表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/20

見知らぬ場所で目覚めて

最初の3つが同日投稿でしたが、1日ずつずらしておけば、今日まで毎日投稿になったんだなー、とか思ってます

「───あれっ?」


 目が覚めたアンドロイドの少女は、見知らぬ場所にいることに気づいた。


「……ほぇ?ボク、どうしたんだっけ……」


 アンドロイドのくせして、寝ぼけているようだ。半分閉じた目でそれと分かる。

 現状が把握できず、まともに働かない頭をなんとか動かして記憶を辿り───


「あ゛─────ッ!!」


 思い出して跳ねるように立ち上がり───


 ごすんっ!


「あ゛─────ッ!?」


 頭上の板に頭を痛烈にぶつけた。


 一分後。


「……大丈夫か、あんた」


 リクハルドが、少女が目覚めた場所の戸を開けて現れた。

 少女は呻きながら頭を押さえていたが、なんとか頷く。






「物置ぃ!?ヒドいよ、いくらボクがアンドロイドだからって、女の子をそんな汚いとこに置いとくなんて!」


 リクハルドの家、その居間で、頭のてっぺんに×の形に湿布を貼った少女が抗議した。

 それにリクハルドが言い返す。


「うるさい、あんたが『すぐ去る』とか言ったくせに気絶するからだろうが!」


「うっ、それはっ……で、でも、気絶しちゃったものは仕方ないじゃない!ボクだって好きで気絶したわけじゃないし!」


「あれから俺達がどんだけ苦労したか知らんくせに!近くにでかい廃坑あったから隠すのは出来たが、大変だったんだぞ!」





 敵が撤退し、少女が気絶した後。当然機体を放置するわけにもいかず、リクハルド達は近くの廃坑に隠すことにしたのだが、なにせ教わった操縦最低限のみ。セミオート操縦故に多少のサポートがあって、廃坑には入ったが、今度はコクピットハッチの開け方が分からない。

 アレコレとデタラメにボタンを押して、運良く開いたからまだ良かったが。

 そして次の問題、少女の運搬だ。ただでさえ人を運ぶのは大変なのに、彼女はどう見ても重装甲のロボットボディ。当然、重い。

 廃坑内の木の通路───ちょうどコクピットと同じくらいの高さにあった───がギシギシと嫌な音をたてるのを聞きながら運ぶ二人は、戦闘中より生きた心地がしなかったという。

 二人してリクハルドの家に戻ったら、心配した彼の母にこっぴどく叱られたり、少女をかくまおうと言われたり、そのために物置までまた運搬しなければならなかったり。

 ちなみに、イェレミアスの家には電話───普通の家庭に有線式のものは一つくらいある───をして「安全が確認できるまで一晩泊まってもらう」と伝えてあった。





「う、うう~……ごめんなさい……」


 以上のことを滔々とうとうと語ったリクハルドに、少女はしゅんとなって謝った。


「ゴメンで済めば警察は要らん!」


 相変わらず怒り心頭のリクハルドだったが、母・カリナと友人・イェレミアスがそれをなだめる。


「こらこらリク君、女の子を泣かせちゃダメよ。不可抗力だったんだから、あんまり責めちゃ可哀相よ」


「そうだよ、それに僕達を助けてくれたのも事実なんだし」


「……まぁ……確かにちょっと言い過ぎだとは思うが……って、おい……」


 リクハルドが少し反省している間に、カリナは少女に挨拶していた。


「おはよう、アンドロイドさん。私はカリナ・ジリアクス、そっちの仏頂面してる男の子、リクハルドのお母さんよ。リクハルドの隣にいるのがイェレミアス・ラハティ、彼の親友よ。あなたの名前、教えてくれる?」


「え、あ、はい」


 急に優しくされたからか、少し混乱したようだが、少女は答える。


「えっと、ボクの名前は『トゥーリア・ヤルヴェライネン』です。見ての通りのアンドロイドで……えっと、これ以上は答えちゃいけないので……」


 語尾が小さくなっていくが、リクハルド達は特に気にしてはいないようだ。


「トゥーリアちゃん、ね。少しくらい事情は聞いたから、ほとぼりが冷めるまでここにいるといいわ」


「えっ。えーと、リクハルドくん、話しちゃったの……?」


 意外な言葉に、少女……トゥーリアはリクハルドに確認をとる。


「隠せることじゃないしな。大丈夫だ、今この場にいる者以外は誰も知らないはずだ」


「そう、なんだ……。あ、ありがとうございます、そのー……お、おねーさん!」


「おばさんでいいわよ、それくらい気にしないわ」


 ……とは言え、カリナの見た目は結構若い。トゥーリアが『おねーさん』と呼んだのも、それらしい雰囲気があるからだ。


「それはそうと、朝ご飯がまだだったわね。ちょっと待ってね、用意するから。イェレミアス君もトゥーリアちゃんも食べていくといいわ」


「すみません、おばさん」


「え、ボクもいいの?」


「ってかトゥーリア、お前食事すんのか」


「うん、エネルギー補給の一環だよー」


 リクハルドには、食ったものがどうなるかを訊く勇気は無かった。

 ちなみに、当然のことだが、昨晩の件で学校はしばらく休校することになっていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