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もう一人の少女

「あら、お客様かしら?」

「えっ?」


 サラはにっこりと微笑みながら、俺の事を見てそんなことを言った

 まるで赤の他人のように


 誰も 俺の存在すら知らないとでも言うように


 綺麗な両目が俺の事を映し出してた

「冗談・・・じゃなさそうだな、本当にわからないの?」

「えぇ、」

 少し躊躇したようにサラは笑いながらそばに在ったティーカップに手を伸ばした


「お会いしたことがあったでしょうか?」


 白い湯気の出た あたたかそうなお茶を啜りながら、俺の方ではない明後日の方向を見ている

 なんとも言えない狂ったような感情が俺の中に渦巻いた

 寂しいとはちがう

 哀しいとは言いきれない『何か』が

 

「俺、俺だよサラっ!覚えてないのっ?」

  

 声を振り絞って叫んだ

 その時、サラの瞳が大きく見開かれた

「あら、あなたお姉様にお会いしたことがあるの?」

「え?」

 置いていかれたように俺の心の中にぽっかりと穴が空いた気がした

 思い出すような仕草をしてから、彼女の目が大きく見開かれた

 あぁ、という嬉しそうな声がその口から漏れて、俺の銀色の剣を指差した

「じゃぁあなたが勇者様なのね。初めまして、あたくしザグラムの次期継承者ミラ・ザグラムールですわ」


 言われた言葉の意味がよくわからなかった

 心臓が急に主張を強める


 目の前の女の子はサラじゃない・・・!?


 次期継承者ってことはこの人は女王候補、

 つまりミラのお母さんが女王なのか 

 聞き出そうとした俺の口からは全く違う言葉が漏れだしてしまった

「えっ?サラじゃないの・・・・サラじゃないんですか?」

 緊張と混乱のあまり、俺の口は上手く機能しなくなってきている

 慌てて敬語に直したといってもまだ心音は抑えきれていない

 サラとミラが違う人物だったことにも驚いたけれど、それ以前にこの二人は似すぎている



 真っ白な模様のついていない紙みたいだ



「はい、サラとはあたくしの双子のお姉様ですのよ。間違えてしまうのは無理ありませんわ」

 お母さまなんて見分けがつかないくらいですもの

 なんて言いながらミラは困ったように笑った

「まだお母さま―――――女王陛下にはお会いできてないんでしょう?」

「はい、道が・・・・」

「あたくしと参りましょう、もうお夕食のお時間ですから」

 そういって立ち上がって、俺を手まねいた

「ありがとうございます」


 その時、袋の中から声がした

『マヒロ、この袋の紐を解いてくれ。早く』

「え?」


『女王に会うまでに早くその紐を解いて封印を解いてくれ。じゃないと俺はここから出られない。それにあの女は危険すぎる。独りだと飲み込まれるぞ』


 あの女って誰のこと?それより君は―――――

「君は・・・・」


 君は誰なの?


 俺が立ち尽くしていることに気が付いたのか、ミラは振り返ってこっちをみた

「お早く、勇者様」

「え、あはい。いますぐ」


 駆け出した俺の手には袋の紐がしっかりと握られていた 


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