてきた常識そのものなのだから。

 そこに劉備が付け入る隙がある。曹操に反発する、非合理と不条理を重んじる古い権威……彼らの代表となって、曹操に立ち向かえる力を得るのだ。

 

 本来、劉備は極めて冷徹で、現実的な男だ。漢王朝の権威など、道具として利用できる以上の価値を見出さない。

 その本質は、曹操と極めて近いのだ。

 そんな彼が、勢力増強のために非合理的な思想を掲げる集団と手を組まざるを得なくなるとは……何とも皮肉な話である。


 しかし、勝てる可能性が少しでも上がるならば、その流れに乗らない手はない。

 実際、劉備自身が名乗りを上げずとも、反曹操の流れは劉備を盟主として担ぎ上げようとしている。

 荊州に、続々と反曹の志を抱く武将や軍師、民草が集まっていることからもそれは明らかだ。

 劉表は、せいぜいそれを利用してやろうと思っているのだろう。



 さっきから、劉備の偉大さや文化の素晴らしさを称えている劉表を見ながら、そんなことを考える。

 文化が人間がただ生きる以上の行為を追求したがゆえに生まれたものならば、文化とは本来非合理的なもの。

 だから彼は曹操相手に中立を装いつつ、裏では敵対しているのだろうか。いや、恐らくそれは違うのだろう。


 彼は文化を愛しているのではない。その文化を支配している、自分自身を愛しているのだ。


 裏で数多くの刺客を操り、乱世を意のままにしようとしているのも、所詮は見せ掛け。

 中立という、俗世から隔たった立場に身を置くことで、自分が特別な存在である気分に浸りたいだけなのだ。

 ここ荊州は、劉表が自分のためだけに作り上げた理想郷。

 彼が庇護する文化も、劉備という象徴も、その理想郷を彩る装飾品に過ぎない。

 だが、永遠に続く理想郷などありえない。いつか終わりが来ることは、彼も分かっているはずだ。

 今彼が望んでいるのは、この理想郷を少しでも長引かせること。

 もし荊州に曹操が攻めて来たとしても、本気で戦うつもりなどないのだろう。


 曹操が中原を制覇し、次の目標は荊州だと囁かれている今となってもここまで落ち着き払っているのはそのためだ。

 その時、自分の首は曹操への講和を持ち掛ける上でのちょうどいい手土産になる。

 そのために、七年に渡って劉備を荊州に留め置いたのだ。

 せいぜい、寝首を掻かれないようにしなければ。



 では、自分はどうなのか。

 ここまで圧倒的な差を付けられて、自分はまだ、曹操と戦うつもりがあるのか。

 曹操と戦い続ける道を選ぶことは、この乱世をさらに長引かせることを意味する。

 多くの民が苦しみ、死んでいく。数多の血が流れた末に勝利を手にしても、曹操の創る新時代より素晴らしいとは限らない。


 今目の前で、朗らかに笑っている妻と息子……彼女らの笑顔を、悲嘆で塗り潰してでも、自分は曹操と矛を交える道を選ぶのか?

 

