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乙女の祷り  作者: 夏生由貴
エッセイ集
10/12

制服の頃

 本作は2009年3月に書いた『制服の頃』という詩が元になっている――――とは

あとがきに記したとおり。


 詩・歌詞・小説・エッセイetc……かれこれ30年以上創作してきて一番数多いのが詩である。

 まだ、花も恥じらう《乙女》を冠した学生時代(遠い目……)女子のあいだで

流行っていたのが交換日記やミニレターのやりとりだった。しかし、自作の詩をみせるとなると、親友の中でもさらに胸襟の開ける子としか共有できない、正真正銘の【秘め事】だった。


 それが、こんなふうにして不特定多数の人様に、臆面もなく見せてしまう日が

来ようとは。大人の階段、のぼりきったってこと?

 羞恥心の放棄? それとも枯渇? 乙女心よ、カムバック。


 なにしろ30年前である。パソコンはもとより、ワープロすら持っていない。

相当な数の手書きノォトは、これまた相当な年代物になっている(価値があるかは別として)。700篇を超える詩を振り返るたび、よくもまぁこんなにつづれたものだと想いの無尽蔵さに呆れ、そして圧倒される。


 さて。その700篇を超える詩の中で【百合モノ】にカテゴライズされるのは、

これ1篇のみ。いったいなにがあったのだろう……。


   制服の頃


     二度とまとうことのない其れに触れるたび

     あの日の記憶が脳裏を締め付けるのです


     胸に結んだ真紅のリボンは時に戒めとなって

     お姉様をお慕いするわたくしを阻むのでした

     早暁と夕べに祈りを捧げる両の手は

     柔い絹の滑らかさどころか

     清冽なくびきを感じずにはいられませんでしたから

     あれはまさしく啓示だったのでしょう


     お姉様の修了式は

     わたくしの心情が形象されたかのような養花天

     主のせめてものお情けだったと

     わたくしは今でも思っております


     一度だけ

     暮れる礼拝堂に独り佇むお姿を認めたことがありました

     その手がしかと握りしめていたのは

     わたくしにはついぞほどけなかった

     あの真紅の戒めだったのです

     主と対峙するか細いせなは場違いな迄に幽玄で

     わたくしの止め処ない涙よりも遙かに蒼みをおびた愁訴が

     帰結する術もなく彷徨っていたのでした


     敬愛なるお姉様

     どうぞいつまでも安らかにおはしませ

     千の季節を見送ろうともわたくしの中で

     あの後ろ姿は気高さの極みであり続けましょう

     折りたたんだ制服と共に

     咲くをゆるされなかった蕾のように


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