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向こう側

 瞳をあけると、其処は―――ただ何もない場所だった

 

 此処は何処だ?


 俺はマンションの屋上に居たんじゃなかったのか?


 俺が辺りを見回してみても、此処はただ暗いだけの―――俺以外誰も居ない場所のようだった


 風さえも吹いていない静まり返ったこの場所は俺を急に不安にさせた


 何処なんだ此処は・・・・


 怖い


 誰か・・・・・誰か居ないのだろうか。俺は目の前に向かって叫んだ


 怖い


「だれかぁっ!誰かいませんかぁっ!」


 俺の声がただ虚しく反響して木霊する


 怖い


 辺り一面の暗闇に落とされた俺は為す術もなくしゃがみ込んだ


 怖い


 どうすればいいんだよ俺は・・・・・




『お主―――何用でここに参られた』




「へっ?」


 俺の頭に直接響くかのように声がした


 重く、でもそれでいて威圧感のない優しげな声だった


「えっと―――誰、ですか?」


『わしのことか?』


「はい、一応は・・・」



 どこから話しかけているんだろうか?この声が聞こえたからといって俺のなかの恐怖心が消えたわけではなかったし、反対に姿が見えない声に対しての恐怖が俺を一層強張らせた


 俺は竦んでいた足に力を込めて、震える声を振り絞って返事を返した


『お主に姿は見えなかろうに・・・まぁよい此方に来れば分かることだ褪せぐでない』


「そっちに行けば分かるってどういう――――?」


『二度は言わん、最後まで聞け。何用で参られた』


「どういう意味ですか、それ」


『分からずに来たのか・・・・?では―――お主の願いは何だ?』


「願い――――ですか?」


 俺の願いは―――脳裏には焼きついたような何処までも甘くて優しい記憶が甦る


 あの頃を取り戻すことが出来たならどんなにいいだろう?あの時に戻ることが出来たなら―――


 俺はもうあの幸せを取り戻すことなんて出来ないのに――――俺の眼から一筋の涙がこぼれ落ちた


「――――俺は、あの日を取り戻したい――――あの時を取り戻したい」


そう言いたいのは山々だった。けど、そんなことがどうやったら出来るだろう?考えるだけでも馬鹿馬鹿しい


これは夢なんだろ?だったら早く覚めないと―――――


『承知した、お主の願いに応えよう・・・ただし、それはお主の運命さだめ次第、わしにもわからん』


 見透かしたように言われたその応えに俺はひどく動揺していた


「えっ?俺の願いって叶うのか――――叶うんですか?」


『左様、だが褪せぐな。今からお主の運命を決めよう』


「運命を決める?」


『試験開始じゃ、健闘を祈っておる』


「へ?待ってください、まだ話終わってな――――」



 ガシャンッ



 少し不可思議な音がしたその刹那、俺の身体は宙に浮いた――――いや、堕ちた


「うわぁああっぁあああああああああっぁぁああ―――――」


 俺はまた訳の分からないならくの底へと堕ちていった



『試験開始じゃ』



 突然言われた言葉の意味の半分も分からない俺は、始まりのスタートラインすら分からずに堕ちた 


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