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こんな世界でも、生きるために  作者: クウネルアソブ
一章 決意
2/3

先生とギルド異端者の会

 カスガさんが案内してくれた宿舎は石造りの平屋だった。窓もあるがヒビが入っているようだ。石造りなわけだし仕方ないのかもしれないけど、苔とかも生えてる。ボロすぎないか。中も当然それなりにボロかった。トイレもちゃんとある。驚いたことにちゃんと下水に汚物は流れるらしい。

 風呂場と炊事場は少し離れたところにあって、自分たちで好きに使っていいらしい。炊事場の近くには作ったご飯を食べるためか、テーブルと椅子がある。


 部屋は、男女で分かれて四人部屋を二つ借りた。扉を開けるとすぐ横の壁に窪みがあった。おそらく荷物なんかをおけってことなんだろう。個人的に一番気になっていた寝床だが、酷かった。正面に二段ベットが、左右にそれぞれ一つずつ置いてあった。いや、これをベットと呼んでもいいのだろうか……

 木箱。木箱だ。木箱が二段に置かれていて、下段でも寝れるように、ふたつの木箱の間の四隅に柱がある。中に干し草か何かが入れてあってシーツも何もない。草だけ。安いにはそれなりの理由があるってことか……


 今日は色々あって、疲れていたからだろう。そんなことを思いながらも横になってみるとすぐに意識は落ちていった。





 ユウ達が心地よく眠っていると、ゴーンと大きな鐘の音が鳴った。この街の隅まで余裕で届きそうな大きさだ。


 寝ていたところに不意に大きな鐘の音が聞こえたものだから、ユウ達は目を覚ました。「な、なんだ⁉︎」良弥が干し草の中からガバッと起き上がり、驚愕を含んだ大きな声で言った。ユウも驚きながらも「多分、時間を知らせる鐘じゃないかな」と言った。


 この鐘は恐らく昨日別れ際に春日さんが教えてくれた、時間を知らせるために鳴らすらしい鐘だろう。なんでも、この世界では時計は高級品らしい。そのため、クロックスの中央から少し離れた真東に時計塔があり、その最上階から鐘を鳴らすのだとか。早朝の六時に一回、昼の十二時に二回、日暮れの六時に一回鳴らすらしい。この世界の人は空が白み始める頃には活動しだすのだとか。随分健康的だ。


「そういえば」良弥が窓から差し込む日差しを見ながら言った。「もう日が昇ってき始めてるな」

 辰巳が本当だ、と言った。


 この鐘の音が意味するところは、つまりグランドールでの2日目が始まったということだ。いや始まってしまったというべきか。ユウは寝て起きたら全てが夢、なんてことを期待していなかったと言ったら嘘になる。でも、起きても現状は何も変わっていなかった。

 そういう気持ちは皆んなにも少なからず、あったのだろう。空気が微妙に重くなるのを感じた気がした。


 そんな重苦しい空気をどこかへ飛ばすように「お、おはよう。朝起きてから友達の顔を最初に見るなんてまるで修学旅行みたいだね」とにこやかに辰巳が朝の挨拶と冗談をみんなに送った。「確かにそうかもな」と良弥が苦笑いして言いながら寝床から出てきた。それにならったように辰巳も寝床から出始めた。ユウは、みんなとは初日は違う動きをする予定だったので、まだ寝ててもいいよな、なんて考えながら二度寝を決め込もうとしていた。朝の六時だったし、普段ならユウは寝ている時間だ。


 けれどそれは良弥達が許さないらしい。「おいおい、何寝ようとしてるんだ。起きろユウ」と声をかけながら、良弥がユウの寝床の干し草をかき出し始めた。ユウは寝起きはいいほうじゃないので、なんだこいつと思ったが、これ以上干し草を地面に落とされたらかなわないので、起きることにした。

「おはよう」と明らかに不機嫌そうな声音で挨拶をするユウ。

 それを特に気にした様子もなく「おはよう。とりあえず、みんなで集まろう」と言いながら上靴を履き始めた。皆んな教室にいたので、上靴だ。


「縁たちもさっきの鐘の音を聞いて起きてるだろうから、呼びに行ってくるよ。昨日チラッと見ただけだけど炊事場の近くにテーブルと椅子があったからそこで話し合おう。ユウも準備が終わったらきてくれよ」