 自分でも驚くほど、迷いはなかった。答えはもう、八年前、左将軍の地位を蹴って許都を出た時に決まっている。

 自分は、曹操の本性を知っている。世間で言われているような誇張や蔑称ではない、本物の人外だということを知っている。

 そんな人ならざる怪物を信じることはできない。天下万民の命運を、委ねることなどできないのだ……






「近頃、段々この辺りもきな臭くなって来ているようだね」


 糜夫人は口にくわえた煙管きせるを旨そうに吸い、紫煙を吐き出す。食後の一服はまた格別だ。

 彼女は現在一人で食卓にいる。劉備らに一時間遅れて食卓につき、今食事を終えたところだ。


「奥様、玄徳様が言っておられました。煙草はお控えになる方がよろしいかと……」


 趙雲は、食器を片付けながら語りかける。劉備は食事を終えた後、関羽と張飛のいる練兵場に行った。

 今は護衛の任を解かれているので、こうして糜夫人の給仕をしている。特に命令がなくても、働かずにはいられない性分なのだ。


「はっ、言いたいことがあるなら面と向かって言えって伝えときな」

「かしこまりました」

「確かにあんたの料理は天下一品だ。けどね、覚えておくといいよ。

 この世のどんな美食よりも、一杯の酒、一本の煙草の方が勝ることがあるってことをね」


 そう言って、またも紫煙を吸う糜夫人。


「……ま、体に悪いことは分かっているさ。けど、あたしの体だからね、あたしの好きにさせてもらうよ」


 自分に子供ができないのもそのせいかもしれないが、特に気にしたことはなかった。

 あんなろくでなしの子として産まれたところでいいことなんかあるばずがない。

 ただし、既に産まれた命は別だ。いかな出自であろうと、この世に生を受けた以上、幸せに生きる権利がある。


「心配しなくても、大切な跡取りの前じゃ吸いやしないよ」


 近頃、糜夫人が劉備らに遅れて食事を取っているのは、阿斗の前では煙草を吸えないからだ。


「失礼ながら、玄徳様は、本心で奥様の身を案じられておられます」

「……ああ、分かっているよ。そいつは、分かっている」


 劉備が自分や甘夫人、阿斗に向ける愛情は本物だ。

 あの男は、必要に迫られれば自分達家族であろうと切り捨てるだろう。

 だがそれは、悩み抜いた末の苦渋の決断であるはずだ。

 長年付き添っていれからわかる。

 あの男は、全く無感動に何かを切り捨てられるほど強くない。

 切り捨てる時は、必ず自分も身を切られる痛みを味わっている。

 だが、それでも彼は切り捨ててしまう、傷ついてしまう。

 心の奥のサガが、立ち止まらないようにできているのだから。

 考えようによっては憐れな男だ。自分よりも天下を優先するため、本当に愛する者を護れない。そういう風に出来ている。


 だから、見限れない、憎み切れない。ただ、解決不能の苛立ちだけが募っていく。



「全く、あんたみたいな強くて器用で気配りもできて料理も上手い男が、どうしてあんなろくでなしに仕えているんだか……」

「それは、私が劉備様と……」

「主従の契約を結んだから、だろ? 覚えているよ、前聞いたからね。

 しかし、契約ねぇ……そんな口や紙切れで交わされただけの、あってないようなもんのために、そこまで忠誠を捧げられるなんてね」


 糜夫人の言う通り、契約などは、その気になればどちらかから一方的に反故にできるものだ。

 まさに紙切れのように、薄っぺらい繋がりだ。

 しかし、趙雲が頑なに契約にこだわる理由もそこにある。

 儚いからこそ……弱いからこそ……護られなければならない。

 契約を強くするのも弱くするのも人次第、ならば自分は、決して契約に背かぬ男でありたい。

 それが趙雲の信条だった。

 そのことは、糜夫人も薄々分かっている。


「おっと、悪かったね。あたしがあんたの生き様に口だしする謂れはない。

 それに、契約なんて、わかりやすくて結構じゃないか。

 愛だの情だの訳のわからないものに比べれば、よっぽど上等ってもんさね」


 趙雲と違って、自分は何故劉備の傍にいるのか、自分でもはっきりした答えを出せていない。

 まだあの男に愛情が残っているのか、今更生き方を変えるのが面倒なだけか、どこへ行ったところで、自分の人生は変わらないという諦念か。

 

「……なぁ、やっぱりもうじき、戦争が起こるのかね?

 あんたはどう思っているんだい? 教えておくれよ」

「……私個人の所見を述べさせていただきますと、曹操が今年中にここ荊州を攻める可能性は極めて高いと思われます」


 劉備個人に忠誠を誓っている趙雲は、常に彼に与えられた役目を果たすことに専念しているが、天下に全く関心が無いわけではない。

 広く情報を仕入れ、自分なりに解釈し、予測を立てている。

 だがそれも、関心と言うよりはあくまで主君に役立つために知識を仕入れている、と言った方が正しい。


「あの男は、今回もやっぱり降伏しないんだろうね……」


 糜夫人には分かっていた……きっとまた、あの男は八年前と同じことを繰り返す。


「ねぇ、趙雲さん、あたしの願いを一つ聞いてはくれないかい?」

「私にできることでしたら、何なりと」


 それは、主君である劉備の意に反しない範囲ならば、という意味を含んでいた。


「戦争になったら……甘ちゃんと阿斗ちゃんを、護ってやってくれないかね?

 あたしは、あの子達が無事生き延びてくれれば、それでいいんだよ」


 護衛対象には、自分は含まれていない。彼女自身は、既に覚悟を決めている。

 趙雲は、鉄面皮ながらも全く人の気持ちの察せない男ではない。糜夫人の願いは、人生に諦めた彼女にとってただ一つの寄る辺なのだ。

 それを分かっていながら、趙雲はこう言う。


「確約はできかねます。しかし、命令を逸脱しない限りは、奥様の意に沿えるよう、尽力しましょう」


 何とも歯切れの悪い返事であるが、趙雲にとってはこれが最大限の譲歩。

 彼にとっては、直接契約を交わした劉備の命令は全てに優先される。

 極端な話、劉備があの二人を殺せと命じれば、躊躇いなく殺すだろう。


「そうかい。頼んだよ」


 糜夫人も、趙雲の心理はよく理解している。だから、今の返事を咎めようとはしなかった。


 立ち昇る紫煙が、荊州の空へと消えていく。


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