叫び続けた名前と
「―――サラ?」
瞳を閉じたサラはピクリとも動かない
「サラっ!」
俺の手には生温かい血の感触だけが残っているだけで
サラは俺の呼びかけに応えない
「サラっ!しっかりしろよ!」
怖い
意味すらなく、俺はサラの名前を呼び続けた
怖い
俺が名前を呼び続けたのは―――怖かったから
人が―――人間が―――動かなくなるのをもう二度と目の前で見たくなんかない
もし今俺が呼ぶのを止めてしまったらもうサラは帰ってこないきがして、俺は叫び続けた
「死ぬなよ・・・・サラ」
死
その言葉に
俺の中に生々しくも甦る鮮やかな赤
フラッシュバック
俺は怖くなってサラの手をもう一度強く握った
「サラっ!」
その時、俺の耳に優しい声がした
「お帰りなさいませ、お嬢様」
俺が振り返るのと同時に、ルラが勢い良く止まった
俺の目の前には優しげな目をしたお婆ちゃんが居たのだった
さっきのドラゴンほどではないが、小さく細めの竜の落とし子のようなドラゴンにまたがっている
「あのっサラを助けてくださいっサラをっ」
「安心してください、もう此処はザグラムに入っていますから追っ手の心配はないですよ」
「血がっとまらなくって・・・俺どうしたらいいか・・・」
俺は誰だか分からないまだあって間もないこの人にすがる様に泣き出していた
自分でもこの涙をとめることは出来なかった
それほど余裕が無かったのは、誰が見ても明らかだったからなのかお婆ちゃんは俺に諭すように話しかけた
「大丈夫ですよ、あたくしが応急処置を致しますからお嬢様を此方に・・・下がっていてください」
俺は言われた通りサラから手を離してお婆ちゃんのほうに移動させた
抱きかかえて持ってみたサラは軽すぎて風に飛ばされてしまいそうだった
「深いわね・・・・・後ろからこの刀を振りかざした人は分かりますか?」
「え?あ、はい。黒い服の人で・・・・でもなんか帰れってしきりに言ってて・・・・」
「そう」
お婆ちゃんはそれだけ言うと、サラの背中に手を当てながら、その手に覆いかぶさるようにして右手に持っていた杖をかざした
「ここで見たことは内緒よ?」
「え?」
次の瞬間、お婆ちゃんの手は激しい光を放った
一瞬、俺がその光に瞳を閉じて開いた時、すでにサラは
「もういいでしょう、大丈夫よ」
「え?本当・・・・・・に?治って・・・・・」
サラの傷は癒えていた