「わかった」


 ユウが了解の意を示すと良弥はひとつ頷いて部屋を出て行った。辰巳も良弥の後について行った。

ユウも上靴を履いてとりあえず、かき出された干し草を良弥の寝床に入れて、良弥の寝床の干し草を自分の寝床に補給しておいた。どっちもどっちで大して変わらない気がするけど、床の上に落ちた干し草よりかは、マシだろう。ユウは干し草の交換を終えた後、炊事場の近くにあるテーブルに向かった。もうユウ以外は集まってるようだ。


「遅かったな」

「うん、まあちょっと、ね」


 ユウの反応に良弥は疑問符を受けべていたが流石に、お前が落とした干し草をお前の寝床の干し草と交換してたんだよ、とは言えないので苦笑いを浮かべておいた。

 縁が「よーし、みんな集まったし昨日話し合えなかった事を話そー」と言った。流石の縁も朝は眠そうだ。


 あくびをしながらユウが言った。「話し合うって言っても大体の疑問は昨日解消されたと思うけど」

「もー本当にユウくんは鈍いなー。ちゃんと起きてよー」

「起きてるよ」

「本当にー?まだ眠そうだよ?」

「寝起きだからね」


 美希が半分寝た状態で言った。「やっぱりパーティのこととかじゃないかな」

「ああ、そういうことか。それならみんなで組めばいいんじゃないの?」ユウは言外にそんなこと話し合う必要があるのか?と言った。

「え、いいの⁉︎」

「いいも何もそれしかないと思うけど」

「で、でも命を預けるんだよっ?」

「別に知らない仲じゃないし、いいよ。みんなだってそうでしょ?」


 みんなは何を当たり前なというような表情をしながら頷いている。


「まあ、他の人を頼るツテもないしな」良弥が肩をすくめた。

「そっかありがとう、みんな」


 美希があっそう言えばというように言った。


「ユウはどうして昨日ギルドに入らなかったの?」

「特に理由はないけど、なんとなくかな。まあ別に昨日入らなかったからって死ぬ訳じゃないし大丈夫でしょ」

「何それ」とクスクス笑いながら美希が言った「適当すぎない?」

「そうかも」ユウは苦笑いを浮かべた。


 その後、みんなは帰還の契りを交わす者カヴェナンターに向かった。ユウは街に見ることにした。





 街を見るって言っても、少し歩いただけでわかるくらい、この街はそれなりにでかい。高低差も激しいのが余計にそう感じさせる要因だろう。どこに何があるかもわからないから、とりあえずこの街の中央から真東にあるらしい時計塔を目指すことにした。ここからでも見えるくらいに高い。迷うことはないだろう。

 塔を目指してる最中、異臭がした。その方向に歩いて行くと街の中に転がる死体を見つけてしまった。

 

「うっ……」おそらく、餓死したのだろう。頬が痩せこけ、服というにはお粗末すぎるボロ切れをまとっている。見るからにお金がないといった姿だ。ユウは初めて感じた本物の死に吐いてしまった。

 なんだ、あれ。なんで、人が死んでるんだよ。どうして、みんな平気な顔して通り過ぎて行くんだよ。ありえない。おれも、稼げなかったらああなるのか。それは嫌だ。さっきはあんな適当なことを言ったが、早急にどうするか決める必要があるかもしれない。少なくとも、今日中に決めなければ。

 ユウは思いを新たに、その場から急いで立ち去った。


 時計塔があった場所の周りはひらけていた。そこでは、剣や防具、服、雑貨、ちょっとした食べ物を売っている露店があった。大抵のものはここで揃いそうだ。ある露店から、肉を焼くいい匂いがして、思い出した。

 そういえば、ここにきてからなんも食ってないんだよな。さっきまでは感じていなかった空腹感が意識した途端に押し寄せた。匂いがした方に行ってみると、串焼きを売っている露店があった。なんの肉なのかはよく分からないが。


