制服の頃
本作は2009年3月に書いた『制服の頃』という詩が元になっている――――とは
あとがきに記したとおり。
詩・歌詞・小説・エッセイetc……かれこれ30年以上創作してきて一番数多いのが詩である。
まだ、花も恥じらう《乙女》を冠した学生時代(遠い目……)女子のあいだで
流行っていたのが交換日記やミニレターのやりとりだった。しかし、自作の詩をみせるとなると、親友の中でもさらに胸襟の開ける子としか共有できない、正真正銘の【秘め事】だった。
それが、こんなふうにして不特定多数の人様に、臆面もなく見せてしまう日が
来ようとは。大人の階段、のぼりきったってこと?
羞恥心の放棄? それとも枯渇? 乙女心よ、カムバック。
なにしろ30年前である。パソコンはもとより、ワープロすら持っていない。
相当な数の手書きノォトは、これまた相当な年代物になっている(価値があるかは別として)。700篇を超える詩を振り返るたび、よくもまぁこんなにつづれたものだと想いの無尽蔵さに呆れ、そして圧倒される。
さて。その700篇を超える詩の中で【百合モノ】にカテゴライズされるのは、
これ1篇のみ。いったいなにがあったのだろう……。
制服の頃
二度と纏うことのない其れに触れるたび
あの日の記憶が脳裏を締め付けるのです
胸に結んだ真紅のリボンは時に戒めとなって
お姉様をお慕いするわたくしを阻むのでした
早暁と夕べに祈りを捧げる両の手は
柔い絹の滑らかさどころか
清冽な軛を感じずにはいられませんでしたから
あれはまさしく啓示だったのでしょう
お姉様の修了式は
わたくしの心情が形象されたかのような養花天
主のせめてものお情けだったと
わたくしは今でも思っております
一度だけ
暮れる礼拝堂に独り佇むお姿を認めたことがありました
その手がしかと握りしめていたのは
わたくしにはついぞ解けなかった
あの真紅の戒めだったのです
主と対峙するか細い背は場違いな迄に幽玄で
わたくしの止め処ない涙よりも遙かに蒼みをおびた愁訴が
帰結する術もなく彷徨っていたのでした
敬愛なるお姉様
どうぞいつまでも安らかに在しませ
千の季節を見送ろうともわたくしの中で
あの後ろ姿は気高さの極みであり続けましょう
折りたたんだ制服と共に
咲くを赦されなかった蕾のように




