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再び

「でも、あなたは気が付かないのですね。いつものあなたなら、すぐに気が付くはずなのに」

「え?」

「何か気にかかるようなことでもあったんですか?」

 話終わった途端に、小父さんはそんなことを言いだして俺の方に向き直った

 さっきまで歩き続けていた足をぱたりと止めて

「あの、どうかしたんですか?」

 何が『気が付かない』んだ?

 そもそも何に俺は気が付けてなかったんだ?

 疑問が頭には浮かぶくせに、口から思ったような声はでなかった

 ただ目の前にいる小父さんが笑っていることが不思議で仕方なくて

 どうすればいいのかも分からなかったんだ

 その時、突然おじさんは自分の手を顔にかざした

「わしじゃよ、わし!」

 にっこりと微笑むその顔の主は

「に、二ノラ導師!?」

「久しぶりじゃのぉマヒロ」

 さっきまでの小父さんは二ノラ導師に姿を変えていた



 ◆ ◇ ◆



「どうして二ノラ導師がここに?」

「ちとこやつの身体を借りてな、ただこの身体だと時間がないのが惜しいのぉ。こっちに来たのは御主に・・・・」

 立ち止まって聞き返す俺の心臓はさっきよりも随分落ち着いていた

 声を出しかけたはずの二ノラ導師は明後日の方を向いて、こう呟いた

「・・・・授けものを届けにな」

「授けもの?」 

「あぁ、お主の知り合いがちと遅れてはいるがな」

「?」


 知り合い?俺の?

 それに授けものってなんのことだ?


 聞き返そうとした俺の肩を二ノラ導師はぽんぽんと叩いた

「御主と同じように扉から来たくらすめぃとじゃよ」

 ほっほっほと笑うその顔の表情は楽しんでいるようにも見えた

「くらすめぃとのリツはこの城の地下におる」

「・・・・・・・っ!?日乃川がここにっ!?」


 たしか階段を上っている最中に俺の後から都市伝説の話を確かめようとしてた奴等が来てた

 小林を振り切って駆け登ったときに聴こえた声は確かに日乃川のも混じっていた


 日乃川リツ――――――俺の中に名前だけが反響して響いた


 気にも止めないような一緒のクラスの女の子の名前

 顔も上手く思い出せない女の子の名前

 俺が明日一緒に日直をするはずだった女の子の名前


 助けた方がいいのだろうか?日乃川はこの世界のことを知ってるのだろうか?ナミダのことは?あいつも勇者になったのか?それとも―――――――?


 考えだした俺の頭を二ノラ導師はくしゃくしゃと撫でて助けたいと思うのなら勝手にせいと二ノラ導師は言ってから

「コレを御主に授けよう」

 俺に白い袋を差し出した

「あったかい・・・・・・・?」

 白い袋は何となく温かく、それでいてふわふわとしていた

 中には何が入っているんだろう?

 開けようとして紐に手をかけたとき、二ノラ導師の声がして、俺は顔をあげた

「御主には『ライト』を授けよう、そやつが全て剣の使い方も、ペンダントの意味も教えてくれるぞ」

 得意げな二ノラ導師

 それでも俺の頭の中にはそれ以前の問題が構築されていた

「・・・二ノラ導師、一ついいですか?」

「なんじゃねマヒロ」

 深めに息を吐く、躊躇したけど言い切っておく事にした

「そういうオプションはさっきで付けておくべきなんじゃないですか?」

 俺の問いに二ノラ導師は首を傾げて唸っている

「そうかもしれんの」

 ほっほっほとまた笑って、自分の白く長い顎のヒゲを撫でて薄く笑ってから、手に持っていた杖をひと振りした

「ではの、マヒロまた出逢えるのを楽しみにしておるぞ」

「え?二ノラ導師っ!?」

「リツが誰かの召喚術で森に来たようじゃが、その『誰か』の魔力じゃ一分が限界なのじゃ」

「日乃川は地下にいるんじゃなかったんですかっ?」

「移動魔法はそう保たんのじゃよマヒロ。では『ライト』は授けたからの」

「二ノラ導師――――っ!」

 俺の呼び掛けも虚しく、二ノラ導師の姿は忽然とその場から消えていた

 結局なにも聞けなかった

 溜息をついた俺の手の中には白い袋がそのままになってただそこに在った

 中を見てみたい気がしたけれど、今はこの国の女王に逢うのが先決だ

 でも小父さんは結局二ノラ導師だったわけで、案内役が居なくなったわけで

 俺はこの城の順路も何も知らないわけで・・・・

 ただの迷子同然じゃないか

 誰も居ない広く何処までも続いていそうな廊下で細く、無意識に声が漏れた 

「どうしたらいいんだよ・・・・・・・」

 その時、白い袋の中から声が聴こえた


「我、守護者の欠片なり 主の運命を共に―――――我こそは光の中の結者となる」


 次の瞬間、あたたかい光が包み込む

 

 気が付くと俺は見た事も無い部屋の中にいた

 目の前にはサラが椅子に座っていた

 白い袋は俺の手の中にただ在るだけだった

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