 今、ユウが持ってるのは五十トルクだけだ。今日もあの宿舎に泊まると考えると、使えるのは四十トルクだけになる。買うか。どうする。でも、めちゃくちゃうまそうな匂いがする。お腹は減ってるし、いずれ何かを腹に入れなきゃいけない。でも、いくらするんだ?聞いてみるか。


「すいません。これはいくらですか?」

「五トルクだよ。」


 安い……のか?分からない。でも、美味しそうだ。お金なんて持ってても使わなきゃ意味がない。そうだよ。使わなきゃ。それに、無くなっても帰還の契りを交わす者カヴェナンターに入れば、二十コーンももらえる。そう考えれば買ってもいいだろう。


「一つください」

「はいよ」


 お金を渡して串焼きをもらうなり、早速食べた。ウマっ。なんだこれ。なんの肉かよく分からないけど、めちゃくちゃ柔らかい。噛んだそばから肉汁が出て来て、熱々だ。塩が振ってあるのかさっぱりしている。空腹も相まって、この世界に来てから初めてよかったと思えるくらいのうまさだった。


 その後、串焼きをもう一本買おうか真剣に悩んだが、隣にあったパンのようなものに野菜や肉なんかを挟んであるパニーニみたいなものを買った。こっちは六トルクした。こっちもめちゃくちゃうまかった。

 その後も色々露店を見て回った。布が売ってある露店があったので、風呂に入る時ように手ぬぐいと寝床に敷く布を買った。合わせて二十トルクだった。


 もう残り九トルクしか使えないんだな、なんて考えていると昨日自分たちを案内してくれた子がいた。彼女はやはりこんな市場でも輝いて見えた。昨日と同じ格好をしている。

 昨日も自分たちを案内してくれたりしたし、もしかしたら色々教えてくれるかもしれない。昨日は良弥たちの質問を無視していたが。


 ユウが、どうやって話しかけよう……と彼女を見ながら考えていると、目があった。向こうもこちらに気がついたらしい。目があってしまったし、普通に話しかけた。「えっと、昨日はありがとうございました。おかげで仲間はギルドに入りました」

 彼女が不思議そうに言う。「君は?」

 ユウは首に手を当てながら「いや、まだ、入ってなくて。なんていうか他にいいところはないかなぁ、と思いまして」と言った。


「そうなんだ」彼女は何か考えているのか下を向いている。ユウはそうだ、と思いながら「どこか、いいギルド知りませんかね?」と尋ねてみた。少し悩んでから彼女が「知らない。あのギルドは、あなたたちみたいな異郷人には一番待遇のいいギルド」と言った。

 やっぱり、あそこが一番待遇がいいのか、と思っているとそのすぐ後「でも、その次にいいギルドを知ってる」と彼女が言った。一応聞いてみようとユウが尋ねると、「私のギルド」と答えが返って来た。胸を張っている。胸はないけど。


「えっと……」

「設立したはいいけど、ずっと私を含めて二人しかいない。その子はやりたくないって言って、サブマスの席が空いてるから、今入団すればめでたくサブマス」

「……それ、いいギルドなんですか?」ユウが思はずジト目で聞く。

「い、いいギルド」と声をうわずらせながら彼女が言った。心なしか冷や汗をかいてるようにも見える。大丈夫だろうか。


 どうしようか。きっと入って欲しいと言うことなんだろう。それくらい、ユウにもわかる。彼女はこの世界に来て何も分からなかった自分たちを、あのギルドまで連れて行ってくれた。その恩義もある。それに、彼女はかなり可愛い。ユウも思春期真っ盛りの男の子だ。可愛い女の子に頼まれては断れない。断る理由がない。むしろ歓迎だ。


「ギルドには方針があるらしいですけど、どんな方針なんですかね?」

「方針、って言うほどのものじゃないけど。私はどこにも居場所のない人の居場所になればいいなって思ってる」


 立派な方針だ。やっぱり、彼女はいい人なのだろう。ユウは一つため息をつくと「入れてもらっても良いですかね?その二番目に良いギルドに」と言った。実際は一番いいギルドかもしれない、なんて思ってた。

 彼女はここにきて初めて無表情を崩して嬉しそうに微笑んで「うん、よろしく」と言った。それだけで入ってよかったと思えるくらいに可愛い。


「えっと、俺はユウって呼ばれてます」

「私はクロネ、よろしく。ユウは戦い方とか知らないよね?」

「あ、えっと、そうですね」

「そっか。じゃあ、まずはそこからだね。」


 なんだか、最初に会った時より物腰が柔らかくなってる気がする。クールな感じではあるけど、もう無表情ってわけじゃないし。身内には優しい的な?それともコミュ障か。両方かも。


「多分、ユウは知らないと思うけど、基本は職業神殿っていうところに行って、なりたい職業クラスになる。そこでなったクラスに応じて、お金を払って技能スキルを教えてもらうんだ。」

「そうなんですか。クロネさんはなんのクラスなんですか?」

「私はちょっと特別なタイプで、ヨロズっていうクラス。多分、もう私以外にはいないクラスだと思う」

「そういうのもあるんですか」絶滅危惧種じゃんか、それって。

「うん。ユウもヨロズになる?」

「えっと……どういうクラスなんですか、そのヨロズっていうのは」そんな珍妙なクラスになってもいいのか……

「いろんな武器を使って戦うクラスだよ」


 ヨロズって名前の通りになんでもってことか。どうなんだ、それは。


「おすすめ……なんですかね?」

「うん。是非」


 めっちゃ推してくるな。まあ、なんでも良いか。どんな武器でも戦えるならそれに越したことはないだろうし。


「そんなにいうなら、なろう……かな。その場合ってクロネさんが教えてくれるんですかね?」

「うん。教える。私、結構強いから、任せて。バッチリ強くしてあげる」クロネはこくこくと頷いた後にサムズアップしながら、そんな心強いことを言ってくれた。ユウは自分より小さい女の子がそんなに強いのか疑問に思っていたが。


「あっ、そういえばお金ないんだった……職業神殿てところではスキルを教わる時はお金がかかるんですよね?だったら、俺もお金払ったほうが——」

「うん、そうだけど、いいよ。大丈夫。お金はいらない。むしろ、私があげる」

「い、いや流石にそれは……」


 いくら何でも自分より小さい女の子に戦い方を教えてもらって、お金までもらうのは情けなさすぎる。戦い方を教わるだけでも十分情けないのに。しかし、そんなユウの気持ちには毛ほども気づいてないのか「確か帰還の契りを交わす者カヴェナンターって最初に二十コーンあげてたよね」なんていうと対抗心からか「じゃあ私は三十コーンあげるね」と言って三十コーン分の銀貨を入れた革袋を渡してきた。流石にこんなに受け取れないとユウが言うとクロネが「私の厚意は受け取れないってこと……?」なんて涙目で言ってきた。反則的な可愛さだった。ユウは稼げるようになったら返そうと思いながら受け取った。


 ユウが「えっと、じゃあ戦い方を教えてもらうんだから、先生って呼んだほうがいいですかね?」なんていうと、クロネはさっきまでのクールな表情はどうした、というぐらいだらしない笑顔を受けべながら「それ、すごく、いい。先生、武具もそれえてあげる」なんて言い出した。ユウは先生に対して、結構残念にダメダメな人だ……なんて思いながら「いや、三十コーンももらったし、それで買いますよ」と言った。それに対して、やっぱりというべきか先生が「先生の言うこと、聞けない……?」なんてまたしても涙目で言ってきたもんで仕方なく「……お願いします」と言った。


 その後、武器や防具を売っている露店に行って、武具を買い揃えた。ただ、そこでも先生が「この店で一番いい武具を」と言い出したので、何とか説得して普通の武器を買ってもらった。それでも、ユウみたいな素人が扱うには上等すぎる物だったけど。

 

 ちなみにダガーを買ってもらった。理由としては、どの武器も結構な重さでなかなか扱いづらそうだったからだ。まあヨロズになるんだし、そんなことは言ってられないのかもしれないけど。防具は「身を守る物なんだから絶対いい物じゃなきゃだめ」と言う先生に根負けして、かなりいいものを買ってもらった。唯一の救いはヨロズの特性上、動きやすい格好の方がいいらしく、フルプレートのアーマーなんかよりも軽装な、なめし革の防具だったので遥かに安かったことだろう。


 一通り買い物が終わったあと、昼の鐘が鳴ったので、先生と昼食を食べて(先生がおごってくれた。先生と行動する限り、お金を使う機会は一生こなさそうだ)から、先生のギルドに向かった。





 その建物は、ギルドというより石造りの綺麗な三階建の家ぽかった。一応、看板があり、そこには<異端者の会ヘレティックアス>と書いてあった。これがこのギルドの名前なのだろう。もうちょっと何かあったんじゃないのか、名前

 中に入ると、一応カウンターがあった。無人だけど。隣に申し訳程度に木のボードがあった。多分、クエストボードだろう。何も貼ってないけど。


 二階に上がると人が居た。エプロンのような物をかけて掃除をしている。真紅の髪の毛をした可愛らしい女の子だ。歳は十四、五歳くらいに見える。

 ユウの服装が珍しいのかじーっと見てる。


「珍しいですね、クロネさん。お客さんですか?」

「違う。新しい、ギルドメンバー。サブマス」


 その言葉によほど驚いたのか、大きく目をあけながら「ここのギルドに入るなんて……」と言いながらユウを見ている。その視線に苦笑いしながら「ユウって言います。えと、よろしくお願いします」と言った。


「敬語なんて使わなくてもいいですよ。私の方が歳、低そうですし。私はグルナです。よろしくお願いします」

「わかった。よろしく、グルナ。グルナも別に敬語、使わなくてもいいよ」

「いえ、年上の方なので」グルナは言った。「ちなみにおいくつなのでしょう?」

「十七だよ」

「なるほど。でしたら、先生と同じ年ですね。私は三っつ下です」

「先生は同い年でグルナは十四か」


 それにしても何だか、むず痒いな。敬語とか、そんなの今まで使われたことなかったし。


「グルナは、武器になれるんだ。グルナ、お願い」と言うと、グルナは「わかりました」と言いながら、先生の隣に行った。ユウは武器になれるって何だろうと思っていると、先生が徐にグルナの手を掴んだ。すると、本当にグルナが武器になった。ロングソードだ。あまりの出来事にユウが「え?」と呆けた声を出してしまった。


「この子は結構珍しい種族の人器族。人器族って言うのは武器になれる種族で、普通は、一つの武器にしかなれないんだ。でもこの子はそれほど複雑な構造じゃなければ、どんな武器にでもなれるから、異端者として種族の中で迫害されてた。だから連れてきた。ヨロズにはぴったり」


 そう言いながら先生はグルナをロングソードから昨日腰に差してたダガーにした。もしかしたら、さっきじーっと見てたのは昨日会ってたから、とか?

 その後も刀や、両手剣なんかにコロコロと変わっていった。


「確かに、ヨロズと相性ぴったりですね」


 一つの武器になれるだけでもすごいのに、どんな武器にでもなれるなんて、すごすぎる。迫害される理由がわからないけど、多分、みんなと違うっていうそれだけのことで、迫害するには十分なんだろう。


「今日は顔合わせとギルドの場所確認だけで、入団の手続きと鍛練は明日からにしよう。鍛練は泊まり込みでするから、準備が出来次第きてね」

「えっと、わかりましたそれじゃ——」

「あ、ちょっと待ってて」


 帰ろうとしたら呼び止められた。先生は奥に引っ込んだ後、何やら服を持ってきた。「その服じゃ目立つだろうから、これあげる。これ、私が作った服。よかったら着て」先生がそう言いながら渡してくれた服は、麻みたいな素材でできた質素なチュニックと、よくわからない素材でできたベストみたいものだ。それと、靴とズボンもくれた。


「あ、そうか服……ありがとうございます」


 ユウはすっかり忘れていたが未だに制服と上靴だった。それを受け取った後は、特に予定もなかったので、若干迷いながらもまっすぐ宿舎に帰った。

 先生からもらった服に着替えてから、やることもなかったので、しばらく街並みを眺めながらぼーっとしていたら、みんなが帰ってきた。

最強までの道のりはまだまだ長そうです。

これからもちまちま更新していきます。よろしくお願いします。

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